研究論文
水素水による加齢に伴う心腎障害の改善

水素水による加齢に伴う心腎障害の改善

一言まとめ

ダールラットに水素水を48週間自由飲水させたところ、通常の水を飲ませた群と比べ、加齢に伴う腎臓と心臓の障害が軽減された。水素水の抗酸化・抗炎症作用がその効果に寄与していると考えられる。

3分で読める詳細解説

結論

水素水の長期飲用は、ダールラットの加齢に伴う腎障害と心臓リモデリングを抑制する可能性がある。

研究の背景と目的

ダールラットは加齢に伴い高血圧や腎障害、心臓リモデリングを自然発症するモデル動物である。一方、水素分子は選択的に活性酸素を除去する新たな抗酸化物質として注目されている。本研究は、ダールラットに水素水を長期飲用させ、加齢に伴う血圧、腎障害、心臓リモデリングへの影響を調べることを目的とした。

研究方法

4週齢のDahl食塩感受性雄ラットを3群(各群n=30)に分け、48週間にわたって以下の水を自由摂取させた。

  1. 濾過水(対照群)
  2. 高濃度の溶存水素水(水素水群、492.5ppb)
  3. 脱水素した電解水(脱水素水群)

各週齢(16、24、48週齢)で組織学的解析を行った。

研究結果

  • 対照群では週齢とともに血圧上昇、アルブミン尿増加、心臓リモデリングが進行した。48週齢では腎臓の糸球体硬化と尿細管間質線維化、心臓の心筋細胞肥大と間質線維化が顕著だった。
  • 水素水群でも血圧に有意差はなかったが、腎臓と心臓の組織学的変化は対照群と比べ有意に抑制された。48週齢での酸化ストレスと炎症マーカーも同様に低下した。
  • 心臓では抗酸化応答に関わるNrf2タンパク発現が水素水群で有意に増加し、酸化ストレス産生に関わるNADPHオキシダーゼ発現が抑制された。
  • 水素豊富な水の長期摂取は、酸化ストレスや炎症を抑制することで加齢に伴う心腎障害を改善する可能性が示された。水素水の長期摂取は、新たな抗加齢戦略として期待される。

Appendix(用語解説)

  • ダールラット:遺伝的に高血圧を発症しやすいラット
  • 心臓リモデリング:心臓の構造的変化(心筋肥大、線維化など)
  • アルブミン尿:尿中アルブミン排泄量の増加。腎障害の指標
  • 糸球体硬化:腎臓の糸球体が硬くなる変性
  • 尿細管間質線維化:腎臓の尿細管間質にコラーゲンなどが沈着する変性
  • 心筋細胞肥大:心臓の筋肉細胞が肥大すること
  • 間質線維化:臓器の間質にコラーゲンなどが沈着する変性
  • 酸化ストレス:活性酸素種による細胞ダメージ
  • Nrf2:抗酸化応答の制御に関わる転写因子
  • NADPHオキシダーゼ:活性酸素種の産生に関わる酵素群

論文情報

タイトル

Amelioration of cardio-renal injury with aging in dahl salt-sensitive rats by H2-enriched electrolyzed water(水素豊富な電解水によるダールラットの加齢に伴う心腎障害の改善)

引用元

Zhu, WJ., Nakayama, M., Mori, T. et al. Amelioration of cardio-renal injury with aging in dahl salt-sensitive rats by H2-enriched electrolyzed water. Med Gas Res 3, 26 (2013). https://doi.org/10.1186/2045-9912-3-26

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