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研究報告

水素吸入は高濃度酸素による肺障害を軽減する

更新日:2026/02/11
Hydrogen gas reduces hyperoxic lung injury via the Nrf2 pathway in vivo(水素吸入は生体内においてNrf2経路を介して高濃度酸素による肺障害を軽減する)
ラットとマウスの高酸素性肺障害モデルにおいて、2%水素ガス吸入が血液酸素化を改善し、炎症反応や肺組織の損傷を軽減した。この保護効果はNrf2転写因子の活性化と抗酸化酵素HO-1の誘導を介して得られることが明らかになった。
  1. 13分で読める詳細解説
    1. 結論
    2. 研究の背景と目的
    3. 研究方法
    4. 研究結果
    5. 論文情報
  2. 2専門家のコメント

3分で読める詳細解説

結論

水素ガス吸入はNrf2経路を活性化して高酸素による肺障害を効果的に軽減する。

研究の背景と目的

集中治療室などでは、生命維持のために高濃度の酸素投与が必要になることがある。しかし、高濃度酸素は肺の中で過剰な活性酸素種(ROS)を生み出し、それが原因で炎症や細胞死(アポトーシス)を引き起こし、深刻な肺障害(高濃度酸素肺障害)につながるリスクがある。近年、水素分子には活性酸素種の中でも特に有害なものを選択的に除去する働きがあることが報告されている。そこで本研究は、高濃度酸素にさらされたマウスに対して水素吸入を行い、肺障害が軽減されるかどうか、またそのメカニズムとして、細胞を酸化ストレスから保護する重要な役割を持つNrf2経路が関与しているかどうかを明らかにすることを目的とした。

研究方法

  • 対象:オスのルイス(RT1l)ラット(8-10週齢)とC57BL/6Jマウス(7-9週齢)、Nrf2欠損(Nrf2-/-)マウス(7-9週齢)
  • 介入方法:
    • 流量2 L/分での連続的なガス曝露(60時間)
    • 4つの実験群:
      • 常酸素(空気)+ 2%窒素
      • 常酸素(空気)+ 2%水素
      • 高酸素(98%酸素)+ 2%窒素
      • 高酸素(98%酸素)+ 2%水素
  • 評価方法:
    • 生存期間
    • 肺機能:血液ガス分析
    • 胸水量、肺の湿重量/乾燥重量比(W/D比)
    • 肺組織の病理学的分析
    • 気管支肺胞洗浄液(BALF)中の細胞数とタンパク質濃度
    • 炎症性サイトカイン(IL-1β、IL-6、TNF-α、ICAM-1)のmRNA発現
    • アポトーシス関連タンパク質(Bcl-2、Bax)の発現
    • HO-1(ヘムオキシゲナーゼ-1)発現と活性
    • Nrf2依存性遺伝子(Nqo1、GSTA2、UGT1A6、Prdx1)の発現
    • マロンジアルデヒド(MDA)濃度と8-OHdG免疫組織化学染色

