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研究報告

水素吸入は高血糖による脳梗塞後の出血性変換を軽減

Hydrogen gas reduced acute hyperglycemia-enhanced hemorrhagic transformation in a focal ischemia rat model(水素吸入は、高血糖による脳梗塞後の出血性変化を軽減する(ラット局所脳虚血モデル))
高血糖状態にした脳梗塞モデルラットに2.9%の水素を吸入させたところ、吸入しなかったラットと比較して、神経症状、脳梗塞サイズ、脳浮腫、出血量が有意に減少し、脳保護効果が示された。
  1. 13分で読める詳細解説
    1. 結論
    2. 研究の背景と目的
    3. 研究方法
    4. 研究結果
    5. 論文情報
  2. 2専門家のコメント

3分で読める詳細解説

結論

水素吸入は脳梗塞後の高血糖による出血性変換を抑制し、神経保護効果をもたらす。

研究の背景と目的

高血糖は脳梗塞後の死亡率と罹患率の主要なリスク因子である。実験的研究によれば、虚血前の高血糖は再灌流による脳障害を悪化させ、出血性変換に大きな影響を与える可能性がある。この出血性変換は、ヒドロキシルラジカルやスーパーオキシドアニオンなどの活性酸素種の産生増加によって起こると考えられている。
これまでの研究で、水素ガスが心臓や肝臓の虚血・再灌流障害において活性酸素を中和し酸化ストレスを軽減することが示されている。水素ガスは特にヒドロキシルラジカルとペルオキシナイトライトを選択的に除去し、抗酸化作用を発揮する。
本研究では、ラットの局所脳虚血モデルにおいて高血糖によって引き起こされる出血性変換に対する水素吸入の効果を検証した。

研究方法

  • 対象: Sprague-Dawley系ラット72匹
  • 群分け:
    • シャム群: 脳梗塞を起こさない偽手術のみを行ったグループ。
    • シャム+水素吸入群: 偽手術を行い、水素を吸入させたグループ。
    • MCAO群: 中大脳動脈(Middle Cerebral Artery)を一時的に閉塞させて脳梗塞を発症させたグループ。
    • MCAO+水素吸入群: 脳梗塞を発症させ、水素を吸入させたグループ。 さらに、MCAO群とMCAO+水素吸入群の一部には、ストレプトゾトシンという薬剤を投与して高血糖状態(血糖値 >16.7 mmol/L)を人為的に作り出した。
  • 介入方法:
    • 高血糖誘導: 50%デキストロース(6ml/kg)腹腔内投与
    • 虚血処置: MCAO(中大脳動脈閉塞)を90分間実施
    • 水素吸入: 再灌流直後から2時間、2.9%水素ガス(21%酸素、76.1%窒素との混合)を吸入
  • 評価項目:
    • デキストロース投与後0時間、0.5時間、4時間、6時間での血糖値
    • 虚血後24時間での梗塞体積、出血量、神経学的スコア
    • 酸化ストレスマーカー(8OHG、HNE、ニトロチロシン)
    • MMP-2/MMP-9活性
    • ZO-1、オクルディン、コラーゲンIV、AQP4の発現

研究結果

  • 梗塞体積・出血量・神経機能:
    • 水素吸入によって梗塞体積が有意に減少(具体的な数値の記載なし)
    • 出血量が8.89±1.83 ulから0.18±0.41 ulへと有意に減少(p<0.001)
    • 神経学的スコアが有意に改善(p<0.05)
  • 酸化ストレスマーカー:
    • 8OHG(DNA酸化マーカー)の発現が減少
    • HNE(脂質過酸化マーカー)の発現が減少
    • ニトロチロシン(タンパク質ニトロ化マーカー)の発現が有意に減少(MCAO群: 4.62±1.04 μg/ml、MCAO+H₂群: 2.24±1.11 μg/ml、p<0.05)
  • MMP活性:
    • MMP-9活性が有意に減少(p<0.05)
    • MMP-2活性には有意な変化なし
  • 血糖値:
    • デキストロース投与4時間後(水素吸入約1時間後)に血糖値が500±32.51 mg/dlから366±68.22 mg/dlへと有意に低下
  • 細胞外マトリックス分子:
    • ZO-1、オクルディン、コラーゲンIV、AQP4の発現に有意な変化なし
  • 安全性:
    • 重篤な有害事象は報告されていない
  • 考察:
  • 水素ガス吸入が脳梗塞体積、出血性変換の減少、および神経機能の改善をもたらすことが示された。
  • 特筆すべきは、水素吸入1時間では出血量のみが減少し、2時間では梗塞体積の減少と神経機能の改善も認められたことで、水素が梗塞とは独立して出血性変換に直接影響する可能性が示唆された。
  • 水素の保護効果のメカニズムとしては、酸化ストレスの軽減(8OHG、HNE、ニトロチロシンの減少)とMMP-9活性の抑制が関与していると考えられる。
  • また、予想外の発見として、水素吸入は一時的に血糖値を低下させた。これらの効果のメカニズムについてはさらなる研究が必要である。

Appendix(用語解説)

  • 中大脳動脈閉塞(MCAO): 脳梗塞を実験的に引き起こすモデル。中大脳動脈を閉塞して脳の一部に血流を遮断し、虚血状態を作り出す。
  • 出血性変換: 脳梗塞後に梗塞部位で出血が起こる現象。血管壁の損傷により血液が漏れ出すことで生じる。
  • 8OHG: 8-ヒドロキシグアノシン。DNAの酸化的損傷を示すマーカー。
  • HNE: 4-ヒドロキシノネナール。脂質過酸化の結果生じる物質で、酸化ストレスのマーカー。
  • ニトロチロシン: タンパク質のニトロ化を示すマーカーで、活性窒素種による酸化ストレスを反映する。
  • MMP-2/MMP-9: マトリックスメタロプロテアーゼ-2/9。細胞外マトリックスを分解する酵素で、血液脳関門の破壊に関与する。
  • ZO-1/オクルディン: タイトジャンクション(細胞間の密着結合)を構成するタンパク質で、血液脳関門の完全性に重要。
  • AQP4: アクアポリン4。水分子を選択的に透過させる膜タンパク質で、脳浮腫の形成に関与する。

論文情報

タイトル

Hydrogen gas reduced acute hyperglycemia-enhanced hemorrhagic transformation in a focal ischemia rat model(水素吸入は、高血糖による脳梗塞後の出血性変化を軽減する(ラット局所脳虚血モデル))

引用元

Chen, C. H., Manaenko, A., Zhan, Y., Liu, W. W., Ostrowki, R. P., Tang, J., & Zhang, J. H. (2010). Hydrogen gas reduced acute hyperglycemia-enhanced hemorrhagic transformation in a focal ischemia rat model. Neuroscience, 169(1), 402–414. https://doi.org/10.1016/j.neuroscience.2010.04.043

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公開日:2025/04/25
最終更新日:2025/04/25
目次
  1. 3分で読める詳細解説
    1. 結論
    2. 研究の背景と目的
    3. 研究方法
    4. 研究結果
    5. 論文情報
  2. 専門家のコメント

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公開日:2025/04/25
最終更新日:2025/04/25
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