血液系
【医師監修】血小板減少症と水素吸入の関係 ー 症状と治療法を分かりやすく解説

【医師監修】血小板減少症と水素吸入の関係 ー 症状と治療法を分かりやすく解説

《この記事の執筆者》

出血しやすい、傷が治りにくい——そんな血小板減少症の症状に悩んでいませんか?

この病気は血液中の血小板が不足することで、軽い打撲や小さな傷でも大きな影響を及ぼす可能性があります。

本記事では、血小板減少症の原因や治療法に加え、水素吸入が予防や改善にどう役立つのか、最新の研究データをもとに解説します。

血小板減少症について

血小板減少症について

血小板減少症とは、血液中の血小板数が正常よりも少なくなる状態を指します。

血小板は血液の凝固に重要な役割を果たし、出血を止めるために必要です。血小板が不足すると、軽い打撲でも出血しやすくなり、傷が治りにくくなります。

まずは、血小板減少症の原因や症状、治療方法を詳しくみていきましょう。

血小板減少症の主な原因

血小板減少症の原因は様々あり、以下のものが挙げられます。1,2)

原因1:骨髄での血小板生成不足 

白血病、再生不良性貧血、ビタミンB12や葉酸の欠乏により、血小板の生成が減少します。

 化学療法や放射線治療も骨髄の機能を抑制し、血小板が十分に作られなくなることがあります。

原因2:血小板の過剰破壊 

特発性血小板減少性紫斑病(ITP)や全身性エリテマトーデス(SLE)などの自己免疫性疾患では、免疫系が誤って血小板を攻撃し、血小板の数が減少します。また、細菌やウイルス感染(肝炎、HIVなど)も血小板の破壊を促進します。

播種性血管内凝固症候群(DIC)などの血栓を引き起こす病気では、体内の血小板が使われてしまう可能性があります。

原因3:脾臓での血小板の過剰な取り込み  

肝硬変や脾臓(ひぞう)の腫大により、脾臓に血小板が多く溜まり、血液中の血小板数が減少します。

脾臓とは、左上腹部に位置する臓器で、老化した赤血球を破壊したり、血小板を貯蔵したりする役割があります。3)

原因4:薬剤や毒素

ヘパリン、抗菌薬、一部の利尿薬、アルコールなどが血小板減少を引き起こすことがあります。

血小板減少症の主な症状

血小板減少症の主な症状は、出血しやすくなることです。

皮膚に小さな赤い点状出血(紫斑)が現れるほか、鼻血、歯茎からの出血、月経過多が起こることもあります。

また、軽い打撲でも大きなあざができやすく、傷の治癒が遅れる傾向があります。2)

血小板減少症の治療

血小板減少症の治療は原因に応じて異なります。

軽度の場合は経過観察のみで改善することもありますが、重症の場合や出血が見られる場合には以下の治療が行われます。

血小板減少症の治療
  • 薬物療法:ステロイドや免疫抑制剤で自己免疫反応を抑え、血小板の破壊を防ぎます。
  • 血小板輸血:緊急時や手術前に行われることがあり、血小板数を一時的に増やします。
  • 脾臓摘出:脾臓での血小板破壊が原因の場合、摘出が有効です。
  • 原因の除去:薬剤が原因の場合は中止、感染症が原因の場合は治療を行います。2)

水素吸入は血小板減少症の予防や改善に役立つ?

水素吸入は血小板減少症の予防や改善に役立つ?

血小板減少症は、軽症の場合には症状は現れない場合もありますが、重症な場合は脳出血など生命を脅かす可能性もあります。1)

水素吸入が直接的に血小板減少症の予防や改善に役立つとする報告は現時点ではありません。

しかし、血小板減少の原因の一つである播種性血管内凝固症候群(DIC)の予防や改善に対し、水素の抗酸化作用が役立つ可能性はあります。

それらの研究についてみていきましょう。

血小板減少症の予防の可能性

播種性血管内凝固症候群(DIC)は、血液が全身の血管内で異常に凝固する状態を指します。通常、血液は傷ができた部位でのみ固まりますが、DICでは、体内の広範囲で血栓(血の塊)ができてしまいます。このため、血小板や凝固因子が消耗され、出血しやすくなる「消耗性凝固障害」も引き起こされます。4)

