消化器系
【医師監修】過敏性腸症候群(IBS)に水素吸入は効果あり?症状改善の可能性を解説

【医師監修】過敏性腸症候群(IBS)に水素吸入は効果あり?症状改善の可能性を解説

《この記事の監修者》

「またお腹が痛い…」「急な下痢や便秘で予定が台無しに…」——

過敏性腸症候群(IBS)に悩む方にとって、このような不安は日常的なもの。

ストレスや腸内環境の乱れが原因と言われても、根本的な解決策が見つからず、長年苦しんでいる方も多いのではないでしょうか?

実は近年、水素吸入が腸の炎症を抑え、腸内環境を整える可能性があると注目されています。動物実験や水素水の研究では、IBS症状の改善が示唆されており、今後の治療選択肢として期待されています。

本記事では、IBSの原因や症状などの基本的な情報から、水素吸入がIBSに与える影響を医学的視点から詳しく解説します。お腹の不調に振り回されない毎日を目指すためのヒントとして、ぜひ最後までご覧ください。

すいかつねっとのエビデンス評価
3.0

動物実験や水素水を用いた初期研究では、IBSの症状改善に有望な結果が得られている。水素吸入により炎症抑制や腸内環境改善の可能性が示唆されるが、さらなる臨床試験による裏付けが必要。

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過敏性腸症候群(IBS)とは?

過敏性腸症候群(IBS)とは?

過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome:略称IBS)とは、検査をしても異常が見つからないのに、腹痛や腹部の不快感、そして下痢や便秘といった便通の異常が慢性的に続く病気です。下痢と便秘を交互に繰り返す場合もあります。

日本でのIBS有病率は10〜15%と推定されており、消化器の不調で外来を受診する方の約3割を占めるという報告もあり、実はとても身近な病気です。1)

男性よりも女性に多い傾向にあり、その割合は約1:1.2~1.6と報告されており、特に20~40歳代の女性に多く見られます 。1)

IBSは症状の現れ方によって、主に便秘型、下痢型、そして両方を繰り返す混合型に分けられます。最近の調査では、日本では混合型が最も多いという結果が出ています。2)

IBSの原因

IBSの原因は、まだ完全には解明されていません。

現状では、主に以下のような要因が複数関与していると考えられています。

IBSの原因
  • 腸の神経の過敏化
    腸の神経が敏感になることで、通常気にならない刺激でも腹痛や便通異常につながりやすくなる。
  • ストレス
    ストレスによって自律神経のバランスが乱れると、腸の動きが不安定になりがち。
  • 腸内環境の乱れ
    善玉菌と悪玉菌のバランスが崩れて腸内環境が悪化し、IBSが起こりやすくなる。
  • 神経伝達物質の異常
    セロトニンなど腸の動きや痛みの感じ方を調整する物質に異常がある場合、便秘や下痢を引き起こすことがある。
  • 食生活
    高脂肪の食事や、吸収されにくい糖質(FODMAP)の過剰摂取が、ガスの発生や腹部膨満を招き、症状を悪化させる。

IBSの主な症状

IBSの主な症状は、腹痛や腹部不快感を伴う便通異常です。

腹痛は、切り込むような鋭い痛みから鈍い痛みまで様々で、排便すると痛みがやわらぐことが多いのが特徴です。

さらに下痢、便秘、またはこれらを交互に繰り返すことに加えて、ガスが溜まってお腹が張る、お腹が鳴るなどの不快症状もみられます。

そのほか、吐き気、消化不良、倦怠感、頭痛、不安感、抑うつなどの症状が現れることもあります。

IBSの一般的な治療法

IBSの治療では、患者さんの症状や生活習慣に合わせて、以下の方法が組み合わされます。

IBSの一般的な治療法
  • 生活習慣の改善
    規則正しい睡眠、適度な運動、ストレス管理などが重要です。
  • 食事療法
    食物繊維や水分をしっかり摂る一方、高脂肪食や刺激物の摂取を控えます。
    また、下痢が強い場合には低FODMAP食(発酵性の糖質を控えめにする食事)が有効とされることがあります。
  • 薬物療法
    下痢止め、便秘薬、整腸剤、消化管運動調節薬、抗不安薬など、症状に応じて処方されます。
  • 心理療法
    ストレスや不安の影響が大きい場合、認知行動療法やリラクセーション法などが取り入れられることがあります。

水素吸入療法はIBSに効果がある?医学的視点から考察

近年、水素には抗酸化作用や抗炎症作用があるとして注目が集まっています。

IBSに関してはまだ直接的な臨床試験は多くありませんが、いくつかの動物実験研究などから、水素が腸管の炎症軽減や酸化ストレスの抑制に役立つ可能性が示唆されています。

