研究論文
Effect of hydrogen-oxygen inhalation on sleep disorders and abnormal mood: a single-blind, randomized controlled trial(水素酸素吸入が睡眠障害と気分異常に及ぼす影響:単盲検ランダム化比較試験)

就寝前の水素吸入が睡眠の質と抑うつ気分を改善

一言まとめ

睡眠障害を持つ66人を対象としたランダム化比較試験で、7日間の水素酸素吸入が、空気を吸入したグループに比べ総睡眠時間の延長、中途覚醒時間の短縮、睡眠の質と抑うつ気分の改善に効果的であることを示した。

3分で読める詳細解説

結論

水素酸素吸入は、中途覚醒時間を減らし、睡眠の質と抑うつ気分を改善する。

研究の背景と目的

睡眠障害は、日中の活動に支障をきたすだけでなく、多くの慢性疾患と関連している。現在の治療法として薬物療法や認知行動療法があるが、薬には副作用や依存のリスクが 、認知行動療法には専門家不足といった課題があった。
一方、水素は抗炎症作用や抗酸化作用を持つことが知られているが、睡眠障害への効果はまだはっきりと分かっていなかった。そこで本研究は、水素と酸素の混合ガス吸入が、睡眠障害やそれに伴う気分の落ち込みにどのような影響を与えるかを明らかにすることを目的とした。

研究方法

  • 対象者: 慢性的な不眠の症状を持つ66名の男女。
    • 選定基準: ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)という睡眠の質を評価するテストで、睡眠の質が低いと判断された人(スコア7点以上)が対象となった。
    • 除外基準: 睡眠薬や抗不安薬を服用中の人、重い心臓・肝臓・腎臓などの病気を持つ人は除外された。
  • 介入方法:
    • 参加者をランダムに2つのグループに分けた。
    • 水素酸素群 (41名): 水素66.7%、酸素33.3%の混合ガスを吸入。
    • 対照群 (25名): 水素を含まない空気(プラセボ)を吸入。
    • 濃度: 水素66.7%、酸素33.3%。
    • 頻度・期間: 1日2回、7日間連続。
    • 実施時間: 1回につき1時間、就寝の2時間前に実施。
    • 流量: 60 mL/min。
  • 評価方法:
    • 客観的評価: 腕時計型の活動量計「アクティウォッチ」を装着してもらい、総睡眠時間、睡眠効率、中途覚醒時間を測定した。
    • 主観的評価: 質問票を用いて、睡眠の質(PSQI)、抑うつ(SDS)、不安(SAS)の度合いを評価した。

研究結果

  • 総睡眠時間: 7日後、水素酸素群は対照群に比べて総睡眠時間が有意に長くなった。
  • 中途覚醒時間: 7日後、水素酸素群は対照群に比べて、夜中に目覚めている時間が有意に短くなった。
  • 睡眠の質 (PSQIスコア): 7日後、水素酸素群は対照群に比べて、睡眠の質が有意に改善した (P < 0.05)。
  • 抑うつ (SDSスコア): 7日後、水素酸素群は対照群に比べて、抑うつ気分が有意に改善した (P < 0.05)。
  • 不安 (SASスコア): 不安の度合いについては、両グループ間で有意な差は見られなかった。ただし、水素酸素群内では、治療前と比較して治療後にSASスコアが有意に低下した。
  • 睡眠効率: 水素酸素群では治療前と比較して睡眠効率の改善が見られたものの、対照群との比較では有意な差はなかった。
  • 考察: 研究チームは、睡眠効率に両群間で差が出なかった理由として、7日間という治療期間の短さを挙げている。もし治療期間がもっと長ければ、有意な差が出た可能性があると述べている。
  • 研究の限界: この研究は参加者の数が比較的少なく、治療期間も短かった。また、効果のメカニズムを調べるための血液検査などができなかった点を限界として挙げている。

Appendix(用語解説)

  • 単盲検ランダム化比較試験: 研究の信頼性を高めるための手法。参加者をランダムに複数のグループに分け、自分がどちらの治療(本物か偽物か)を受けているかを知らされない状態(単盲検)で効果を比較する試験形式のこと。
  • ピッツバーグ睡眠質問票 (PSQI): 過去1ヶ月間の睡眠の質について、患者自身が回答する形式の国際的なアンケート。
  • アクティウォッチ: 腕時計のように手首に着ける活動量計。体の動きを記録することで、睡眠時間や中途覚醒といった睡眠パターンを客観的に評価する装置。
  • 睡眠効率: ベッドに入っている総時間のうち、実際に眠っていた時間の割合。高いほど効率よく眠れていることを示す。
  • p値: 統計学で用いられる指標で、結果の差が偶然起こった可能性の大きさを示す。一般的にこの値が0.05より小さい(P<0.05)場合、その差は偶然ではなく「意味のある差(有意差)」だと判断される。

論文情報

タイトル

Effect of hydrogen-oxygen inhalation on sleep disorders and abnormal mood: a single-blind, randomized controlled trial(水素酸素吸入が睡眠障害と気分異常に及ぼす影響:単盲検ランダム化比較試験)

引用元

Gao, Y. H., Chen, J., Zhong, H., & Zhao, Q. (2026). Effect of hydrogen-oxygen inhalation on sleep disorders and abnormal mood: a single-blind, randomized controlled trial. Medical gas research16(2), 98–102. https://doi.org/10.4103/mgr.MEDGASRES-D-25-00020

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