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研究報告

心停止後脳虚血に対する水素吸入の神経学的予後改善効果

心停止後脳虚血に対する水素吸入の神経学的予後改善効果
心停止後の患者73名に18時間の水素吸入療法(酸素+2%水素)を行ったところ、90日後の生存率および神経学的後遺症のない生存率が改善したが、主な神経学的改善については統計的に有意な差はなかった。
  1. 13分で読める詳細解説
    1. 結論
    2. 研究の背景と目的
    3. 研究方法
    4. 研究結果
    5. 論文情報
  2. 2専門家のコメント

3分で読める詳細解説

結論

心停止後の水素吸入療法は神経学的後遺症のない生存率を向上させる可能性がある。

研究の背景と目的

心停止後の患者は、脳が酸素不足による深刻なダメージを受け、これが入院後の死亡や神経障害の主要な原因となる。現在、この脳損傷を防ぐ有効な治療法は体温管理療法(TTM)のみであり、それ以外の効果的な治療法がない状況である。動物実験で水素分子が抗酸化、抗炎症作用を持ち、心停止後の脳損傷を改善する可能性が示されているため、本研究では心停止後の患者に水素吸入が神経機能の回復を促進し、生存率を高めるかを検証した。

研究方法

  • 対象者
    • 対象は、心原性院外心停止を起こし、蘇生後20分間意識が戻らなかった20〜80歳の患者73名。
    • 以下の場合は除外:意識障害が重度な患者、心停止から6時間以上経過した患者、心停止の原因が外傷性の患者など。
  • 介入方法
    • 酸素と共に2%の水素分子を18時間吸入。
    • 吸入開始は心拍再開(ROSC)後6時間以内。
    • 吸入の流量など詳細条件の論文内に記述なし。
  • 対照群
    • 酸素のみを吸入した患者群。
  • 評価方法
    • 主な評価は90日後の神経学的状態(CPCスコア:良好な神経状態をCPC 1または2と定義)。
    • 副次評価指標として、修正ランキンスケール(mRS)、生存率、グラスゴー昏睡スケール(GCS)、ミニメンタルステート検査(MMSE)を評価。

研究結果

  • 主要な結果
    • 神経機能が良好(CPC 1または2)だったのは、水素群56%、対照群39%。統計的に有意差はなし(相対リスク0.72; 95%CI 0.46–1.13; P=0.15)。
    • 修正ランキンスケール(mRS)の中央値は、水素群が1(ほぼ障害なし)、対照群は5(重度障害)(P=0.01)。
    • 全く症状のない患者(mRS 0)は水素群46%、対照群21%(P=0.03)。
    • 90日後の生存率は水素群85%、対照群61%(P=0.02)。
  • 考察
    • 水素吸入による主要評価項目(CPC)の改善は統計的に有意でなかったものの、神経後遺症なく回復した患者が有意に増加したことや生存率向上が認められ、水素吸入の治療的効果の可能性が示された。
    • CPCよりも、mRSによる詳細評価が神経機能の改善を正確に評価できる可能性が示唆された。
  • 研究の限界
    • COVID-19の影響で目標症例数に達しなかったため、主要評価項目での統計的有意差を示すにはデータが不足。
    • 参加者がアジア人に限定されており、広い一般化には注意が必要。
    • 今回の研究ではTTM温度の選択が一定でないため、TTM温度との相互作用は未検討。

Appendix(用語解説)

  • 院外心停止:病院外で発生する心臓の拍動と血液循環の突然の停止
  • 目標体温管理法(TTM):脳保護のために体温を一定範囲(通常32~36℃)に管理する治療法
  • Cerebral Performance Category(CPC):脳機能の状態を評価する5段階スケール(1-2が良好、3-5が不良)
  • 修正ランキンスケール(mRS) 神経学的障害と日常生活の依存度を評価する0-6の尺度(0が無症状、6が死亡)
  • 虚血再灌流障害:血流が途絶えた後に再び血液が流れることで生じる組織障害
  • グラスゴー昏睡尺度:意識レベルを評価するスケール(スコアが低いほど意識障害が重い)

論文情報

タイトル

Efficacy of inhaled hydrogen on neurological outcome following brain ischaemia during post-cardiac arrest care (HYBRID II): a multi-centre, randomised, double-blind, placebo-controlled trial(心停止後脳虚血に対する水素吸入の神経学的予後改善効果(HYBRID II):多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照試験)

引用元

Tamura, T., Suzuki, M., Homma, K., Sano, M., & HYBRID II Study Group (2023). Efficacy of inhaled hydrogen on neurological outcome following brain ischaemia during post-cardiac arrest care (HYBRID II): a multi-centre, randomised, double-blind, placebo-controlled trial. EClinicalMedicine, 58, 101907. https://doi.org/10.1016/j.eclinm.2023.101907

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公開日:2024/05/31
最終更新日:2025/06/05
目次
  1. 3分で読める詳細解説
    1. 結論
    2. 研究の背景と目的
    3. 研究方法
    4. 研究結果
    5. 論文情報
  2. 専門家のコメント

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公開日:2024/05/31
最終更新日:2025/06/05
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