DICのような血小板の異常な活性化や凝集について、水素吸入が役に立つ可能性があります。

例えば、Geらの研究では、水素が選択的に酸化ストレスの原因となるヒドロキシルラジカルや過酸化亜硝酸を除去することで細胞を保護する働きがあると報告されています。5)

酸化ストレスは血小板の異常な活性化や凝集を引き起こしやすく、血小板機能の低下または亢進に関連するリスク要因とされています。6)

そのため、水素による酸化ストレス軽減が、血小板機能異常の予防に寄与する可能性が期待されます​。

酸化ストレスが関与する他の疾患(例:心血管疾患)においても、水素が細胞を保護し、血管の健康を維持する効果があるとされており、血小板機能異常に対しても同様の予防効果が期待されています。ただし、実際の臨床における予防効果を確立するにはさらなる研究が必要です。

血小板減少症の症状改善の可能性

水素吸入が血小板機能異常の治療においても補助的な効果を持つ可能性は、Takeuchiらの研究(2012年)によって示唆されています。この研究では、水素含有の生理食塩水や水素ガスがコラーゲン誘発性の血小板凝集を抑制する効果が確認されました。7)

この結果から、血小板の過剰な凝集による血栓形成や異常な出血傾向に対して、水素吸入が治療の補助的な役割を果たす可能性が考えられます​。

Takeuchiらの研究は、血小板凝集を部分的に抑制することで、血栓形成リスクや出血リスクの軽減に寄与する可能性を示しています。7)

現在のところ、水素吸入はあくまで補助療法として位置付けられており、既存の治療法(抗血小板薬や抗凝固薬)を補完するものとされていますが、今後の臨床試験でさらなる効果が確認されれば、血小板機能異常に対する治療法の一環としての地位が確立される可能性もあります。

【私はこう考える】水素吸入と血小板減少症

血小板減少症は、軽度の場合には症状がほとんど現れないこともありますが、重症化すると深刻な出血を伴い、命に関わるリスクが生じることもあります。

現在の治療は抗血小板薬や血小板輸血といった対症療法が中心ですが、今回ご紹介した研究により、水素吸入が血小板減少症の予防や治療に補助的な効果をもたらす可能性が示唆されました。

Geらの研究(2017年)では、水素が活性酸素を選択的に除去し、血小板の異常な凝集を防ぐことで予防的な効果をもたらす可能性が示されています。

また、Takeuchiらの研究(2012年)では、水素が血小板凝集を部分的に抑制し、症状の緩和に貢献できる可能性が示されました。

今後、水素吸入が血小板減少症に対する有望な予防・治療手段として位置付けられるための更なる研究が望まれます。

参考文献
  1. Platelet Disorders Thrombocytopenia. National Heart, Lung, and Blood Institute.
  2. 血小板減少症の概要 – MSDマニュアル家庭版
  3. 脾臓の解剖と役割 | 東京慈恵会医科大学 外科学講座
  4. 播種性血管内凝固症候群(DIC) – MSDマニュアル プロフェッショナル版
  5. Ge, L., Yang, M., Yang, N. N., Yin, X. X., & Song, W. G. (2017). Molecular hydrogen: a preventive and therapeutic medical gas for various diseases. Oncotarget8(60), 102653–102673. https://doi.org/10.18632/oncotarget.21130
  6. Zhang, X., Yu, S., Li, X., Wen, X., Liu, S., Zu, R., Ren, H., Li, T., Yang, C., & Luo, H. (2023). Research progress on the interaction between oxidative stress and platelets: Another avenue for cancer?. Pharmacological research191, 106777. https://doi.org/10.1016/j.phrs.2023.106777
  7. Takeuchi, S., Wada, K., Nagatani, K., Osada, H., Otani, N., & Nawashiro, H. (2012). Hydrogen may inhibit collagen-induced platelet aggregation: an ex vivo and in vivo study. Internal medicine (Tokyo, Japan)51(11), 1309–1313. https://doi.org/10.2169/internalmedicine.51.7161
  8. Takeuchi, S., Wada, K., Nagatani, K., Osada, H., Otani, N., & Nawashiro, H. (2012). Hydrogen may inhibit collagen-induced platelet aggregation: an ex vivo and in vivo study. Internal medicine (Tokyo, Japan)51(11), 1309–1313. https://doi.org/10.2169/internalmedicine.51.7161

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