一言まとめ
ラットの心停止モデルにおいて、体外循環式心肺蘇生(ECPR)と水素ガス吸入を併用することで、ECPR単独と比較して生存率が改善し、脳機能回復に有益な効果が示された。
3分で読める詳細解説
結論
ECPR(体外循環式心肺蘇生)と水素吸入の併用療法は、致死的な心停止ラットの脳酸素化を改善し、生存時間を延長させる。
研究の背景と目的
心停止患者の救命には、ECPR(体外循環式心肺蘇生)が有効だが、長期予後は不良のままである。その原因として、ECPRに伴う人工肺や回路による酸化ストレスや炎症反応の惹起が指摘されている。そこで本研究は、抗酸化作用を持つ水素吸入に着目し、ECPRとの併用効果を検証することを目的とした。
研究方法
- 400-500gのオスのSprague-Dawleyラットが対象
- ラットを20分間の窒息性心停止に陥らせ、ECPR(体外循環式心肺蘇生)で蘇生。
- ECPR開始と同時に人工呼吸を再開し、プラセボ群(酸素のみ)と水素群(2%水素+98%酸素)にランダムに割り当て。
- 4時間後までの生存率、脳波、脳機能、脳組織酸素化、血中バイオマーカーなどを評価。
研究結果
Appendix(用語解説)
- ECPR: Extra-Corporeal Cardiopulmonary Resuscitation 体外循環式心肺蘇生。人工心肺装置を用いて、心停止患者の循環を補助する高度救命処置。
- 中心静脈圧: 上大静脈や右心房における血液の圧力。うっ血の指標となる。
- シンデカン-1: 血管内皮細胞の糖タンパク質。血中濃度の上昇は、血管内皮のダメージを反映する。
- IL-10: インターロイキン10。炎症を抑制するサイトカイン。
- VEGF: Vascular Endothelial Growth Factor 血管内皮細胞増殖因子。血管新生を促進する。
- メタボローム解析: 生体内の代謝物を網羅的に解析する手法。
論文情報
タイトル
Hydrogen gas with extracorporeal cardiopulmonary resuscitation improves survival after prolonged cardiac arrest in rats(ラットの長時間心停止後の体外式心肺蘇生における水素ガス吸入は生存率を改善する)
引用元
Yin, T., Becker, L. B., Choudhary, R. C., Takegawa, R., Shoaib, M., Shinozaki, K., Endo, Y., Homma, K., Rolston, D. M., Eguchi, S., Ariyoshi, T., Matsumoto, A., Oka, K., Takahashi, M., Aoki, T., Miyara, S. J., Nishikimi, M., Sasaki, J., Kim, J., Molmenti, E. P., … Hayashida, K. (2021). Hydrogen gas with extracorporeal cardiopulmonary resuscitation improves survival after prolonged cardiac arrest in rats. Journal of translational medicine, 19(1), 462. https://doi.org/10.1186/s12967-021-03129-1
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