感染症
【医師監修】肺炎球菌感染症に水素吸入は有効?最新研究からその可能性を探る

【医師監修】肺炎球菌感染症に水素吸入は有効?最新研究からその可能性を探る

《この記事の執筆者》

肺炎球菌感染症は、高齢者や持病を抱える方にとって命に関わるリスクを伴う深刻な病気です。

現在、ワクチンや抗菌薬が主な治療手段ですが、それだけでは防ぎきれないケースも多くあります。

そんな中、「抗酸化作用」を持つ水素吸入が、予防や治療のサポートとして注目されています。

本記事では、肺炎球菌感染症の基本情報から、水素吸入が持つ可能性やその限界について最新研究に基づき詳しく解説します。

すいかつねっとのエビデンス評価
2.0

水素吸入が肺炎球菌感染症の予防や治療に有効であるという直接的なエビデンスは現在のところない。ただし、抗酸化物質による肺粘膜の保護や炎症抑制の研究が示唆する理論的可能性に基づき、今後の研究展開に期待が持てる段階。

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肺炎球菌感染症について

肺炎球菌感染症について

肺炎球菌感染症は主に免疫機能が低い乳幼児や高齢者、持病がある人が発症する感染症です。肺炎球菌自体は私たちののどや鼻に存在していますが、免疫機能が低下していると様々な症状を引き起こします。

重症化すると肺炎や髄膜炎を併発して命に関わるケースも少なくありませんが、現在日本では乳幼児期と65歳以上の高齢者(持病がある人は60歳以上)でワクチンが定期接種となっています。

まずは肺炎球菌感染症の原因、症状、治療方法について詳しく見てみましょう。

肺炎球菌感染症の原因

肺炎球菌感染症は、肺炎球菌という細菌に感染することによって引き起こされる病気です。肺炎球菌は感染者や保菌者のしぶきに含まれる菌を周囲の人が吸い込むことで感染する「飛沫感染」によって感染が広がります。

一方で、肺炎球菌は感染したからといって必ずしも症状が現れるわけではありません。のどや鼻に肺炎球菌が存在していても正常な免疫機能が備わっていれば、目立った症状なく感染に気付かないケースも多いとされています。

そのため、肺炎球菌感染症は主に免疫機能が低い乳幼児、高齢者、持病がある人に問題となる感染症と考えられています。

肺炎球菌感染症の症状

肺炎球菌感染症を発症すると次のような症状が現れます。

肺炎球菌感染症の症状
  • 高熱
  • 息切れ
  • 胸の痛み

また、肺炎球菌感染症は肺炎、髄膜炎、中耳炎などの合併症を併発しやすい病気です。

特に免疫機能が低い人は重症化するリスクが高く、命に関わるケースも少なくありません。

肺炎球菌感染症の治療方法

肺炎球菌感染症の治療には肺炎球菌を退治する薬の投与が必要です。そのほか、症状に合わせて酸素吸入や脱水症を改善するための点滴などを行います。

重症な場合には入院が必要となり、慎重な経過観察が行われます。早期段階で適切な治療をすれば重症化するリスクは低くなるため、体調の変化を感じたら軽く考えずに医療機関を受診することが大切です。

水素吸入が肺炎球菌感染症の予防や治療に役立つ可能性

肺炎球菌感染症は乳幼児や高齢者を中心に重症化して命に関わるケースもある感染症です。現在ではワクチンが定期接種となっていますが、発症や重症化を完全に予防はできません。そのため、今もなお新たな予防や治療方法を見出すための研究が重ねられています。

肺炎球菌感染症への水素吸入の効果を直接的に検証した研究結果は、現在のところ報告されていません。しかし、水素吸入が予防や治療をサポートする可能性を示唆する研究結果は報告されています。

具体的な内容を詳しく見てみましょう。

抗酸化物質が肺炎球菌感染症の発症予防に役立つ?

2021年、アメリカの研究チームは抗酸化作用を持つビタミンEの投与によって肺炎球菌感染による炎症反応を抑制する可能性を示唆する研究結果を報告しました1)。

この研究は高齢のマウスを用いた動物実験です。肺炎球菌を感染させた後にビタミンEを補給したところ、体内の炎症性物質が減少し、炎症反応が抑制できたことが明らかになりました。

また、研究者たちはビタミンEの投与によって肺粘膜の酸化ストレスを軽減し、免疫機能を高める可能性にも言及しています。

水素吸入が肺炎球菌感染症の発症を予防する可能性

今回の研究から、抗酸化物質は肺粘膜へのダメージを抑えて肺炎球菌に対する免疫機能を高めること、炎症反応を抑える可能性が示されました。

まだ動物実験の段階であるため確実な効果があると断言はできません。しかし、この説が正しいとすれば同じく抗酸化作用がある水素吸入にも同様の効果が期待できる可能性があるでしょう。

今後の研究の進展に期待します。

抗酸化物質が肺炎球菌感染症の治療に役立つ?

2024年、エジプトの研究チームは抗酸化物質が市中肺炎※の治療を補助する可能性を示唆する総説論文を発表しました2)。

※病院外で発生する肺炎のことで、肺炎球菌が最大の原因となる

総説論文とは、これまで行われてきた様々な研究結果をまとめて新たな結論を導き出す論文のことです。この総説論文では、抗酸化物質が活性酸素を除去することで炎症反応を鎮めて市中肺炎の治療に役立つ可能性を示しています。

水素吸入が肺炎球菌感染症の治療に役立つ可能性

今回の総説論文では、抗酸化物質が肺炎球菌感染症をはじめとする市中肺炎の炎症を鎮めることで従来の抗菌薬による治療をサポートする可能性が示唆されました。

水素吸入には抗酸化作用があるため、重症化して肺炎を併発した肺炎球菌感染症の治療の補助的な役割を担う可能性が期待できるでしょう。

実際の効果を検証するには、ヒトを対象とした大規模な研究が必要です。道のりは長いですが、水素吸入が広く応用される日を待ちましょう。

【私はこう考える】水素吸入と肺炎球菌感染症

肺炎球菌感染症は年齢や持病などの影響で免疫機能が低下した方が発症すると重症化しやすい感染症です。これまで予防や治療方法を確立するための研究が重ねられ、現在ではワクチンや有効な抗菌薬が開発されています。

しかし、臨床の場では今でも肺炎球菌感染症で入院が必要になる患者や重症肺炎を併発して命を落とす患者も多くいらっしゃるのが現状です。

今回紹介した2つの研究結果から、水素吸入には肺炎球菌感染症の発症や重症化を予防する効果があることが期待できると考えられます。

まだ確実な効果があると言える段階ではありませんが、今回の抗酸化物質を用いた動物実験や総説論文の結果は新たな肺炎球菌感染症の予防や治療方法を見出す上での有益な結果になったと言えるでしょう。

特にアメリカの研究チームが報告した抗酸化作用による肺粘膜の変化の検証は、さらなる研究へ向けた意義のある内容だったと思います。

今後はこのような研究結果を元にさらに研究が進展していくことを期待します。

参考文献
  1. Lee, S. F., Harris, R., & Stout-Delgado, H. W. (2020). Targeted antioxidants as therapeutics for treatment of pneumonia in the elderly. Translational research : the journal of laboratory and clinical medicine220, 43–56. https://doi.org/10.1016/j.trsl.2020.03.002
  2. Youssef, F.M., Elmokadem, E.M., Samy, A.E.H. et al. Antioxidants as adjuvant therapy in the treatment of community-acquired pneumonia. Futur J Pharm Sci 10, 106 (2024). https://doi.org/10.1186/s43094-024-00674-6

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