研究論文
Beneficial biological effects and the underlying mechanisms of molecular hydrogen - comprehensive review of 321 original articles(分子状水素の有益な生物学的効果とその基盤となるメカニズム - 321本のオリジナル論文の包括的レビュー)

水素分子に関する321本の論文レビュー

一言まとめ

水素分子は、酸化ストレスや炎症などの病態に幅広い治療効果を示し、そのメカニズムには抗酸化作用やシグナル伝達の調節が関与している可能性がある。

3分で読める詳細解説

結論

水素分子は、多様な疾患モデルやヒトにおいて酸化ストレス、炎症、アポトーシスを抑制する可能性がある。

研究の背景と目的

2007年に水素分子がラット脳梗塞モデルで顕著な治療効果を示したことが報告されて以来、その治療可能性が様々な病態で注目されてきた。これまでに321本の研究論文が発表され、水素分子の治療効果や作用メカニズムについて調査が進んでいる。本論文の目的は、これらの研究結果を総括し、水素分子の有効性およびその基盤となる分子メカニズムを明らかにすることである。

研究方法

  • 対象疾患: 31の疾患カテゴリー、166の疾患モデルやヒト病態が含まれる。
    • 酸化ストレス関連疾患、炎症性疾患が主な対象。
  • 水素の供給方法:
    • 水素ガス (濃度1~4%)
    • 水素水 (飲用)
    • 水素化生理食塩水 (注射)
  • データ収集: 2007年から2015年までの321本のオリジナル論文をレビュー。
    • 3/4がラットやマウスモデル、臨床研究も増加中。

研究結果

  • 治療効果:
    • 酸化ストレスの抑制:
      • 水素ガス吸入により、ラットの脳梗塞モデルで梗塞サイズが有意に減少 (p<0.05)【Table 1】。
      • 水素水は脂質過酸化を抑制し、抗酸化酵素の活性を向上。
    • 炎症の軽減:
      • LPS誘導性肺炎モデルで、炎症性サイトカイン (IL-6, TNF-α) の分泌が抑制。
    • アポトーシスの抑制:
      • NF-κB経路の抑制や、抗酸化酵素の活性化 (Nrf2/HO-1経路) を通じて細胞死を軽減。
  • 投与方法の違い:
    • 水素水と水素ガスで異なるシグナル伝達経路が活性化される。
    • 臓器や疾患モデルに応じた最適な供給方法の探索が必要。
  • 研究の限界点:
    • 動物モデルでの効果が顕著である一方、ヒト臨床試験では効果の大小が見られる。
    • 適切な水素濃度や投与頻度の最適化が課題。

Appendix(用語解説)

  • 酸化ストレス: 活性酸素種 (ROS) が細胞や組織に与えるダメージ。
  • NF-κB経路: 炎症や免疫応答に関与するシグナル伝達経路。
  • Nrf2/HO-1経路: 抗酸化応答を制御する転写因子Nrf2とその下流分子HO-1。

論文情報

タイトル

Beneficial biological effects and the underlying mechanisms of molecular hydrogen – comprehensive review of 321 original articles(分子状水素の有益な生物学的効果とその基盤となるメカニズム – 321本のオリジナル論文の包括的レビュー)

引用元

Ichihara, M., Sobue, S., Ito, M., Ito, M., Hirayama, M., & Ohno, K. (2015). Beneficial biological effects and the underlying mechanisms of molecular hydrogen – comprehensive review of 321 original articles. Medical gas research5, 12. https://doi.org/10.1186/s13618-015-0035-1

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