ここでは、水素吸入療法のIBSに対する有効性について、医学的な視点から詳しく考察していきます。

水素吸入がIBS予防に役立つ可能性

IBSに対する水素吸入の予防効果を直接調べた臨床試験は、残念ながらまだ報告されていません。

しかし、水素が持つ抗酸化作用や抗炎症作用がIBSの予防に役立つ可能性は、これまでの関連する研究結果から推測できます。

IBSの発症や悪化には、酸化ストレスや炎症が関与している可能性が指摘されています。3)

水素には、腸の炎症を軽減することや腸内細菌叢のバランス調整効果が報告されており、これらによってIBSの予防に繋がる可能性があります。4)

あくまで「可能性がある」という域ですが、理論的にみて効果が期待できると考えられるでしょう。

水素吸入がIBS症状を改善する可能性

水素がIBSの症状改善に役立つ可能性を示唆する研究結果が報告されています。

2021年の研究では、IBSの患者60名を対象に水素水を1週間飲用してもらい、その後の変化が検証されました。5)

その結果、IBS患者の腹痛や便通などの症状改善に加えて、血中の炎症マーカーの有意な軽減が見られました。

この研究では水素水が用いられていますが、より効率的に水素を取り込める水素吸入でも炎症を抑えることでIBSの症状の改善が期待できる可能性はあるでしょう。

まとめ:水素吸入はIBS治療の新たな選択肢となるか?

IBSは生活習慣やストレスなど多様な要因が絡み合うため、一人ひとりで症状や原因が異なります。

まずは確立された治療法(生活習慣の改善や薬物療法など)を基盤とし、あまり改善がみられない場合は、補助的に水素吸入を検討するのも一つの考え方です。

特に、酸化ストレスや炎症が関わっている可能性が高い方には、水素の抗酸化・抗炎症作用が役立つかもしれません。

現状では大規模な研究が不足しており、IBSへの有効性を断定することは難しいのが実情です。

しかし、水素吸入はこれまでの報告でも重篤な副作用がなく、比較的安全性が高く取り入れやすい療法です。

今後、ヒトを対象にした臨床試験が進むことで、最適な水素濃度や吸入時間などが明らかになり、IBSの新たな選択肢となる可能性は十分にあります。

現状では、水素水の方がIBSなど胃腸に関する効果が比較的多く報告されていますが、最近では水素水を作れる水素吸入器もあります。IBSにお悩みの方は、それを活用するのも1つの手でしょう。

参考文献
  1. 機能性消化管疾患診療ガイドライン2020-過敏性腸症候群|日本消化器病学会
  2. Takeoka, A., Kimura, T., Hara, S., Hamaguchi, T., Fukudo, S., & Tayama, J. (2023). Prevalence of Irritable Bowel Syndrome in Japan, China, and South Korea: An International Cross-sectional Study. Journal of neurogastroenterology and motility, 29(2), 229–237. https://doi.org/10.5056/jnm22037
  3. Yisireyili, M., Uchida, Y., Yamamoto, K., Nakayama, T., Cheng, X. W., Matsushita, T., Nakamura, S., Murohara, T., & Takeshita, K. (2018). Angiotensin receptor blocker irbesartan reduces stress-induced intestinal inflammation via AT1a signaling and ACE2-dependent mechanism in mice. Brain, behavior, and immunity, 69, 167–179. https://doi.org/10.1016/j.bbi.2017.11.010
  4. Ostojic, S. M. (2021). Hydrogen-rich water as a modulator of gut microbiota? Journal of Functional Foods, 78, 104360. https://doi.org/10.1016/j.jff.2021.104360
  5. Rohovyi, Y., Tsitrin, V., Bilooka, Y., Arkchipova, L., & Bilookiy, V. (2021). Mechanism of influence of molecular hydrogen on the function of the proximal tubule of the nephron in irritable bowel syndrome. Journal of Education, Health and Sport, 11(2), 53-62. https://doi.org/10.12775/JEHS.2021.11.2.006

このコラム記事は、一般的な医学的情報および最新の研究動向をもとに作成しておりますが、読者の方の個別の症状や体質などを考慮したものではありません。また、医学的アドバイス、診断、治療に代わるものではなく、特定の製品や治療法の効果・効能を保証、証明するものでもありません。健康上の問題がある場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、医師などの専門家に必ずご相談ください。本コラム記事の情報をもとに被ったいかなる損害についても、当方は一切の責任を負いかねます。

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