研究論文
非アルコール性脂肪性肝疾患に対する水素吸入の効果

非アルコール性脂肪性肝疾患に対する水素吸入の効果

一言まとめ

非アルコール性脂肪性肝疾患患者43名に13週間の水素・酸素吸入を行ったところ、中等度〜重度の患者で肝臓の脂肪蓄積が改善した。また、マウスモデルと細胞実験でも水素の有効性と、その作用機序としてオートファジーの活性化が示唆された。

3分で読める詳細解説

結論

水素・酸素吸入は、中等度〜重度の非アルコール性脂肪性肝疾患患者の肝臓脂肪蓄積を改善し、オートファジー活性化がその機序の1つと考えられる。

研究の背景と目的

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は世界で最も一般的な慢性肝疾患だが、承認された治療薬はない。水素分子は抗酸化・抗炎症作用を持つことが知られており、NAFLDに対する効果が期待される。本研究では、NAFLD患者に対する水素・酸素吸入の効果を検証し、そのメカニズムとしてオートファジーに着目して探索することを目的とした。

研究方法

  • 62名のNAFLD患者を無作為に水素・酸素吸入群(30名)とプラセボ群(32名)に割り付け。
  • 水素・酸素吸入群は66%水素・33%酸素を、プラセボ群は78.1%窒素・20.9%酸素を、それぞれ1日1時間、13週間吸入。
  • 治療前後で血液検査、超音波検査、CT検査を実施。
  • メチオニン・コリン欠乏食で誘発したNASHマウスモデルに水素吸入を行い、肝組織の変化などを観察。
  • 脂肪酸を負荷したAML-12肝細胞に水素を曝露し、脂質蓄積とオートファジーへの影響を検討。

研究結果

  • 43名(水素群22名、プラセボ群21名)が試験を完遂。中等度〜重度の患者において、水素吸入群で肝脂肪量の有意な改善が見られた。
  • 水素吸入群で、LDLコレステロール、AST、ALT、酸化ストレスマーカー、炎症マーカーの有意な低下が見られた。
  • NASHマウスでは、水素吸入により肝機能、脂肪蓄積、炎症、線維化が改善し、肝臓のオートファジー関連タンパク質発現が増加した。
  • AML-12細胞では、水素曝露により脂肪酸(パルミチン酸)による脂質蓄積が抑制され、オートファジーが促進された。オートファジー阻害剤の3-メチルアデニンは、水素の脂質蓄積抑制作用を部分的に阻害した。

Appendix(用語解説)

  • NAFLD: 非アルコール性脂肪性肝疾患。肥満や生活習慣が原因で肝臓に脂肪が蓄積する病気。
  • NASH: 非アルコール性脂肪肝炎。NAFLDが進行し、肝臓の炎症や線維化を伴う状態。
  • オートファジー: 細胞内の不要なものを分解・リサイクルする仕組み。飢餓や細胞ストレス時に活性化する。

論文情報

タイトル

A randomized, placebo-controlled clinical trial of hydrogen/oxygen inhalation for non-alcoholic fatty liver disease(ランダム化プラセボ対照臨床試験による非アルコール性脂肪性肝疾患に対する水素・酸素吸入の効果)

引用元

Tao, G., Zhang, G., Chen, W., Yang, C., Xue, Y., Song, G., & Qin, S. (2022). A randomized, placebo-controlled clinical trial of hydrogen/oxygen inhalation for non-alcoholic fatty liver disease. Journal of cellular and molecular medicine26(14), 4113–4123. https://doi.org/10.1111/jcmm.17456

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