研究論文
Hydrogen gas inhalation protects against cutaneous ischaemia/reperfusion injury in a mouse model of pressure ulcer(水素吸入がマウス圧迫創傷モデルにおける皮膚の虚血再灌流障害を保護する)

水素吸入が床ずれによる皮膚の虚血再灌流障害を保護する

一言まとめ

マウスの皮膚に複数回の虚血再灌流障害を与えて圧迫潰瘍を誘発したモデルにおいて、水素吸入を行った群では、傷の面積が有意に減少し、活性酸素種や炎症反応が抑制された。

3分で読める詳細解説

結論

水素吸入によって抗酸化作用と抗炎症作用が高まり、マウス圧迫潰瘍の形成を抑えて傷の治癒を促進する。

研究の背景と目的

圧迫潰瘍(いわゆる床ずれ)は、寝たきりの高齢者や重篤な疾患をもつ患者に多くみられる慢性的な皮膚障害で、骨が突出する部位に血流障害が繰り返し起こることで悪化する。特に、長時間の圧迫後に体位を変えると、一気に血液が流れ込む「虚血再灌流(I/R)」が生じ、大量の活性酸素種が発生して組織ダメージを引き起こす。
水素には、脳や心臓、肝臓などのI/R障害に対して、抗酸化・抗炎症など多角的な保護効果が報告されている。本研究では、水素吸入が皮膚I/Rによる圧迫潰瘍の形成を防ぐかどうか、その仕組みも含めて検証することを目的とした。

研究方法

  • 対象者(動物モデル)
    • 8~12週齢の雌性C57BL/6マウスを使用。
    • 背部の皮膚を磁石で12時間ずつ挟み込む操作を3回繰り返し(間に12時間の休止をはさむ)、皮膚の虚血再灌流障害を誘導。
    • その結果、背中に2つの潰瘍が形成されるマウス圧迫潰瘍モデルを作製。
  • 介入方法
    • 2%または75%の水素を含むガスを、1日あたり6時間、1週間連続で吸入(実験開始前から継続して吸入を行う)。
      以降も潰瘍の経過を観察しながら吸入を継続。
      (水素の流量やその他の細かい条件は論文内に具体的な数値記載なし)
  • 対照群の設定
    • 水素を吸入しない対照群(通常の空気吸入)を設定して比較。
  • 評価方法
    • 傷の面積(写真撮影→画像解析ソフトで計測)
    • 組織学的評価(HE染色、TUNEL染色など)
    • 抗酸化酵素活性(SOD、GPx、CATなど)、炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-1β、IL-6、IL-8)などの発現量測定
    • 血管内皮細胞(HUVEC)を用いた培養実験で、水素がH₂O₂による傷害をどの程度抑えられるかを確認

研究結果

  • 潰瘍形成の抑制
    • 水素吸入群では、対照群と比較して潰瘍面積が顕著に減少(p値の具体記載なし)。特に75%水素群が最も早く潰瘍縮小に至った。
  • 酸化的ダメージの軽減
    • 水素吸入群は、虚血再灌流後の皮膚組織で蓄積していた活性酸素種(ROS)が有意に減少(p値の具体記載なし)。
    • 皮膚組織中のSOD、CAT、GPxなど主要な抗酸化酵素の活性が上昇(p値の具体記載なし)。
    • 酸化ストレスによるDNAダメージを示す8-oxo-dG(8-オキソデオキシグアノシン)やアポトーシス細胞数が減少。
  • 炎症反応の抑制
    • TNF-α、IL-1β、IL-6、IL-8などの炎症性サイトカインが減少し、一方で創傷治癒を促すIL-22が増加。
    • 血管内皮細胞レベルでも、水素によりMCP-1やE-セレクチン、P-セレクチン、ICAM-1といったケモカイン・接着分子の発現が抑えられ、炎症細胞の過剰な集積が軽減。
  • 創傷治癒因子の増加
    • 水素吸入群は、TGF-βやVEGF、IGF-1といった創傷治癒を促進する因子が増加し、過剰な組織分解をもたらすMMP9が減少。
    • 皮膚組織のコラーゲン合成が促進され、傷の治癒が加速(p値の具体記載なし)。
  • 研究の限界
    • 皮膚組織中の水素濃度を直接測定していない。
    • 抗酸化作用や炎症調節作用を具体的にどの経路を介して行っているか、細部は未解明。

Appendix(用語解説)

  • 圧迫潰瘍(床ずれ):寝たきりの状態などで皮膚に長時間圧力がかかると、局所の血流が途絶して組織が壊死する病態。体位変換時に虚血再灌流が起こることが病態進行の一因。
  • 虚血再灌流(I/R):一時的に血流が遮断された組織に再び血液が流れ込むことで、活性酸素種(ROS)が急激に増加し、細胞障害や炎症を引き起こす現象。
  • 活性酸素種(ROS):酸素分子が変化してできた非常に反応性の高い分子(フリーラジカルなど)。細胞膜やDNAを酸化的に損傷する。
  • SOD・GPx・CAT:いずれも体内の主要な抗酸化酵素。SODはスーパーオキシドラジカルを分解し、GPxやCATは過酸化水素を水や酸素に分解する。
  • 炎症性サイトカイン:免疫や炎症反応を引き起こすシグナル伝達物質。TNF-α、IL-1βなどが代表的。
  • Nrf2:細胞が酸化ストレスにさらされたときに核内に移行し、抗酸化遺伝子群の発現を誘導する転写因子。ARE(抗酸化応答エレメント)に結合してHO-1やNQO1の産生を増やす。
  • MMP9:マトリックスメタロプロテアーゼの一種で、過剰になるとコラーゲンや細胞外マトリックスを分解して創傷治癒を遅らせる。
  • TGF-β・VEGF・IGF-1:組織修復に重要な成長因子。TGF-βは細胞増殖やコラーゲン合成、VEGFは血管新生、IGF-1は細胞増殖やタンパク合成などを促進する。

論文情報

タイトル

Hydrogen gas inhalation protects against cutaneous ischaemia/reperfusion injury in a mouse model of pressure ulcer(水素吸入がマウス圧迫創傷モデルにおける皮膚の虚血再灌流障害を保護する)

引用元

Fang, W., Wang, G., Tang, L., Su, H., Chen, H., Liao, W., & Xu, J. (2018). Hydrogen gas inhalation protects against cutaneous ischaemia/reperfusion injury in a mouse model of pressure ulcer. Journal of cellular and molecular medicine22(9), 4243–4252. https://doi.org/10.1111/jcmm.13704

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