一言まとめ
マウスのシュウ酸カルシウム誘発腎障害モデルにおいて、水素ガス吸入が腎障害マーカーを低下させ、アミノ酸代謝、脂肪酸代謝、リン脂質代謝に関連する19種の血清代謝物と7種の尿中代謝物を正常レベルに回復させることが示された。
3分で読める詳細解説
結論
水素吸入はシュウ酸カルシウム誘発腎障害において代謝プロファイルを正常化し腎保護効果を発揮する。
研究の背景と目的
シュウ酸カルシウム結晶による腎障害は腎結石の主要な原因となる病態であり、この過程では酸化ストレスが重要な役割を果たしている。先行研究で水素ガスの吸入がマウスのシュウ酸カルシウム沈着と腎酸化ストレスを軽減することが示されていたが、その代謝プロファイルへの影響は不明であった。本研究は、シュウ酸カルシウム誘発腎障害モデルにおける代謝調節ネットワークの変化と、高濃度水素ガス吸入の効果を代謝解析により検証することを目的としている。
研究方法
研究結果
Appendix(用語解説)
- シュウ酸カルシウム: 腎結石の主要な成分の一つ。食品中のシュウ酸が体内でカルシウムと結合して結晶化したもの。
- メタボロミクス: 生体内の代謝産物(低分子化合物)を網羅的に解析する手法。生体の代謝状態を総合的に評価できる。
- KIM-1(Kidney Injury Molecule-1): 腎臓の尿細管障害を示すバイオマーカー。腎障害時に発現が上昇する。
- UPLC/Q-TOF-MS: 超高速液体クロマトグラフィーと四重極飛行時間型質量分析計を組み合わせた分析手法。多数の代謝物を高感度・高分解能で検出できる。
- アシルカルニチン: 脂肪酸がミトコンドリア内へ輸送される際に形成される化合物。脂肪酸代謝の指標となる。
- PLS-DA: 部分最小二乗判別分析。多変量データから群間の差異を識別するための統計解析手法。
- セバシン酸: 脂肪酸のω酸化により生成される二塩基酸。ミトコンドリア機能障害の指標となる。
- グリオキシル酸: シュウ酸の前駆体であり、実験的にシュウ酸カルシウム腎結石モデルを作成するために用いられる。
論文情報
タイトル
UPLC/MS-Based Metabolomics Investigation of the Protective Effect of Hydrogen Gas Inhalation on Mice with Calcium Oxalate-Induced Renal Injury(UPLC/MSに基づくメタボロミクスによる、シュウ酸カルシウム誘発性腎障害マウスに対する水素吸入の保護効果の調査)
引用元
Lu, H., Ding, J., Liu, W., Peng, Z., Chen, W., Sun, X., & Guo, Z. (2018). UPLC/MS-Based Metabolomics Investigation of the Protective Effect of Hydrogen Gas Inhalation on Mice with Calcium Oxalate-Induced Renal Injury. Biological & pharmaceutical bulletin, 41(11), 1652–1658. https://doi.org/10.1248/bpb.b18-00307
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