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研究報告

新規治療分子である水素の作用機序

更新日:2026/02/11
Hydrogen, a Novel Therapeutic Molecule, Regulates Oxidative Stress, Inflammation, and Apoptosis(新規治療分子である水素による酸化ストレス、炎症、アポトーシスの調節)
水素分子は、酸化ストレス、炎症、アポトーシス(細胞死)を調節する有望な治療分子であり、様々な疾患への応用が期待される。本論文は、水素分子の抗酸化、抗炎症、抗アポトーシス作用とそのメカニズムを概説し、特にCOVID-19への応用可能性についても考察したものである。
  1. 13分で読める詳細解説
    1. 結論
    2. 研究の背景と目的
    3. 研究方法
    4. 研究結果
    5. 論文情報
  2. 2専門家のコメント

3分で読める詳細解説

結論

水素分子は、有害な活性酸素を選択的に除去し、炎症や細胞死を抑制することで、多様な疾患に対する治療効果を発揮する可能性がある 。

研究の背景と目的

水素分子(H2)は無色無臭の気体であり、近年様々な動物実験や臨床試験で治療効果が示されている。特に中国ではCOVID-19治療ガイドラインにも水素吸入が推奨されるようになった。水素は分子量が小さいため細胞膜を速やかに通過し、広範な生物学的効果を発揮する。急性膵炎、敗血症、呼吸器疾患、虚血再灌流障害、自己免疫疾患など、様々な急性・慢性炎症性疾患の治療と予防に役立つ可能性がある。本研究は水素の抗酸化作用、抗炎症作用、抗アポトーシス作用とそのメカニズムを包括的に解説し、COVID-19を含む様々な疾患への臨床応用の戦略を提供することを目的としている。

研究方法

本論文はレビュー論文であり、以下の点について文献調査と考察を行っている:

  • 水素の生理学的特性
  • 水素の投与経路(吸入、水素水摂取、水素生理食塩水注射など)
  • 水素の生物学的効果(抗酸化作用、抗炎症作用、抗アポトーシス作用)
  • 水素のCOVID-19治療への応用可能性

本論文は実験的研究ではないため、対象者数や具体的な介入方法は記載されていない。しかし、引用されている研究の投与量や方法については言及されている。例えば、水素ガス吸入では1〜4%の濃度や、特に近年では水と酸素の電気分解によって生成された水素と酸素の混合ガス(66% H2、33% O2)が使用されていることが記載されている。

研究結果

  • 抗酸化作用:水素は特に有害な活性酸素種であるヒドロキシルラジカル(•OH)やペルオキシナイトライト(ONOO−)を選択的に除去する。また、Nrf2-ARE経路の活性化により内因性抗酸化酵素(SOD、グルタチオンなど)の発現を促進する。
  • ミトコンドリア機能改善:水素はミトコンドリアのATP感受性カリウムチャネル(mKATP)を活性化し、ミトコンドリア膜電位を調節してATP産生を改善する。また、CoQ9/10濃度を増加させ、ミトコンドリアの酸化的リン酸化を促進する。
  • 抗炎症作用:水素は炎症初期段階で好中球やマクロファージの浸潤を抑制し、炎症性サイトカイン(IL-1β、TNF-α、IL-6、IFN-γなど)の発現を減少させる。また、NF-κBなどの炎症性転写因子の活性化も抑制する。
  • 細胞死制御:水素はアポトーシス、オートファジー、パイロトーシスなどの細胞死経路を双方向的に調節する。通常細胞ではこれらの過剰な活性化を抑制し、がん細胞では促進することで、治療効果を発揮する可能性がある。
  • 免疫系調節:水素は免疫系の過剰活性化や免疫不全状態を改善する。Treg細胞の増殖促進、Th1/Th2バランスの調整、M1/M2マクロファージバランスの調整などを通じて免疫恒常性を維持する。
  • COVID-19への応用可能性:水素はCOVID-19肺炎に対して、サイトカインストームの抑制、酸化ストレスの軽減、肺胞上皮細胞保護、呼吸困難改善などの効果が期待される。中国では既にCOVID-19治療ガイドラインに酸素と水素の混合ガス(33.3% O2、66.6% H2)の吸入が推奨されている。
  • 論文では水素治療の安全性と有効性が強調されているが、研究の限界として、水素の正確な作用機序がまだ完全には解明されていない点が挙げられている。

Appendix(用語解説)

  • 活性酸素種(ROS): 酸素を含む反応性の高い分子で、スーパーオキシドアニオン、ヒドロキシルラジカル、過酸化水素などが含まれる。過剰に産生されると細胞障害を引き起こす。
  • NF-κB: 炎症反応や免疫応答に関与する重要な転写因子。炎症性サイトカインの産生を促進する。
  • Nrf2: 抗酸化応答に関与する転写因子で、抗酸化酵素の発現を促進する。
  • アポトーシス: プログラムされた細胞死の一種で、細胞の萎縮、アポトーシス小体の形成、クロマチンの凝縮などを特徴とする。
  • オートファジー: 細胞内の不要なタンパク質やオルガネラを分解するプロセス。
  • パイロトーシス: 炎症性細胞死の一種で、主にカスパーゼ-1の活性化とIL-1βやIL-18などの炎症性サイトカインの放出を特徴とする。
  • Treg細胞: 制御性T細胞のことで、過剰な免疫反応を抑制する機能を持つ。
  • サイトカインストーム: 免疫系の過剰な活性化により、大量のサイトカインが産生される状態。重症の全身性炎症を引き起こす。

論文情報

タイトル

Hydrogen, a Novel Therapeutic Molecule, Regulates Oxidative Stress, Inflammation, and Apoptosis(新規治療分子である水素による酸化ストレス、炎症、アポトーシスの調節)

引用元

Tian, Y., Zhang, Y., Wang, Y., Chen, Y., Fan, W., Zhou, J., Qiao, J., & Wei, Y. (2021). Hydrogen, a Novel Therapeutic Molecule, Regulates Oxidative Stress, Inflammation, and Apoptosis. Frontiers in Physiology, 12, 789507. https://doi.org/10.3389/fphys.2021.789507

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公開日:2025/05/09
最終更新日:2026/02/11
目次
  1. 3分で読める詳細解説
    1. 結論
    2. 研究の背景と目的
    3. 研究方法
    4. 研究結果
    5. 論文情報
  2. 専門家のコメント

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公開日:2025/05/09
最終更新日:2026/02/11
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