一言まとめ
マウスの皮膚全層欠損モデルに高濃度水素(66%H2)を1日1時間投与したところ、細胞外マトリックスの早期沈着と表皮幹細胞の早期増殖が誘導され、創傷治癒が促進された。
3分で読める詳細解説
結論
水素分子は細胞外マトリックス沈着と表皮幹細胞活性化を促進し、創傷治癒を加速する。
研究の背景と目的
創傷治癒過程では、表皮幹細胞(EpSCs)と細胞外マトリックス(ECM)が重要な役割を果たす。しかし、これらを効果的に活性化する方法は確立されていない。本研究は、水素分子がECM沈着とEpSCs活性化に与える影響を調査し、創傷治癒における水素の新たな作用機序を解明することを目的とした
研究方法
マウスの背部に直径10mmの全層皮膚欠損を作成し、以下の群に分けて治療を行った。
- 66%H2+33%O2群
- 5%H2+空気群
- 33%O2群
- 対照群(空気のみ)
- NAC(N-アセチルシステイン)群
水素処置は、透明な密閉箱(20cm×18cm×15cm)内で1日1時間、11日間連続で行った。
研究結果
本研究は、水素分子が従来考えられていた抗酸化作用だけでなく、ECM沈着とEpSCs活性化を介して創傷治癒を促進することを初めて示した。これらの知見は、水素を用いた新たな創傷治療戦略の開発につながる可能性がある。
Appendix(用語解説)
- EpSCs (Epidermal Stem Cells): 表皮幹細胞。皮膚の再生と修復に重要な役割を果たす。
- ECM (Extracellular Matrix): 細胞外マトリックス。細胞の周囲を取り巻き、組織の構造と機能を支える。
- IFESCs (Interfollicular Epidermal Stem Cells): 毛包間表皮幹細胞。
- HFSCs (Hair Follicle Stem Cells): 毛包幹細胞。
論文情報
タイトル
Molecular hydrogen promotes wound healing by inducing early epidermal stem cell proliferation and extracellular matrix deposition(水素分子は表皮幹細胞の早期増殖と細胞外マトリックス沈着を誘導することで創傷治癒を促進する)
引用元
Zhao, P., Dang, Z., Liu, M., Guo, D., Luo, R., Zhang, M., Xie, F., Zhang, X., Wang, Y., Pan, S., & Ma, X. (2023). Molecular hydrogen promotes wound healing by inducing early epidermal stem cell proliferation and extracellular matrix deposition. Inflammation and regeneration, 43(1), 22. https://doi.org/10.1186/s41232-023-00271-9
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