水素吸入による慢性疲労症候群の治療成功例

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結論

水素吸入は筋痛性脳脊髄炎／慢性疲労症候群（ME/CFS）症状を緩和し、患者のQOLを向上させる可能性がある新たな治療法である。

研究の背景と目的

筋痛性脳脊髄炎／慢性疲労症候群（ME/CFS）は、原因不明の疲労や神経精神症状（頭痛、集中力低下、不眠など）が6ヶ月以上続く疾患である。現在の治療法では十分な改善が見られない場合が多く、新しい治療方法が求められている。本研究では、水素が強力な抗酸化作用を持ち、細胞を保護することから、水素吸入によるME/CFS患者の症状改善効果を検証した。

研究方法

• 対象者：
  • 従来の治療に反応しなかったME/CFS患者4名（男性1名58歳、女性2名43歳・18歳、男性1名18歳）
  • 選定基準：ME/CFS診断基準を満たす患者
• 介入方法：
  • 水素濃度：6～7％の水素ガス吸入（流量2 L/分）
  • 吸入時間：1日あたり3～6時間
  • 期間：症例1は20週間、2〜4は8〜9週間
• 対照群の設定：なし
• 評価方法：
  • 症例1：カナダコンセンサス基準(CCC)に基づく21項目の症状スコア(0：症状なし、1：軽度、2：中等度、3：重度)を2週間ごとに記録（合計最大は63点）
  • 症例2～4：3週間後と8～9週間後に、医師による診察と一般症状の記録

研究結果

• 症例1：
  • 治療前の重症度スコア29点が、4週間後に23点、6週間後に15点に減少した
  • COVID-19ワクチン接種後(8週目と11週目)に一時的に症状が悪化したが、水素ガス吸入を継続することで接種前のレベルに回復
  • 20週間後には重症度スコアが13点まで低下
  • 特に、運動後の疲労、運動からの回復時間、息切れ、頭痛、筋肉痛、集中力低下などの症状が大幅に改善
  • 「ブレインフォグ」(思考の霧)が改善し、日常生活動作が可能になった
• 症例2(43歳女性)：
  • 治療前は立位や座位保持が困難で、ほとんどの時間をベッドで過ごし、屋内移動は車椅子を使用
  • 水素ガス吸入3週間後から、睡眠障害や毎日の頭痛・片頭痛が軽減
  • 9週間後も同様の改善効果が継続
• 症例3(18歳女性)：
  • 治療前はほとんどの時間をベッドで過ごしていた
  • 水素ガス吸入3週間後から、疲労感の減少、腸運動の改善、意欲の増加を実感
  • 8週間後には日中の睡眠時間が減少し、身体活動の時間が増加
• 症例4(18歳男性)：
  • 水素ガス吸入3週間後から、頭痛と全身の痛みが軽減
  • 9週間後も症状の改善効果が継続し、鎮痛剤の使用量が減少
  • 「ブレインフォグ」も改善
• 考察と限界
  • これらの症例は、水素ガス吸入がME/CFSの症状を軽減することを示した最初の報告である
  • 小規模な症例報告に留まるため、ME/CFSに対する水素ガスの有効性と作用機序を評価するためには、さらに大規模な臨床研究が必要

Appendix（用語解説）

• 筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)：6か月以上続く説明のつかない疲労と倦怠感に加え、神経精神症状を特徴とする疾患
• カナダコンセンサス基準(CCC)：ME/CFSの診断と症状評価のために開発された基準
• ブレインフォグ：思考の明晰さが失われた状態を表す言葉で、集中力低下や認知機能障害を伴う

論文情報

タイトル

Successful treatment of myalgic encephalomyelitis/chronic fatigue syndrome using hydrogen gas: four case reports（水素吸入による筋痛性脳脊髄炎／慢性疲労症候群（ME/CFS）の治療成功例：4つの症例報告）

引用元

Hirano, S., Ichikawa, Y., Sato, B., Takefuji, Y., & Satoh, F. (2024). Successful treatment of myalgic encephalomyelitis/chronic fatigue syndrome using hydrogen gas: Four case reports. Medical Gas Research, 14(2), 84-86. https://doi.org/10.4103/2045-9912.385441

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