一言まとめ
マウスの非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)モデルにおいて、水素水の摂取が酸化ストレスを軽減し、肝臓の炎症や線維化を抑制、さらに肝癌の発生も抑制することが示された。
3分で読める詳細解説
結論
水素水はNASHの進行とそれに伴う肝臓癌の発生を抑制する可能性が示唆された。
研究の背景と目的
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、慢性肝疾患の主要な原因であり、その中でも非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、進行性の炎症や線維化を特徴とし、最終的には肝硬変や肝臓癌に進展するリスクが高い。本研究は、抗酸化作用を有する水素分子がNASHの進行を抑制し、さらに肝臓癌の発生を防ぐ効果があるかどうかを検証することを目的とした。
研究方法
研究はマウスを用いた実験で行われ、8週齢のオスのC57BL/6マウスを3つのグループに分けた。以下の3つの実験群で、メチオニン・コリン欠乏(MCD)食を8週間摂取させた。
- MCD食 + 通常の水(CW群, n = 8)
- MCD食 + 水素水(HW群, n = 8)
- MCD食 + ピオグリタゾン混合食(PGZ群, n = 8)
水素水は0.35-0.45 ppmの濃度で提供され、ピオグリタゾンは0.01%の濃度で混合された。8週間の摂取後、マウスの血液サンプルを採取し、肝臓組織を摘出して分析した。さらに、NASHに関連する肝臓癌の発生を評価するため、STAMマウスモデルを用いて水素水とピオグリタゾンの効果を検証した。
研究結果
Appendix(用語解説)
- NASH: 非アルコール性脂肪性肝炎。肝臓に脂肪が蓄積し、炎症や線維化を伴う疾患。
- 酸化ストレス: 体内で生じる活性酸素による細胞や組織へのダメージ。
- ALT: アラニンアミノトランスフェラーゼ。肝機能の指標となる酵素。
- NAS: 非アルコール性脂肪性肝疾患の活動性スコア。肝臓の脂肪化、炎症、肝細胞の風船様変性を数値化したもの。
- TNF-α, IL-6: 炎症性サイトカイン。炎症反応を促進する。
- PPARα: ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α。脂質代謝に関与する転写因子。
- 8-OHdG: 8-ヒドロキシデオキシグアノシン。DNA酸化損傷のマーカー。
論文情報
タイトル
Hydrogen-rich water prevents progression of nonalcoholic steatohepatitis and accompanying hepatocarcinogenesis in mice(非アルコール性脂肪性肝炎の進行とそれに伴う肝臓癌発生を抑制する水素水の効果)
引用元
Kawai, D., Takaki, A., Nakatsuka, A., Wada, J., Tamaki, N., Yasunaka, T., Koike, K., Tsuzaki, R., Matsumoto, K., Miyake, Y., Shiraha, H., Morita, M., Makino, H., & Yamamoto, K. (2012). Hydrogen-rich water prevents progression of nonalcoholic steatohepatitis and accompanying hepatocarcinogenesis in mice. Hepatology (Baltimore, Md.), 56(3), 912–921. https://doi.org/10.1002/hep.25782
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