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研究報告

天然水素ガスと工学的微細藻類による敗血症急性肺障害の予防

更新日:2026/02/11
Natural hydrogen gas and engineered microalgae prevent acute lung injury in sepsis(天然水素ガスと工学的微細藻類による敗血症急性肺障害の予防)
マウスの敗血症モデルにおいて、水素分子と微細藻類クロレラを複合的に用いたナノシステム(DQB@C)が肺内の酸化ストレスと炎症を抑制し、タイトジャンクションの保護とフェロトーシス(鉄依存性細胞死)の抑制により急性肺障害を予防することを示した研究。
  1. 13分で読める詳細解説
    1. 結論
    2. 研究の背景と目的
    3. 研究方法
    4. 研究結果
    5. 論文情報
  2. 2専門家のコメント

3分で読める詳細解説

結論

水素分子と微細藻類クロレラを用いたナノシステム(DQB@C)は敗血症による急性肺障害を予防し、多臓器保護効果も示す。

研究の背景と目的

敗血症は感染に対する宿主の不均衡な反応によって引き起こされる生命を脅かす臓器機能障害であり、世界中で年間4800万人以上が罹患し、約1100万人が死亡している重篤な疾患である。肺は敗血症の影響を最も受けやすい臓器だが、敗血症による肺障害の発症メカニズムは完全には解明されておらず、効果的な治療法も不足している。本研究では、天然の水素ガスと微細藻類クロレラを組み合わせた新しい治療アプローチの開発を目的とした。

研究方法

  • 対象:C57BL/6Jマウス(体重20-25g)
  • 介入方法:
    • 敗血症モデル:盲腸結紮穿刺(CLP)法によるマウス敗血症モデルを作成
    • 水素処理:2%濃度の水素ガスを含む密閉チャンバー内でマウスを処理
    • ナノシステム開発:ジヒドロケルセチン(DQ)と水素放出物質アンモニアボラン(B)を自己組織化ナノ粒子として構築し、クロレラ(C)を生物学的キャリアとして使用したDQB@Cナノシステムを開発
    • 投与量:体内実験では200μLのDQB@Cを腹腔内注射
    • 実験グループ:Sham群(偽手術)、CLP群、CLP+DQ群、CLP+DQB@C群、CLP+メロペネム群
  • 評価方法:
    • マルチオミクス解析(リン酸化プロテオミクス、メタボロミクス、単一細胞解析)
    • in vitro実験:ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVECs)と肺上皮細胞(BEAS-2B)を用いた細胞実験
    • 酸化ストレス、炎症、フェロトーシス関連マーカーの測定
    • 生存率、血中炎症マーカー、多臓器機能の評価

研究結果

  • リン酸化プロテオミクス解析により、水素分子が敗血症時のTjp1(ZO-1)とEsamという2つのタイトジャンクション関連タンパク質のリン酸化に影響することを同定した。
  • メタボロミクス解析では、フェロトーシスとグルタチオン代謝が水素の標的経路として特定された。
  • 開発したDQB@Cナノシステムは、粒子サイズ約307.3nm、ゼータ電位-22mVの特性を示し、感染環境応答性の水素放出能と生体安全性を持つことが確認された。
  • 細胞実験では、DQB@Cは以下の効果を示した:
    • LPS刺激による細胞内の酸化ストレスと炎症因子の蓄積を抑制
    • フェロトーシス関連タンパク質Slc7a11/xCTの発現増加とCox2の発現減少
    • タイトジャンクションタンパク質ZO-1とEsamの保護効果
  • 動物実験では、DQB@C処理により以下の効果が確認された:
    • CLP後24時間生存率の改善(CLP群40%→DQB@C群70%)
    • 血清CRP(炎症マーカー)、ALT(肝機能)、クレアチニン(腎機能)の改善
    • 肺保護効果(肺障害マーカーsRAGE、SP-Dの改善)
    • 多臓器保護効果
    • 肺組織におけるZO-1とEsamタンパク質発現の回復
    • 鉄イオン蓄積の減少とグルタチオン(GSH)増加、マロンジアルデヒド(MDA)減少による抗酸化効果

Appendix(用語解説)

  • フェロトーシス:鉄依存性の細胞死の一形態で、過剰な鉄イオンによる脂質過酸化反応により引き起こされる。通常のアポトーシスとは異なるメカニズムで進行する。
  • タイトジャンクション:細胞間の接着構造で、特に上皮・内皮細胞間のバリア機能を担い、物質の漏出を防ぐ。ZO-1(Tjp1)などのタンパク質が構成要素となっている。
  • リン酸化:タンパク質の翻訳後修飾の一種で、タンパク質にリン酸基が付加されること。細胞内シグナル伝達や様々な生物学的過程の調節に関与する。
  • 盲腸結紮穿刺(CLP)法:実験動物に敗血症を誘導するための標準的モデル。盲腸を結紮した後に穿刺し、腸内容物が腹腔内に漏出することで全身感染を引き起こす。
  • グルタチオン代謝:グルタチオンは重要な抗酸化物質で、酸化ストレスから細胞を保護する。その代謝バランスは細胞の酸化還元状態を調節する。

論文情報

タイトル

Natural hydrogen gas and engineered microalgae prevent acute lung injury in sepsis(天然水素ガスと工学的微細藻類による敗血症急性肺障害の予防)

引用元

Wang, Y., Han, Q., Liu, L., Wang, S., Li, Y., Qian, Z., Jiang, Y., & Yu, Y. (2024). Natural hydrogen gas and engineered microalgae prevent acute lung injury in sepsis. Materials today. Bio, 28, 101247. https://doi.org/10.1016/j.mtbio.2024.101247

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公開日:2025/05/18
最終更新日:2026/02/11
目次
  1. 3分で読める詳細解説
    1. 結論
    2. 研究の背景と目的
    3. 研究方法
    4. 研究結果
    5. 論文情報
  2. 専門家のコメント

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公開日:2025/05/18
最終更新日:2026/02/11
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