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【医師監修】吐き気・嘔吐を抑える?抗がん剤治療中の水素吸入の可能性とは

【医師監修】吐き気・嘔吐を抑える?抗がん剤治療中の水素吸入の可能性とは

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抗がん剤治療による吐き気や嘔吐は、多くの患者にとって深刻な副作用です。治療効果を最大化するためには、その症状をいかに抑えるかが重要な課題となります。

近年、水素吸入がこの副作用を軽減する可能性があるとした研究が注目を集めています。

本記事では、抗がん剤による吐き気や嘔吐の原因を解説するとともに、水素吸入がどのようにその症状を予防・改善できるのか、最新の研究結果をもとに考察します。抗がん剤治療を受けられる方にとって役立つ情報なので、ぜひご参考ください。

抗がん剤治療による吐き気や嘔吐について

抗がん剤治療による吐き気や嘔吐について

抗がん剤は手術や放射線治療と共にがん治療の重要な役割を担っています。多くの研究が行われ、これまで治療が難しかった種類のがんに著効する抗がん剤も多く開発されています。

一方で抗がん剤は副作用が生じることも多く、吐き気や嘔吐は抗がん剤の代表的な副作用として挙げられます。まずは、抗がん剤治療による吐き気や嘔吐の原因と対策方法について詳しく見てみましょう。

抗がん剤治療による吐き気や嘔吐の原因

抗がん剤はがんの細胞を攻撃したり、増殖を抑制したりする効果があります。そのため、がんの縮小効果が期待できますが、正常な細胞にまでダメージを及ぼすケースも少なくありません。抗がん剤が消化管の粘膜の細胞にダメージを与えると吐き気や嘔吐を引き起こす場合があります。

また、抗がん剤によって脳の嘔吐中枢が刺激されたり、治療に対する精神的な不安などが吐き気や嘔吐を誘発したりすることも少なくありません。

抗がん剤治療による吐き気や嘔吐への対策方法

吐き気や嘔吐は抗がん剤治療の代表的な副作用の一つです。症状が強い場合は治療の見直しが必要になるなど、がん治療に影響を与えるケースもあります。

そのため、吐き気や嘔吐を引き起こす抗がん剤を使用するときは吐き気止めを併用するのが一般的です。その他、次のような対策が効果的とされています。

抗がん剤による吐き気・嘔吐の対策
  • 抗がん剤治療前の食事は消化がよいものを少量にする
  • 抗がん剤治療後は水分を多めに摂り、固形食品は避ける
  • 食事中の水分摂取は控える
  • 匂いが強い食事、甘いものや辛いものは控える
  • 食後1時間は横にならない

水素吸入と抗がん剤治療による吐き気・嘔吐の関係

水素吸入と抗がん剤治療による吐き気・嘔吐の関係

抗がん剤治療による吐き気や嘔吐は吐き気止めの使用によって一定のコントロールは可能です。しかし、抗がん剤治療による吐き気や嘔吐の明確な発症メカニズムは解明されていない部分もあり、十分な治療効果が得られないケースも少なくありません。

新たな吐き気や嘔吐の予防、改善方法を見出すための研究は現在でも行われており、近年では水素ガスと吐き気や嘔吐の関係を示す研究結果も報告されています。

具体的にどのような内容なのか詳しく見てみましょう。

活性酸素の除去で抗がん剤の吐き気や嘔吐は予防できる?

2022年、日本の研究チームは活性酸素除去剤を投与すると抗がん剤(シスプラチン)による吐き気や嘔吐を抑制できるとした研究結果を報告しました1)

この研究は、マウスを用いた動物実験です。抗がん剤を投与したマウスに活性酸素除去作用があるケイ素系薬剤を投与したところ、吐き気の誘発に関わる神経細胞が有意に減少したことが明らかになっています。

水素吸入が抗がん剤の吐き気や嘔吐を予防する可能性

この研究結果は、活性酸素の除去によって吐き気に関連する神経細胞を減少できる可能性を示唆していました。ケイ素系薬剤は腸内で水素を発生させることで活性酸素を除去すると考えられています。

そのため、同じく活性酸素を効率よく除去できる水素吸入にも同様の効果が期待できる可能性は大いにあるでしょう。今後もさらなる研究の進展に期待します。

水素吸入は抗がん剤による吐き気や嘔吐を改善する?

2019年、中国の研究チームは水素吸入が抗がん剤の吐き気や嘔吐を改善する可能性を示す研究結果を報告しました2)

この研究は抗がん剤治療中の82名の進行がん患者を対象に行われました。4週間の水素吸入をしたところ、吐き気や嘔吐の発生率が有意に改善したことが明らかになっています。

水素吸入が抗がん剤による吐き気や嘔吐を改善する可能性

この研究結果は、実際の抗がん剤治療中の患者を対象としたデータを示しています。水素吸入を行ったところ、4週間で有意に吐き気や嘔吐を改善できたことが明らかとなりました。

限られた人数を対象とした研究データであるため確実な効果があると断言できる段階ではありませんが、水素吸入が吐き気や副作用を軽減し、治療中のQOLを高める可能性は期待できるでしょう。今後さらに大規模な研究が行われることを期待しましょう。

【私はこう考える】水素吸入と抗がん剤治療による吐き気・嘔吐

今回は、水素吸入と抗がん剤治療による吐き気や嘔吐との関係について考察してきました。

現状発表されている研究報告は限られているものの、今回ご紹介した2つの研究結果は非常に前向きな期待ができるものと言えるでしょう。

1つ目の研究結果からは、体内で水素を発生させる薬剤の投与によって吐き気を誘発する神経細胞が減少したことが示されました。水素吸入の直接的な効果を示した研究ではないものの、水素の可能性を示す重要な報告となります。

水素を多く取り込める水素吸入も同様の効果を持つ可能性は高く、ヒトを対象とした大規模な研究が行われれば、水素吸入が抗がん剤治療のQOLを高める手段として普及するかも知れません。

また、2つ目の研究結果は実際の患者さんを対象とした臨床研究で、水素吸入の効果を示した非常に有益なデータです。ただ、問題点として水素吸入をしていない患者との比較が行われていない点が挙げられ、あくまで可能性を示したに過ぎません。

水素吸入の吐き気や嘔吐への有効性を確立するには、ランダム化比較試験や大規模な臨床研究が必要になるでしょう。

とはいえ、この2つの研究結果から、水素吸入が吐き気や嘔吐を予防、改善する効果を持つ可能性は大いにあると考えます。さまざまな研究課題をクリアして吐き気や嘔吐対策に実用化される日を期待します。

参考文献
  1. Yanagawa, H., Koyama, Y., Kobayashi, Y., Kobayashi, H., & Shimada, S. (2022). The development of a novel antioxidant-based antiemetic drug to improve quality of life during anticancer therapy. Biochemistry and biophysics reports, 32, 101363. https://doi.org/10.1016/j.bbrep.2022.101363
  2. Chen, J. B., Kong, X. F., Lv, Y. Y., Qin, S. C., Sun, X. J., Mu, F., Lu, T. Y., & Xu, K. C. (2019). “Real world survey” of hydrogen-controlled cancer: a follow-up report of 82 advanced cancer patients. Medical gas research9(3), 115–121. https://doi.org/10.4103/2045-9912.266985

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