一言まとめ
LDL受容体欠損マウスに高脂肪食を与え水素水を13週間投与した結果、大動脈血管内皮細胞の老化マーカー発現が抑制され、マクロファージ浸潤や炎症性サイトカインの発現も軽減された。
3分で読める詳細解説
結論
水素水は、マウス大動脈の血管老化と関連する炎症反応を抑制する可能性を持つ。
研究の背景と目的
動脈硬化症は心筋梗塞や脳梗塞などの重篤な疾患を引き起こす主要な原因である。動脈硬化の発症過程では、酸化LDLの蓄積により血管内皮細胞が損傷を受け、その後マクロファージが浸潤して泡沫細胞となり、局所的な炎症反応を引き起こす。近年の研究により、老化細胞が動脈硬化の発症と進行に関与することが明らかになってきた。老化細胞は、p16INK4aやp21などのサイクリン依存性キナーゼ阻害因子の発現により細胞分裂が停止した状態にある。本研究では、抗酸化・抗炎症作用を持つ水素分子に着目し、LDL受容体欠損マウスを用いて動脈硬化における水素水の効果を評価することを目的とした。
研究方法
研究結果
Appendix(用語解説)
- LDL受容体欠損マウス: LDL(低密度リポタンパク質)受容体の遺伝子を欠損させたマウス。血中のLDLコレステロールが蓄積しやすく、動脈硬化症の研究モデルとして使用される
- p16INK4a、p21: 細胞周期を制御するサイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害因子。細胞老化のマーカーとして使用される
- マクロファージ: 白血球の一種で、異物や死んだ細胞を貪食する免疫細胞。動脈硬化では酸化LDLを取り込んで泡沫細胞となる
- TNFα: 腫瘍壊死因子アルファ。主に活性化されたマクロファージから産生される炎症性サイトカイン
- CD36: スカベンジャー受容体の一種で、マクロファージによる酸化LDLの取り込みに関与する
- SA-β-Gal: 老化関連β-ガラクトシダーゼ。細胞老化のマーカーとして使用されるが、完全に特異的ではない
- ABT-263: Bcl-2ファミリータンパク質阻害剤で、老化細胞を選択的に除去する薬剤(セノリティック薬)
論文情報
タイトル
Administration of hydrogen-rich water prevents vascular aging of the aorta in LDL receptor-deficient mice(水素水の投与はLDL受容体欠損マウスの大動脈における血管老化を予防する)
引用元
Iketani, M., Sekimoto, K., Igarashi, T., Takahashi, M., Komatsu, M., Sakane, I., Takahashi, H., Kawaguchi, H., Ohtani-Kaneko, R., & Ohsawa, I. (2018). Administration of hydrogen-rich water prevents vascular aging of the aorta in LDL receptor-deficient mice. Scientific reports, 8(1), 16822. https://doi.org/10.1038/s41598-018-35239-0
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