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研究報告

水素吸入が間欠的低酸素による左心室リモデリングを軽減

Inhalation of hydrogen gas attenuates left ventricular remodeling induced by intermittent hypoxia in mice(水素ガス吸入が間欠的低酸素による左心室リモデリングを軽減する:マウス実験)
マウスを用いた実験で、間欠的な低酸素状態によって引き起こされる心臓(左心室)の構造的変化(リモデリング)に対し、1.3%の水素吸入が酸化ストレスを軽減し、リモデリングを抑制することを示した。
  1. 13分で読める詳細解説
    1. 結論
    2. 研究の背景と目的
    3. 研究方法
    4. 研究結果
    5. 論文情報
  2. 2専門家のコメント

3分で読める詳細解説

結論

水素吸入は、睡眠時無呼吸症候群に関連する間欠的低酸素による酸化ストレスを軽減し、左心室リモデリングを抑制する効果がある。

研究の背景と目的

睡眠時無呼吸症候群は、心血管疾患のリスクを高めることが知られている。その一因である間欠的低酸素は、心臓に酸化ストレスを引き起こし、有害な左心室リモデリング(心臓の構造と機能の変化)を促進する。水素分子は抗酸化作用を持つ可能性が示唆されている。そこで本研究は、マウスの間欠的低酸素モデルを用いて、水素吸入が脂質代謝異常や左心室リモデリングに与える影響を調査することを目的とした。

研究方法

  • 対象者: オスのC57BL/6Jマウス(実験群合計62匹、対照群13匹)。
  • 介入方法:
    • 間欠的低酸素負荷:1分間の低酸素(5% O2)と常酸素(21% O2)のサイクルを、日中8時間、7日間繰り返した。
    • 水素ガス吸入: 1.3%の水素ガスを以下の3つのレジメンで投与
      • 再酸素化時のみ(H2-reoxy群)
      • 低酸素時のみ(H2-hypo群)
      • 実験期間全体を通して(H2-throughout群)
  • 対照群の設定: 同室内で正常酸素条件下に置いたマウス
  • 評価方法:
    • 右心室・左心室収縮期圧の測定
    • 血漿リポタンパク質分析
    • 心臓の組織学的検査(光学顕微鏡・電子顕微鏡)
    • 左心室心筋における4-HNE修飾タンパク質付加物の免疫組織化学的検査
    • 左心室心筋におけるスーパーオキシド産生の検出
    • 定量的リアルタイムRT-PCR(TNF-α、IL-6、BNP mRNA発現量測定)

研究結果

  • 体重・心臓重量・血行動態への影響:
    • 間欠的低酸素は心臓重量/体重比を有意に増加させた(対照群:4.5±0.1 vs 低酸素群:5.1±0.1、p<0.05)
    • H2-throughoutは心臓重量を低酸素群と比較して有意に減少させた(低酸素群:116.2±3.1 vs H2-throughout群:105.2±2.4、p<0.05)
    • 血漿コレステロールリポタンパク質プロファイルへの影響:
    • 間欠的低酸素は低密度および超低密度コレステロールリポタンパク質(LDL-CとVLDL-C)の血漿レベルを有意に増加させた
    • H2-reoxyとH2-throughoutは、間欠的低酸素によるLDL-CとVLDL-Cの増加を有意に抑制した(分画G5-G10)
  • 組織学的所見:
    • 間欠的低酸素は心臓断面積、心筋細胞径、左心室心筋における血管周囲線維化率を有意に増加させた
    • 水素ガス吸入はこれらの変化を有意に抑制し、特にH2-throughoutが心臓断面積の減少とH2-reoxyやH2-hypoと比較して心筋細胞肥大の予防に最も効果的だった
    • 電子顕微鏡検査では、間欠的低酸素が左心室心筋における核の陥入や不規則なミトコンドリアの数を増加させたが、水素ガス吸入(特にH2-throughout)で左心室心筋の微細構造が良好に保たれていた
  • 左心室心筋におけるスーパーオキシド産生と4-HNE発現:
    • 間欠的低酸素はスーパーオキシド産生(DHEラベリングで検出)と4-HNE修飾タンパク質付加物を有意に増加させた
    • 水素ガス吸入はスーパーオキシド産生と4-HNE付加物を有意に抑制した
  • 遺伝子発現への影響:
    • 間欠的低酸素は左心室心筋におけるTNF-α、IL-6、BNP mRNAの発現を有意に増加させた
    • 水素ガス吸入は、投与タイミングに関わらず、左心室心筋におけるTNF-α、IL-6、BNP mRNAの発現を有意に減少させた
  • 本研究は、水素ガス吸入が間欠的低酸素による酸化ストレスを軽減し、左心室リモデリングを抑制することを示した。特に、再酸素化時または実験全期間を通しての水素ガス吸入は、脂質異常の改善と左心室心筋でのスーパーオキシド産生抑制に効果的だった。これらの結果は、SASに関連する間欠的低酸素によって誘導される左心室リモデリングの予防に水素ガス吸入が有効である可能性を示唆している。

Appendix(用語解説)

  • 睡眠時無呼吸症候群(SAS): 睡眠中に呼吸が一時的に停止したり、浅くなったりする病態。心血管系疾患のリスク因子となる。
  • 間欠的低酸素: 酸素濃度が周期的に低下と回復を繰り返す状態。SASの特徴的な病態生理。
  • 左心室リモデリング: 心臓の左心室が構造的に変化すること。心筋細胞の肥大や心室の拡張、線維化などが含まれ、心機能低下につながる可能性がある。
  • 活性酸素種(ROS): 酸素を含む化学的に反応性の高い分子。過剰に産生されると細胞や組織に酸化ストレスを与える。
  • ヒドロキシルラジカル: 最も毒性の高いラジカルの一つで、脂質、タンパク質、核酸と反応することが知られており、左心室リモデリングの発症に重要な役割を果たす可能性がある。
  • 4-HNE(4-ヒドロキシ-2-ノネナール): 脂質過酸化によって生じる反応性アルデヒドで、酸化ストレスのマーカーとして用いられる。
  • TNF-α(腫瘍壊死因子α)、IL-6(インターロイキン6): 炎症性サイトカインで、炎症反応の調節に関与する。
  • BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド): 心臓から分泌されるホルモンで、心臓に負荷がかかると増加する。心不全の診断マーカーとして用いられる。
  • DHE(ジヒドロエチジウム): スーパーオキシドを検出するための蛍光プローブ。酸化されるとエチジウムとなり赤色蛍光を発する。

論文情報

タイトル

Inhalation of hydrogen gas attenuates left ventricular remodeling induced by intermittent hypoxia in mice(水素ガス吸入が間欠的低酸素による左心室リモデリングを軽減する:マウス実験)

引用元

Hayashi, T., Yoshioka, T., Hasegawa, K., Miyamura, M., Mori, T., Ukimura, A., Matsumura, Y., & Ishizaka, N. (2011). Inhalation of hydrogen gas attenuates left ventricular remodeling induced by intermittent hypoxia in mice. American journal of physiology. Heart and circulatory physiology, 301(3), H1062–H1069. https://doi.org/10.1152/ajpheart.00150.2011

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公開日:2025/05/01
最終更新日:2025/05/01
目次
  1. 3分で読める詳細解説
    1. 結論
    2. 研究の背景と目的
    3. 研究方法
    4. 研究結果
    5. 論文情報
  2. 専門家のコメント

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公開日:2025/05/01
最終更新日:2025/05/01
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