一言まとめ
非アルコール性脂肪性肝炎 (NASH) モデルマウスに高濃度水素を含んだ水素水を20週間飲ませたところ、肝臓の炎症と線維化が抑制され、そのメカニズムとして、水素分子によるHO-1/IL-10/Sirt1シグナル経路の活性化が関与することが明らかになった。
3分で読める詳細解説
結論
水素水は、非アルコール性脂肪性肝炎 (NASH) の進行を抑制し、肝臓の炎症と線維化を改善する効果がある。
研究の背景と目的
非アルコール性脂肪性肝炎 (NASH) は、重症化すると肝硬変に進行する可能性があり、有効な治療法は未だ確立されていない。本研究では、近年注目されている水素分子に着目し、NASHモデルマウスに対する水素水の効果とそのメカニズムを解明することを目的とした。
研究方法
NASHモデルマウスは、コリン欠乏・L-アミノ酸規定食 (CDAA) を20週間摂取させることで作製した。対照群には、コリン添加・L-アミノ酸規定食 (CSAA) を20週間摂取させた。これらのマウスに7ppmの高濃度水素水を4週間、8週間、20週間飲ませ、それぞれ以下の群に分け、肝臓組織の炎症、線維化、脂肪蓄積、関連遺伝子・タンパク質の発現量などを比較検討した。
- CSAA群:CSAA食+水道水
- CSAA+HRW群:CSAA食+水素水
- CDAA群:CDAA食+水道水
- CDAA+HRW12W群:CDAA食+水素水 (12週目から20週目)
- CDAA+HRW16W群:CDAA食+水素水 (16週目から20週目)
- CDAA+HRW20W群:CDAA食+水素水 (0週目から20週目)
研究結果
Appendix(用語解説)
- NASH:非アルコール性脂肪肝炎。肥満などが原因で肝臓に脂肪が蓄積し、炎症や線維化を伴う病態。
- CDAA食:コリン欠乏アミノ酸添加食餌。NASHモデル動物の作製に用いられる。
- Sirt1:NAD+依存性脱アセチル化酵素。代謝や炎症の制御に関与する。
- AMPK:AMP活性化プロテインキナーゼ。エネルギー代謝の調節に重要な役割を果たす。
- PPARα/γ:ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α/γ。脂質代謝に関与する転写因子。
- HO-1:ヘムオキシゲナーゼ-1。強力な抗酸化・抗炎症作用を持つ酵素。
論文情報
タイトル
Hydrogen-rich water protects against liver injury in nonalcoholic steatohepatitis through HO-1 enhancement via IL-10 and Sirt 1 signaling(水素水は、IL-10とSirt1シグナリングを介したHO-1の増強により、非アルコール性脂肪性肝炎における肝障害を防御する)
引用元
Li, S. W., Takahara, T., Que, W., Fujino, M., Guo, W. Z., Hirano, S. I., Ye, L. P., & Li, X. K. (2021). Hydrogen-rich water protects against liver injury in nonalcoholic steatohepatitis through HO-1 enhancement via IL-10 and Sirt 1 signaling. American journal of physiology. Gastrointestinal and liver physiology, 320(4), G450–G463. https://doi.org/10.1152/ajpgi.00158.2020
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