研究論文
水素は放射線誘発性胸腺リンパ腫を予防する

水素は放射線誘発性胸腺リンパ腫を予防する

一言まとめ

放射線照射によるマウスの胸腺リンパ腫発症モデルを用いて、水素水の予防効果を検証したところ、水素水投与群では発症率が低下し、生存期間が延長した。水素の抗酸化作用が関与している可能性が示唆された。

3分で読める詳細解説

結論

水素水はマウスにおいて、放射線誘発性の胸腺リンパ腫の発症を抑制する効果がある。

研究の背景と目的

電離放射線は発がん性があることが知られているが、放射線誘発胸腺リンパ腫の発生メカニズムは十分解明されていない。また、放射線誘発胸腺リンパ腫を簡便かつ効果的に予防する方法も見つかっていない。一方、水素分子は医療分野での重要性が近年注目されている。そこで本研究では、BALB/cマウスの放射線誘発胸腺リンパ腫モデルを用いて、水素分子の予防効果を検証した。

研究方法

5-6週齢の雄BALB/cマウスに、1.75 Gyのガンマ線を週1回、計4回の分割全身照射を行った。照射の5分前に、水素水あるいは通常の生理食塩水を腹腔内投与した。照射30週後まで生存率を追跡し、20週時点での胸腺リンパ腫発生率と潜伏期間を調べた。また、最終照射の4時間後に血液を採取し、末梢血単核球(PBMC)の活性酸素種(ROS)レベルをFACS解析した。血清中の酸化ストレスマーカー(スーパーオキシドジスムターゼ:SOD、グルタチオン:GSH、マロンジアルデヒド:MDA)もELISA法で測定した。

研究結果

  • 水素水投与群では、照射後30週までの生存率が有意に高かった(p<0.05)。
  • 水素水群では、20週時点の胸腺リンパ腫発症率が有意に低かった。
  • 水素水群の平均潜伏期間は、対照群と比べ有意に長かった。
  • 血清中のSODとGSH濃度は水素水群で有意に高く、MDA濃度は有意に低かった。
  • 以上より、水素水投与による抗酸化作用が、発がん予防効果に寄与した可能性が示唆された。

Appendix(用語解説)

  • 電離放射線:原子や分子からエネルギーを受け取って電離する放射線。DNAに損傷を与える。
  • 胸腺:免疫器官の一つ。Tリンパ球が分化・成熟する場。
  • 胸腺リンパ腫:胸腺に発生するリンパ系の悪性腫瘍。
  • 活性酸素:細胞に損傷を与える反応性の高い酸素分子の総称。がんの発生に関与。
  • SOD(スーパーオキシドジスムターゼ):活性酸素を分解する抗酸化酵素。
  • グルタチオン:抗酸化物質の一種。
  • グルタチオン(GSH):抗酸化物質の一種。活性酸素を中和する。
  • マロンジアルデヒド(MDA):脂質過酸化の最終産物。酸化ストレスマーカーとして用いられる。

論文情報

タイトル

Hydrogen protects mice from radiation induced thymic lymphoma in BALB/c mice(水素はBALB/cマウスにおける放射線誘発性胸腺リンパ腫を予防する)

引用元

Zhao, L., Zhou, C., Zhang, J., Gao, F., Li, B., Chuai, Y., Liu, C., & Cai, J. (2011). Hydrogen protects mice from radiation induced thymic lymphoma in BALB/c mice. International journal of biological sciences7(3), 297–300. https://doi.org/10.7150/ijbs.7.297

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