《この記事の執筆者》
2011年国立大学医学部卒。初期臨床研修を経て総合診療医として勤務しながら、さまざまな疾患の患者さんに向き合う治療に従事。医療行政に従事していた期間もあり、精神福祉、母子保健、感染症、がん対策、生活習慣病対策などに携わる。結核研究所や国立医療科学院での研修も積む。2020年からは医療法人ウェルパートナーで主任医師を勤める。
白髪は加齢により誰しもが経験するものです。
しかしその現れ方や現れる時期は人それぞれで、できれば白髪になりたくないという思いを持つ人も少なくないでしょう。
近年、酸化ストレスが白髪と関係していることが報告されており、酸化ストレスを軽減する水素吸入が有効ではないかと注目を集めています。
本記事では、水素吸入療法が白髪の予防や改善に役立つのかについて、これまでに報告されている研究をもとに考察していきます。
白髪の原因とセルフケア方法とは?
年齢を重ねると誰もが悩まされるようになる白髪は、現れ方や現れる時期に個人差があるものです。
白髪は見た目の印象を大きく変える場合もあり、予防や改善方法の研究が続けられています。
まずは、白髪の原因やセルフケアなどの特徴について詳しく見てみましょう。
白髪の原因
白髪は色素を作り出すメラノサイトにダメージが生じることによって引き起こされます。
私たちの髪の毛には元々色素はありません。
生育段階でメラノサイトが作り出した色素が取り込まれて黒色や茶色になるのです。
そのため、メラノサイトが色素を作れなくなると髪の毛が白いまま生育して「白髪」になります。
頭皮のメラノサイトが減少する最大の原因は老化です。
一方で、以下のような要因でもメラノサイトの働きが弱まって白髪を引き起こすとされています1)。
- ストレス
- 食事の偏り
- 睡眠不足
- 紫外線のダメージ
- 喫煙習慣
- 遺伝
急激に増える白髪は病気のサインかも?
白髪は加齢や生活習慣の乱れなどによって少しずつ増えていくものです。
しかし、急激に白髪が増える場合は要注意です。
甲状腺機能低下症などの病気が原因の場合があります。
他にも気になる症状がある場合は軽く考えずに医療機関を受診してください。
白髪はどうやってセルフケアすればよい?
白髪は老化現象の一つです。
年齢を重ねていくと誰もが避けることはできなくなります。
しかし、上述したように生活習慣の乱れも白髪を増やす原因となります。
白髪を抑えるには、食生活や睡眠習慣を整えて健やかな生活を送ることが大切です。
また、白髪は頭皮の血行が悪くなることも原因の一つとなります。
白髪が気になりだしたら、ゆったりとした入浴や頭皮マッサージなどで頭皮の血流を促してあげましょう。
水素吸入療法は白髪の予防や改善に役立つ?
現在のところ、水素吸入療法が白髪を予防したり、改善に導いたりする可能性を模索する研究は行われていません。
しかし、体内の活性酸素や酸化ストレスが白髪の発生に関わっている可能性を示唆する研究結果が報告されています。
水素吸入療法は活性酸素や酸化ストレスを軽減する働きがあるため、白髪の予防や改善にアプローチできる可能性を持つことも考えられます。
酸化ストレスと白髪の関係を探った研究結果の内容を詳しく見てみましょう。
毛包のメラノサイトは酸化ストレスに弱い?
2006年に、毛包のメラノサイトは酸化ストレスに弱く、酸化ストレスを受けると消失する可能性を示唆する研究結果が報告されました2)。
この研究では、成長期にある白髪の毛包を分析した結果が示されています。
報告によれば、白髪の毛包はメラノサイトの消失と酸化ストレスの増加を認めたとのことです。
また、色素のある髪の毛の毛包に酸化ストレスを与えるとメラノサイトの消失率が増えたことも明らかになっています。
これらの結果から、毛包に酸化ストレスが増えるとメラノサイトが消失して白髪になる可能性が示されました。
水素吸入療法は白髪の予防に役立つ可能性
酸化ストレスを軽減できる水素吸入療法は、毛包の酸化ストレスを抑えて白髪を予防できる可能性が考えられます。
まだ研究段階のため確実な効果があると断言することはできません。
しかし、今回の研究によって白髪の原因となるメラノサイトの消失は酸化ストレスが関わっている可能性が高いことが示唆されています。
今後、さらに研究が進展することを願います。
毛包の抗酸化作用が低下すると白髪が増える?
2014年にも同一人物の白髪と色素のある毛包を詳しく分析した研究結果が報告されています3)。
結果として、白髪の毛包では色素のある毛包に比べて有意に抗酸化作用が弱まっていることが明らかになりました。
また、白髪の毛包はメラニンの生成に関わる遺伝子やメラノサイトに関わる遺伝子が少ないことも明らかになっています。
これらの結果は、白髪の出現には遺伝が関与しているものの、毛包での抗酸化作用が低くなると白髪になりやすくなる可能性を示します。
水素吸入療法で抗酸化作用を補うと白髪を改善できる可能性
今回の研究結果は、白髪の出現には毛包内の抗酸化作用低下が関わっていることが強く疑う根拠となりました。
体内の活性酸素を除去することで抗酸化作用をもたらす水素吸入療法は白髪の改善に役立つ可能性が考えられます。
まだ研究段階のため確実な効果があるとは言えませんが、今後のさらなる解明に期待します。
【私はこう考える】水素吸入と白髪
白髪は、年齢を重ねれば誰もが避けることのできない老化現象です。
白髪はカラーリングをすれば見た目の印象を変えることもできますが、少しでも減らしたいと願う方は少なくないでしょう。
今回ご紹介した2つの研究結果では、白髪は毛包の酸化ストレスによるメラノサイトの消失が原因であることが示唆されました。
また、毛包の抗酸化作用低下が白髪を引き起こす可能性も考えられました。
今後さらなる研究の進展が期待されますが、水素吸入療法は酸化ストレスを軽減して白髪の予防や改善に役立つ可能性があります。
白髪に悩んでる方、家族が若い時期から白髪だった方などは簡便に行える水素吸入療法を試してみるのもよいでしょう。
参考文献
- 白髪や脱毛の要因となる幹細胞を探る |西村栄美 Bloom!医科歯科 No.16
- Arck, P.C., Overall, R.W., Spatz, K.R., Liezman, C., Handjiski, B., Klapp, B.F., Birch-Machin, M.A., Peters, E.M., & Birch-Machin, M.A. (2006). Towards a “free radical theory of graying”: melanocyte apoptosis in the aging human hair follicle is an indicator of oxidative stress induced tissue damage. The FASEB Journal, 20, E908 – E920.
- Shi, Y., Luo, L. F., Liu, X. M., Zhou, Q., Xu, S. Z., & Lei, T. C. (2014). Premature graying as a consequence of compromised antioxidant activity in hair bulb melanocytes and their precursors. PloS one, 9(4), e93589. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0093589