一言まとめ
水素が選択的に有害な活性酸素種(ヒドロキシルラジカルやペルオキシナイトライト)を減少させることで、炎症や腫瘍の進行を抑制する機序を解説しており、水素の臨床応用の可能性を示唆している。
3分で読める詳細解説
結論
水素は有害な活性酸素種を選択的に除去することで、抗炎症・抗腫瘍効果を発揮する。
研究の背景と目的
活性酸素種(ROS)は細胞の酸化ストレスを引き起こし、腫瘍細胞の増殖、浸潤、転移を促進する重要な因子である。従来の抗酸化物質と比較して、水素(H₂)は小さな分子であり、生体膜を通過して細胞質、ミトコンドリア、核内へと浸透できるという特性がある。また、水素は有害な活性酸素種のみを選択的に減少させ、正常な代謝に必要な活性酸素種には影響を与えないという特徴を持つ。本論文はこれらの特性に着目し、水素の抗炎症作用および抗腫瘍作用について、活性酸素種との関連から概説することを目的としている。
研究方法
本論文はレビュー(総説)論文であり、水素の使用方法、活性酸素種と炎症性疾患・がんとの関連、水素の抗酸化特性について、既存の研究結果をまとめている。特に以下の水素投与法について解説している。
- 吸入法:水素ガスを吸入する方法
- 経口摂取:水素水として摂取する方法(0.8 mM/1.6 ppmまで可能)
- 静脈内投与:生理食塩水に水素を飽和させた水素リッチ生理食塩水(HS)を投与する方法
- 外用:水素を溶解した温水浴や水素を含む目薬など
論文内では個別の研究における詳細な投与量や期間などの具体的な情報は限定的に記載されており、レビュー論文としての性質上、様々な研究結果の総括が主となっている。
研究結果
Appendix(用語解説)
- 活性酸素種(ROS): 酸素から派生した反応性の高い分子で、細胞内の酸化ストレスを引き起こす原因となる。代表的なものにスーパーオキシドアニオン(O₂⁻)、ヒドロキシルラジカル(・OH)、過酸化水素(H₂O₂)などがある。
- ヒドロキシルラジカル(・OH): 最も反応性が高い活性酸素種の一つで、細胞のDNAや脂質、タンパク質に損傷を与える。
- ペルオキシナイトライト(ONOO-): 一酸化窒素とスーパーオキシドアニオンから生成される強力な酸化剤で、細胞に酸化的損傷を与える。
- 抗酸化物質: 活性酸素種による酸化的損傷から細胞を保護する物質。
- シグナル伝達: 細胞が外部や内部からの刺激に応答するために情報を伝達する過程。適切な量の活性酸素種はこのプロセスに必要である。
- 炎症性サイトカイン: 免疫反応や炎症反応を調節するタンパク質で、炎症を促進あるいは抑制する役割がある。TNF-αやインターロイキン(IL)などが含まれる。
論文情報
タイトル
Anti-inflammatory and antitumor action of hydrogen via reactive oxygen species (Review)(水素の抗炎症作用および抗腫瘍作用:活性酸素種を介した機序)
引用元
Yang, Y., Zhu, Y., & Xi, X. (2018). Anti-inflammatory and antitumor action of hydrogen via reactive oxygen species (Review). Oncology Letters, 16(2), 2771-2776. https://doi.org/10.3892/ol.2018.9023
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