研究結果

  • 生存期間:
    • 高酸素+窒素群は 64 h 以内に全例死亡、対して高酸素+水素群は中央値 72 h(範囲 72–120 h)まで延長。
  • 肺機能改善:
    • 高酸素+水素群は高酸素+窒素群と比較して血液酸素化が有意に改善(具体的なPO2値の記載なし)
    • 体重減少が水素投与により有意に軽減
  • 肺浮腫と透過性の軽減:
    • 高酸素曝露による胸水量と肺のW/D比の増加が水素により有意に減少
    • BALFの細胞数とタンパク質濃度が水素により有意に低下
  • 肺の炎症反応軽減:
    • 病理組織学的評価で、水素投与群では肺の浮腫と炎症細胞浸潤が減少
    • 肺障害スコアが有意に低下
    • 炎症性サイトカイン(IL-1β、IL-6、TNF-α、ICAM-1)のmRNA発現が有意に抑制
  • アポトーシス抑制:
    • Caspase-3陽性細胞(アポトーシス細胞)の減少
    • 抗アポトーシスタンパク質Bcl-2の発現増加
    • プロアポトーシスタンパク質Baxの発現減少
  • HO-1発現誘導:
    • 高酸素+水素群でHO-1タンパク質とmRNAの発現が有意に増加
    • 肺上皮細胞でのHO-1発現増加
    • HO-1酵素活性の増加
  • Nrf2経路の活性化:
    • 水素投与によりNrf2依存性遺伝子(Nqo1、GSTA2、UGT1A6、Prdx1)の発現が有意に増加
  • Nrf2-/-マウスでの検討:
    • Nrf2-/-マウスでは、水素による高酸素性肺障害の軽減効果が消失
    • 水素によるHO-1誘導がNrf2-/-マウスでは見られなかった
    • ただし、水素によるMDAレベルと8-OHdG陽性細胞の減少(酸化損傷の軽減)はNrf2-/-マウスでも観察された
  • これらの結果から、水素は2つのメカニズムで高酸素性肺障害を軽減することが示唆された:
    • ROSの直接的な消去による酸化的損傷の軽減
    • Nrf2依存性の保護シグナル経路(特にHO-1)の活性化
  • 研究の限界として、水素がNrf2経路を活性化する詳細なメカニズムに関してはさらなる研究が必要である点が挙げられている。

Appendix(用語解説)

  • 高酸素性肺障害:高濃度酸素への長期間曝露によって引き起こされる肺への障害で、肺の炎症、浮腫、細胞死などを特徴とする。
  • Nrf2(Nuclear factor erythroid 2-related factor 2):酸化ストレスに対する細胞の防御機構において中心的な役割を果たす転写因子。抗酸化酵素や解毒酵素の発現を制御する。
  • HO-1(ヘムオキシゲナーゼ-1):ヘムを分解する酵素で、酸化ストレスによって誘導される。抗炎症作用や抗酸化作用を持ち、細胞や組織を保護する。
  • 活性酸素種(ROS):酸素から派生した化学的に反応性の高い分子で、細胞構造や遺伝子に損傷を与える可能性がある。
  • アポトーシス:プログラムされた細胞死の一種で、不要になった細胞や損傷を受けた細胞を排除するために体が行う制御された過程。
  • 気管支肺胞洗浄液(BALF):気管支や肺胞を生理食塩水で洗浄して得られる液体で、肺の炎症や損傷の指標となる細胞やタンパク質を含む。
  • サイトカイン:免疫細胞から分泌されるタンパク質で、炎症反応や免疫応答を調節する。
  • W/D比(湿重量/乾燥重量比):肺組織の浮腫の指標で、値が高いほど水分含有量が多く、浮腫が強いことを示す。

論文情報

タイトル

Hydrogen gas reduces hyperoxic lung injury via the Nrf2 pathway in vivo(水素吸入は生体内においてNrf2経路を介して高濃度酸素による肺障害を軽減する)

引用元

Kawamura, T., Wakabayashi, N., Shigemura, N., Huang, C. S., Masutani, K., Tanaka, Y., Noda, K., Peng, X., Takahashi, T., Billiar, T. R., Okumura, M., Toyoda, Y., Kensler, T. W., & Nakao, A. (2013). Hydrogen gas reduces hyperoxic lung injury via the Nrf2 pathway in vivo. American journal of physiology. Lung cellular and molecular physiology, 304(10), L646–L656. https://doi.org/10.1152/ajplung.00164.2012

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公開日:2025/04/26
最終更新日:2026/02/11
目次
  1. 3分で読める詳細解説
    1. 結論
    2. 研究の背景と目的
    3. 研究方法
    4. 研究結果
    5. 論文情報
  2. 専門家のコメント

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公開日:2025/04/26
最終更新日:2026/02/11
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