一言まとめ
アレルギー性鼻炎患者30名に66.6%濃度の水素を1日3時間、4週間吸入させたところ、鼻炎症状、鼻腔内フローラの変化および血液中のアレルギー関連指標が改善した。
3分で読める詳細解説
結論
水素吸入は、鼻腔内フローラのバランスを整えることで、アレルギー性鼻炎患者の症状を改善する可能性がある。
研究の背景と目的
アレルギー性鼻炎は世界中で有病率が高く、ステロイド点鼻薬や抗ヒスタミン薬などの薬物療法が主に用いられるが、副作用や薬剤耐性の問題がある。一方、水素分子は抗炎症作用や抗酸化作用を持つことが知られている。そこで本研究は、アレルギー性鼻炎患者に対する新たな非薬物療法として水素吸入に着目。その効果を鼻症状や血液検査値、鼻腔内細菌叢の変化から多角的に検証することを目的とした。
研究方法
研究結果
Appendix(用語解説)
- VAS (Visual Analog Scale): 視覚的アナログ尺度。症状の程度を視覚的に評価するための指標。
- TNSS (Total Nasal Symptom Score): 鼻症状の重症度を評価するスコア。くしゃみ、鼻汁、鼻閉、鼻掻痒感の4症状の程度を0〜3点で採点し合計する。
- RQLQ (Rhinoconjunctivitis Quality of Life Questionnaire): アレルギー性鼻結膜炎の症状が日常生活に及ぼす影響を評価する質問票。
- 16S rRNA遺伝子シーケンス: 細菌の種を同定するための遺伝子配列解析法。16S rRNAをコードする遺伝子領域の塩基配列を調べることで、細菌叢の組成を網羅的に解析できる。
- IgE(免疫グロブリンE):I型アレルギー反応を引き起こす抗体の一種。血中IgE濃度の上昇はアレルギー反応の活性化を示唆する。
- 好酸球(EOS):白血球の一種で、アレルギー反応や寄生虫感染時に増加する。アレルギー性炎症の程度を反映する重要な指標。
- 16S rRNA遺伝子解析:細菌のリボソームRNAの遺伝子配列をもとに、菌種を同定・分類する手法。鼻腔内の細菌叢バランスを調べる際によく用いられる。
論文情報
タイトル
Hydrogen inhalation: A novel approach to alleviating allergic rhinitis symptoms by modulating nasal flora(水素吸入:鼻腔内細菌叢を調整することによるアレルギー性鼻炎症状を軽減する新しいアプローチ)
引用元
Wang, N., Ma, Q., Zhai, J., Che, Y., Liu, J., Tang, T., Sun, Y., Wang, J., & Yang, W. (2024). Hydrogen inhalation: A novel approach to alleviating allergic rhinitis symptoms by modulating nasal flora. The World Allergy Organization journal, 17(10), 100970. https://doi.org/10.1016/j.waojou.2024.100970
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