一言まとめ
パーキンソン病患者20名に対し、16週間の水素吸入治療を行ったが、プラセボ群との比較で症状改善効果は見られなかった。ただし、水素吸入の安全性は確認された。
3分で読める詳細解説
結論
水素吸入はパーキンソン病患者に対し安全だが、症状改善効果は示されなかった。
研究の背景と目的
パーキンソン病の進行には酸化ストレスが関与しており、水素分子は強力な抗酸化作用を持つことが動物モデルで確認されている。そこで本研究は、レボドパ治療中のパーキンソン病患者を対象に、水素吸入の有効性を評価するランダム化二重盲検並行群間比較パイロット試験を実施した。
研究方法
- 対象は、Movement Disorder Society (MDS) 診断基準を満たすパーキンソン病患者20名(レボドパ治療中、modified Hoehn and Yahr stage 1-3、40-80歳)。
- 被験者を水素吸入群とプラセボ吸入群に1:1で無作為に割り付け。割り付けは年齢とHoehn and Yahrステージで層別化。
- 水素吸入群には6.5% (0.1%) の水素ガスを、プラセボ群には水素なしの空気を、それぞれ1日2回1時間、16週間吸入。
- 主要評価項目は、ベースラインから16週時のMDS-UPDRS総スコアの変化量。副次評価項目はMDS-UPDRSのパートII・III、PDQ-39など。
研究結果
Appendix(用語解説)
- MDS-UPDRS: Movement Disorder Society-Unified Parkinson’s Disease Rating Scale(パーキンソン病の症状評価尺度)
- PDQ-39: 39-item Parkinson’s Disease Questionnaire(パーキンソン病患者のQOL評価尺度)
- 8-OHdG: 8-hydroxy-2′-deoxyguanosine(酸化ストレスマーカー)
論文情報
タイトル
Randomized double-blind placebo-controlled trial of hydrogen inhalation for Parkinson’s disease: a pilot study(パーキンソン病に対する水素吸入のランダム化二重盲検プラセボ対照パイロット試験)
引用元
Yoritaka, A., Kobayashi, Y., Hayashi, T., Saiki, S., & Hattori, N. (2021). Randomized double-blind placebo-controlled trial of hydrogen inhalation for Parkinson’s disease: a pilot study. Neurological sciences : official journal of the Italian Neurological Society and of the Italian Society of Clinical Neurophysiology, 42(11), 4767–4770. https://doi.org/10.1007/s10072-021-05489-4