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研究報告

水素分子は皮膚炎や糖尿病などの慢性的なかゆみを軽減する

更新日:2026/02/11
Molecular hydrogen reduces dermatitis-induced itch, diabetic itch and cholestatic itch by inhibiting spinal oxidative stress and synaptic plasticity via SIRT1-β-catenin pathway in mice(水素分子は脊髄でのSIRT1-β-カテニン経路を介した酸化ストレスとシナプス可塑性の抑制により、マウスの皮膚炎、糖尿病、胆汁うっ滞による慢性的なかゆみを軽減する)
マウスの慢性かゆみモデル(皮膚炎、糖尿病、胆汁うっ滞)において、水素ガス吸入(2%、1日1時間、3日間)または水素生理食塩水投与により掻き行動が50%以上減少し、脊髄での酸化ストレスマーカーの低下と抗酸化酵素活性の回復が確認された。
  1. 13分で読める詳細解説
    1. 結論
    2. 研究の背景と目的
    3. 研究方法
    4. 研究結果
    5. 論文情報
  2. 2専門家のコメント

3分で読める詳細解説

結論

水素吸入は脊髄での酸化ストレスを抑制することで、様々な原因による慢性的なかゆみを効果的に軽減する。

研究の背景と目的

慢性的なかゆみは人口の8~25.5%に影響を及ぼし、アトピー性皮膚炎、糖尿病、肝疾患などが原因となる深刻な問題である。既存の治療薬では効果が限定的で、新たな治療法の開発が求められている。近年、脊髄での酸化ストレスがかゆみの慢性化に関与することが明らかになってきた。本研究は、抗酸化作用を持つ水素分子が慢性的なかゆみを抑制できるか、またその作用メカニズムを解明することを目的とした。

研究方法

  • 対象: C57BL/6Jマウス(雄雌両方、8-10週齢)
  • 慢性かゆみモデル:
    • 皮膚炎モデル:DNFB(ジニトロフルオロベンゼン)を首の皮膚に塗布
    • 糖尿病モデル:高脂肪食8週間後、STZ(ストレプトゾトシン)65mg/kgを3日間腹腔内投与
    • 胆汁うっ滞モデル:胆管結紮手術
  • 介入方法:
    • 水素ガス吸入:濃度2%、流量4L/分、1日1時間、3日間連続
    • 水素生理食塩水(HRS):5mL/kg、腹腔内投与、1日1回、3日間連続
  • 評価方法: 掻き行動の回数測定、脊髄組織の生化学的解析、電気生理学的解析、fMRI解析

研究結果

  • 掻き行動の減少:
    • 皮膚炎モデル:水素ガス吸入により掻き行動が有意に減少(F [1,70] = 50.29, P < 0.0001)
    • 糖尿病モデル:水素ガス吸入により掻き行動が有意に減少(F [1,70] = 35.06, P < 0.0001)
    • 胆汁うっ滞モデル:水素ガス吸入により掻き行動が有意に減少(F [1,70] = 50.58, P < 0.0001)
  • 分子メカニズム:
    • 脊髄でのSIRT1タンパク質の発現と活性が回復
    • β-カテニンのアセチル化レベルが減少
    • 酸化ストレスマーカー(ROS、MDA、8-OHdG、3-NT)が減少
    • 抗酸化酵素(CAT、SOD、GPx)の活性が増加
  • 神経機能の改善:
    • 脊髄での樹状突起棘密度が正常化
    • 興奮性シナプス後電流の頻度が減少
    • 脳機能結合の異常が改善(fMRI解析)
  • 作用機序の確認:
    • SIRT1阻害剤(EX527)の投与により水素の効果が消失
    • β-カテニン阻害剤(XAV939、iCRT14)もかゆみを抑制
  • 考察と研究の限界:
    • SIRT1の活性化とβカテニンの脱アセチル化が、かゆみ制御における新たな治療ターゲットとなる可能性が示された。
    • 水素治療は、末梢だけでなく中枢神経系にも作用し、脳の機能的結合性の変化も改善することが示された。
      • マウスモデルでの研究であり、ヒトへの応用にはさらなる検証が必要
      • 水素がどのようにしてSIRT1の発現と活性を高めるのか、具体的なメカニズムは解明されていない。

Appendix(用語解説)

  • SIRT1: サーチュイン1。細胞内でタンパク質の脱アセチル化を行う酵素で、酸化ストレスや炎症の制御に重要な役割を果たす
  • β-カテニン: 細胞内シグナル伝達に関わるタンパク質。アセチル化されると活性化し、神経の興奮性を高める
  • 酸化ストレス: 活性酸素種(ROS)が過剰に産生され、細胞や組織に障害を与える状態
  • 樹状突起棘: 神経細胞の樹状突起にある小さな突起で、シナプス形成に重要
  • シナプス可塑性: 神経細胞間の情報伝達効率が変化する性質。慢性的なかゆみでは過剰に亢進する
  • fMRI: 機能的磁気共鳴画像法。脳の活動を非侵襲的に測定する手法

論文情報

タイトル

Molecular hydrogen reduces dermatitis-induced itch, diabetic itch and cholestatic itch by inhibiting spinal oxidative stress and synaptic plasticity via SIRT1-β-catenin pathway in mice(水素分子は脊髄でのSIRT1-β-カテニン経路を介した酸化ストレスとシナプス可塑性の抑制により、マウスの皮膚炎、糖尿病、胆汁うっ滞による慢性的なかゆみを軽減する)

引用元

Zhang, L., Zhao, F., Li, Y., Song, Z., Hu, L., Li, Y., Zhang, R., Yu, Y., Wang, G., & Wang, C. (2025). Molecular hydrogen reduces dermatitis-induced itch, diabetic itch and cholestatic itch by inhibiting spinal oxidative stress and synaptic plasticity via SIRT1-β-catenin pathway in mice. Redox biology, 79, 103472. https://doi.org/10.1016/j.redox.2024.103472

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公開日:2025/05/27
最終更新日:2026/02/11
目次
  1. 3分で読める詳細解説
    1. 結論
    2. 研究の背景と目的
    3. 研究方法
    4. 研究結果
    5. 論文情報
  2. 専門家のコメント

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公開日:2025/05/27
最終更新日:2026/02/11
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