一言まとめ
2007年から2015年6月までに公表された321本の研究論文を整理した。水素水の摂取や水素吸入、水素を含む生理食塩液など多様な投与法で、主に抗酸化・抗炎症を中心とした多面的な有益作用が報告されている。
3分で読める詳細解説
結論
水素分子は、多様な疾患モデルやヒトにおいて酸化ストレス、炎症、アポトーシスを抑制する可能性がある。
研究の背景と目的
2007年に水素分子がラット脳梗塞モデルで顕著な治療効果を示したことが報告されて以来、その治療可能性が様々な病態で注目されてきた。これまでに321本の研究論文が発表され、水素分子の治療効果や作用メカニズムについて調査が進んでいる。本論文の目的は、これらの研究結果を総括し、水素分子の有効性およびその基盤となる分子メカニズムを明らかにすることである。
研究方法
研究結果
Appendix(用語解説)
- 抗酸化ストレス(酸化ストレス):活性酸素種(フリーラジカル)によって細胞や組織が傷害を受ける状態のこと。抗酸化とは、これらの活性酸素を減らす・除去するはたらきを指す。
- NF-κB(エヌエフカッパビー):細胞内の主要な転写因子の一種。炎症や免疫反応、アポトーシスなど多くの遺伝子発現を調節する。
- Nrf2(ナーフツー):酸化ストレスに対抗する遺伝子群を活性化する転写因子。Nrf2が活性化されることで細胞の防御反応が高まる。
- アポトーシス:細胞がプログラムされた仕組みによって自発的に死ぬ現象。炎症を起こしにくい細胞死様式であり、異常があるとさまざまな疾患に関与する。
- シグナル伝達経路:細胞が外部や内部の刺激を受け取り、最終的に遺伝子発現や機能変化を引き起こすまでの分子カスケード。NF-κBやNrf2などは典型的な分子スイッチの例。
論文情報
タイトル
Beneficial biological effects and the underlying mechanisms of molecular hydrogen – comprehensive review of 321 original articles(分子状水素の有益な生物学的効果とその基盤となるメカニズム – 321本のオリジナル論文の包括的レビュー)
引用元
Ichihara, M., Sobue, S., Ito, M., Ito, M., Hirayama, M., & Ohno, K. (2015). Beneficial biological effects and the underlying mechanisms of molecular hydrogen – comprehensive review of 321 original articles. Medical gas research, 5, 12. https://doi.org/10.1186/s13618-015-0035-1
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