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研究報告

水素は好中球細胞外トラップの形成を抑制する

更新日:2026/02/11
H2 Inhibits the Formation of Neutrophil Extracellular Traps(水素は好中球細胞外トラップの形成を抑制する)
好中球から放出される好中球細胞外トラップ(NETs)の形成が様々な炎症性疾患の病態に関与しているが、研究チームは水素がPMAやA23187で刺激した好中球のNETs形成を抑制し、LPS誘発性敗血症モデルにおけるNETs放出も抑制することを発見した。
  1. 13分で読める詳細解説
    1. 結論
    2. 研究の背景と目的
    3. 研究方法
    4. 研究結果
    5. 論文情報
  2. 2専門家のコメント

3分で読める詳細解説

結論

水素は好中球細胞外トラップの形成を抑制し、過剰な好中球活性化を伴う炎症性疾患の新治療戦略となる可能性がある。

研究の背景と目的

好中球細胞外トラップ(NETs)は、感染症に対する生体防御として好中球が核内DNAを放出し、病原微生物を捕捉して殺菌する自然免疫応答である。しかし、NETs形成が過剰になると、敗血症、急性呼吸器症候群、COVID-19、心血管疾患など様々な病態を引き起こす。一方、水素は抗酸化作用を持ち、臨床的にも実験的にも炎症を軽減することが証明されているが、その分子メカニズムは不明な点が多い。本研究は水素がNETs形成および過剰な好中球活性化を抑制するかどうかを調査することを目的としている。

研究方法

  • 対象:健常ボランティアの血液から分離した好中球、BALB/cマウス(10週齢、雄性)、マイクロミニブタ(5歳、雌性)
  • 介入方法:
    • 細胞実験:好中球培養を水素曝露培地で処理
    • 動物実験:水素ガス吸入(マイクロミニブタには250 mL/分の流量で経鼻カニューレから100%水素を投与)
  • 対照群:未処理の培地または対照ガス
  • 評価方法:
    • PMAまたはA23187刺激後の好中球のヒストンシトルリン化、クロマチン複合体による膜破壊、NET構成成分(DNA/ヒストンH1、SYTOX Green)の放出の測定
    • フローサイトメトリー分析によるCXCR4およびSYTOX発現の評価
    • MPO塩素化活性の測定によるHOCl産生の評価
    • LPS誘発性敗血症モデルにおける血液、気管支肺胞洗浄液(BAL)、肺でのNETs形成評価

研究結果

  • PMAで刺激した好中球を水素曝露培地で処理すると、対照と比較してヒストンのシトルリン化(CitH3)、クロマチン複合体による膜破壊、NETsの放出が有意に抑制された。具体的には二本鎖DNA(dsDNA)放出が有意に減少した(p値は<0.001)。
  • 水素はPMA刺激後1時間で認められる好中球の凝集を有意に抑制した。
  • H2AXのSer-139リン酸化(DNA損傷のマーカー)がPMA刺激で増加したが、水素処理でこの変化は有意に抑制された。
  • CXCR4高発現好中球はNETs形成に傾きやすいことが知られているが、水素はCXCR4発現を抑制した。
  • 水素はPMA刺激好中球のHOCl生成能(MPO塩素化活性)を顕著に抑制したが、貪食作用や走化性には影響を与えなかった。
  • A23187(カルシウムイオノフォア)誘導性NETs形成も水素により抑制された。これはROSに依存しない経路での抑制効果を示唆している。
  • 水素の抑制効果はN-アセチルシステイン(NAC)やアスコルビン酸などの抗酸化剤よりも強力だった。
  • 動物実験では、水素吸入はLPS誘発性敗血症モデルのマウスとマイクロミニブタの血液およびBAL中のNETs形成と放出を抑制した。

Appendix(用語解説)

  • 好中球細胞外トラップ(NETs): 好中球が放出する網目状のDNA構造で、ヒストンや抗菌タンパク質を含み、病原体を捕捉・殺菌する防御機構。過剰に形成されると組織障害や血栓形成を引き起こす。
  • PMA(ホルボール12-ミリステート13-アセテート): プロテインキナーゼCを直接活性化し、活性酸素種(ROS)の産生を誘導する実験用試薬。
  • A23187(カルシウムイオノフォア): 細胞膜を通してカルシウムイオンの輸送を促進し、細胞内カルシウム濃度を上昇させる化合物。
  • ヒストンシトルリン化: ヒストンというDNAを巻き付けるタンパク質内のアルギニン残基がシトルリン残基に変換される過程。NETs形成に重要な役割を果たす。
  • MPO(ミエロペルオキシダーゼ): 好中球の酵素で、H2O2と塩化物イオンからHOCl(次亜塩素酸)を生成する。HOClは強力な酸化剤で殺菌作用があるが、炎症性の細胞損傷も引き起こす。
  • CXCR4: 好中球の表面に発現するケモカイン受容体で、老化した好中球ではその発現が上昇する。CXCR4高発現好中球はNETs形成に傾きやすい。
  • 酸化バースト: 好中球が活性化されると急速に酸素消費が増加し、活性酸素種(ROS)を大量に産生する現象。
  • LPS(リポ多糖): グラム陰性菌の細胞壁外膜の構成成分で、強力な免疫刺激作用を持ち、敗血症モデルの作成に用いられる。

論文情報

タイトル

H2 Inhibits the Formation of Neutrophil Extracellular Traps(水素は好中球細胞外トラップの形成を抑制する)

引用元

Shirakawa, K., Kobayashi, E., Ichihara, G., Kitakata, H., Katsumata, Y., Sugai, K., Hakamata, Y., & Sano, M. (2022). H2 Inhibits the Formation of Neutrophil Extracellular Traps. JACC. Basic to translational science, 7(2), 146–161. https://doi.org/10.1016/j.jacbts.2021.11.005

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公開日:2025/05/07
最終更新日:2026/02/11
目次
  1. 3分で読める詳細解説
    1. 結論
    2. 研究の背景と目的
    3. 研究方法
    4. 研究結果
    5. 論文情報
  2. 専門家のコメント

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公開日:2025/05/07
最終更新日:2026/02/11
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