一言まとめ
サルコペニア(加齢性筋肉減少症)が疑われる80代女性に対し、運動療法、栄養指導、水素吸入を組み合わせた3ヶ月間の介入を行ったところ、筋力や歩行速度が向上し、炎症・酸化ストレスマーカーが減少、介護者の負担も大幅に軽減した。
3分で読める詳細解説
結論
複合的介入(運動・栄養・水素吸入)はサルコペニア疑いの高齢者の身体機能を高め、介護負担を軽減する可能性がある。
研究の背景と目的
サルコペニアは加齢に伴う骨格筋量と機能の低下を特徴とする多因子疾患で、1997年に概念が提唱された。慢性炎症による蛋白質合成・分解のバランス崩壊や神経筋接合部の劣化などが原因と考えられている。サルコペニアの予防には適切な栄養、習慣的な運動が推奨されているが、治療に関する知見は限られている。
一方、水素ガスは脳内の酸化ストレスや炎症を減少させる選択的抗酸化物質として機能することが報告されている。水素水摂取による高齢者のテロメア長増加や身体機能改善を示す研究もあるが、サルコペニアへの水素吸入療法の効果を検証した研究はなかった。
本研究は、サルコペニアが疑われる高齢女性に対し、運動療法、栄養指導、水素ガス吸入を組み合わせた複合的介入の効果を検証することを目的とした。
研究方法
研究結果
Appendix(用語解説)
- サルコペニア:加齢に伴う骨格筋量と筋力の低下を特徴とする症候群。身体機能低下、転倒リスク増加、生活の質低下などと関連する。
- 骨格筋量指数(SMI):体重あたりの骨格筋量を評価する指標。身長(m)の二乗で除した値で表される。
- CRP(C反応性タンパク質):体内の炎症反応を示す血液中のタンパク質。値が高いほど炎症が強いことを示す。
- IL-6(インターロイキン6):免疫系で重要な役割を果たすサイトカインの一種。慢性的に上昇すると筋肉タンパク質の分解を促進し、筋力低下につながる。
- 8-OHdG(8-ヒドロキシデオキシグアノシン):DNAの酸化的損傷を示すバイオマーカー。酸化ストレスの指標として用いられる。
- 家族介護負担尺度(FCS):介護者の負担を評価するための尺度。介護者の感情負担、介護時間、介護者の健康状態、将来への不安などの要素を測定する。
- ボルグスケール:運動中の主観的な疲労度を数値で表す尺度。「6(非常に楽)」から「20(非常にきつい)」までの範囲で評価する。
論文情報
タイトル
The Improvement of Physical Function and Caregiver Burden by a Multimodal Intervention: A Case Study of Combined Exercise Therapy, Nutritional Guidance, and Hydrogen Gas Inhalation Therapy(複合的介入による身体機能と介護負担の改善:運動療法、栄養指導、水素ガス吸入療法を組み合わせた症例研究)
引用元
Harada, Y., Okamura, R., Sawano, J., Koide, N., & Miyakawa, M. (2025). The Improvement of Physical Function and Caregiver Burden by a Multimodal Intervention: A Case Study of Combined Exercise Therapy, Nutritional Guidance, and Hydrogen Gas Inhalation Therapy. Cureus, 17(2), e79516. https://doi.org/10.7759/cureus.79516
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