しっかり理解するための詳細解説
結論
水素水入浴(水素風呂)は乾癬・類乾癬の症状を有意に改善し、安全に実施できる。
研究の背景と目的
乾癬と類乾癬はいずれも慢性炎症性皮膚疾患であり、既存の治療法では十分な効果が得られないことがある。近年、活性酸素種(ROS)がこれらの疾患の病態に関与していることが明らかになっており、水素分子は選択的にROSを除去する安全な抗酸化物質として注目されている。本研究は、水素水入浴がこれらの皮膚疾患に対して有効かどうかを検証することを目的とした。
研究方法
試験デザイン
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 試験形式 | 乾癬:並行群間比較試験 / 類乾癬:自己対照試験 |
| 登録患者数 | 乾癬75名(水素群41名、対照群34名) / 類乾癬6名 |
| 対象者の特徴 | 乾癬:平均年齢約40歳、12ヶ月以上の罹病歴、従来治療に抵抗性 |
| 対照群の治療 | 従来治療+水道水入浴(週2回以上) |
| 試験期間 | 8週間 |
介入方法(水素の投与条件)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 投与方法 | 全身浴(水素水に浸漬) |
| 水素濃度 | 1.0 ppm |
| 入浴時間 | 10〜15分/回 |
| 頻度 | 週2回(3日間隔) |
| 水温 | 38〜42℃ |
評価項目と測定時点
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主要評価項目 | PASI(乾癬面積・重症度指数)スコア |
| 副次評価項目 | VAS(かゆみの視覚的評価尺度) |
| 測定時点 | ベースライン、各入浴後、8週時点 |
| 有効性の基準 | ベースラインからPASI 50%以上の改善 |
研究結果
① 乾癬の改善率(PASI)
| 改善度 | 水素群 (n=41) | 対照群 (n=34) | p値 |
|---|---|---|---|
| PASI90以上 | 4.8% (2名) | 0% (0名) | >0.05 |
| PASI75以上 | 24.4% (10名) | 2.9% (1名) | Pc=0.022 |
| PASI50以上 | 56.1% (23名) | 17.6% (6名) | P=0.001 |
| 平均PASIスコア(8週時) | 5.8±5.5 | 7.9±6.8 | — |
水素水入浴群では半数以上の患者で50%以上の症状改善が得られた。対照群と比較して統計学的に有意な差が認められ、水素水入浴の有効性が示された。

② かゆみ(VAS)の改善
| 項目 | 水素群 | 対照群 | p値 |
|---|---|---|---|
| VASスコア (ベースライン) | 中央値 2 | 中央値 0 | — |
| VASスコア(8週時) | 中央値 0 | 中央値 0 | — |
| VAS改善(−3以下) | 22.0% | 2.9% | Pc=0.04 |
| VAS改善あり(<0) | 51.2% | 20.6% | P=0.006 |
水素群ではかゆみの有意な改善が認められた(P=3.94×10⁻⁴)。乾癬患者にとってかゆみは生活の質を大きく損なう症状であり、その改善は臨床的に重要である。
③ 類乾癬の改善
| 患者 | 病型 | 罹病期間 | 8週時の反応 |
|---|---|---|---|
| 患者1〜4 | LPP 2名, SPP 2名 | 12〜28ヶ月 | 部分奏効(PR) |
| 患者5 | LPP | 30ヶ月 | 完全奏効(CR) |
| 患者6 | LPP | 96ヶ月 | 完全奏効(CR) |
類乾癬患者6名中、完全奏効が33.3%(2名)、部分奏効が66.7%(4名)であった。全例で皮膚病変の形態または分布に改善が認められた。
④ 安全性
| 評価対象 | 結果 |
|---|---|
| 有害事象 | 水温に関する不快感のみ(2名) |
| 対処法 | 水温調整により解消 |
| その他の副作用 | 報告なし |
水温に関する軽微な訴え以外に副作用は認められず、水素水入浴の安全性が確認された。
考察のポイント
本研究で認められた水素水入浴の有効性は、水素分子の以下の特性によって説明される可能性がある。
水素分子はヒドロキシルラジカルやペルオキシナイトライトといった高活性の酸化物質を選択的に除去する能力を持つ。ヒドロキシルラジカルはフリーラジカル連鎖反応の主要なトリガーであり、乾癬の悪化と関連するマロンジアルデヒド(MDA)の産生につながる。また、ペルオキシナイトライトはp38 MAPKを活性化し、TNF-α、IL-6、IL-8などの炎症性サイトカインの産生を促進する。
水素分子の抗炎症・抗アポトーシス効果はラジカル除去作用だけでは完全に説明できず、Nrf2-Keap1システムを介した内因性の抗酸化保護機構の活性化も関与している可能性がある。
他の抗酸化療法と異なり、水素分子は生理的に重要な役割を持つROSとは反応せず、過剰な酸化ストレスのみを軽減するという理想的な特性を有している。
研究の限界
| 限界点 | 詳細 |
|---|---|
| オープン試験である | 盲検化されていないため、選択バイアスの可能性がある |
| サンプルサイズが限定的 | 乾癬患者75名、類乾癬患者6名と少数 |
| プラセボ対照群なし | 倫理的配慮から設定されなかったが、対照群は水道水入浴を実施 |
| 併用治療の影響 | 従来治療を継続しており、水素水単独の効果を完全には分離できない |
すいかつねっと編集部の感想
本研究は、水素水を「飲む」のではなく「浸かる」ことによる効果検証をしています。先行研究では、水素吸入や水素水の飲用が中心でしたが、皮膚疾患には「肌から直接届ける」という方法も選択肢になり得ることを示した興味深い研究と言えるでしょう。従来の治療で効果が得られなかった患者さんの半数以上に改善が見られた点は希望が持てます。まだ小規模な研究段階ですので、今後のさらなる検証に期待したいところです。
用語解説
| 用語 | 解説 |
|---|---|
| 乾癬(かんせん) | 皮膚に赤い発疹と銀白色の鱗屑(フケのようなもの)ができる慢性炎症性疾患。人口の1〜3%が罹患 |
| 類乾癬(るいかんせん) | 乾癬に似た症状を示す慢性皮膚疾患。一部は皮膚T細胞リンパ腫に進行する可能性がある |
| PASI | Psoriasis Area Severity Indexの略。乾癬の重症度を紅斑・鱗屑・肥厚・面積から数値化した指標 |
| VAS | Visual Analog Scaleの略。かゆみなどの主観的症状を0〜10の数値で評価する方法 |
| 活性酸素種(ROS) | 体内で発生する反応性の高い酸素化合物。過剰になると細胞を傷害し炎症を引き起こす |
| ヒドロキシルラジカル | 最も反応性が高い活性酸素の一種。細胞膜などを攻撃し酸化ストレスの原因となる |
| p38 MAPK | 細胞内のシグナル伝達経路の一つ。炎症性サイトカインの産生に関与する |
| Nrf2-Keap1システム | 細胞が持つ抗酸化防御機構を制御する転写因子システム |
| 完全奏効(CR) | Complete Responseの略。治療により病変が90%以上消失した状態 |
| 部分奏効(PR) | Partial Responseの略。治療により病変が50〜90%消失した状態 |
論文情報
論文タイトル
Positive effects of hydrogen-water bathing in patients of psoriasis and parapsoriasis en plaques(乾癬および類乾癬患者における水素水入浴の有効性)
