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【医師監修】抗がん剤による間質性肺炎を軽減?水素吸入の可能性と最新知見を解説

【医師監修】抗がん剤による間質性肺炎を軽減?水素吸入の可能性と最新知見を解説

《この記事の執筆者》

抗がん剤治療の一環として、多くの患者が重篤な副作用に苦しむ「間質性肺炎」。これは肺の壁が炎症によって硬化し、呼吸が難しくなる病気です。

この副作用に対して最近注目を集めているのが「水素吸入」です。

本記事では、抗がん剤によって引き起こされる間質性肺炎の基礎知識から、水素吸入の予防・改善効果について最新の研究に基づいて詳しく解説します。抗がん剤治療を受けられる方にとって役立つ内容となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。

抗がん剤治療による間質性肺炎について

抗がん剤治療による間質性肺炎について

間質性肺炎とは、肺の壁に炎症が生じて厚く硬くなっていく病気のことです。

抗がん剤治療は手術、放射線治療とともにがん治療の主要な治療方法の一つです。

しかし、抗がん剤はがん細胞だけではなく正常な細胞にもダメージを及ぼすこともあり、重篤な副作用を引き起こすことがあります。間質性肺炎もその一つであり、重症な場合には命に関わるケースもあるため注意が必要です。

まずは、抗がん剤治療における間質性肺炎について詳しく見てみましょう。

抗がん剤治療による間質性肺炎の症状

間質性肺炎を発症すると息切れや咳などの症状を引き起こします。

重症化すると呼吸困難に陥るなど命に関わる状態になるケースも少なくありません。

抗がん剤の中でも多くの種類のがんに用いられるゲフィチニブやトラスツマブ、シスプラチン、ドキソルビシンなどが間質性肺炎を引き起こすことが知られており、注意すべき副作用の一つとなっています。

抗がん剤治療による間質性肺炎の原因

抗がん剤による間質性肺炎の明確な発症メカニズムは解明されていない部分も多いですが、次のような原因で引き起こされると考えられています。

抗がん剤による間質性肺炎の原因
  • 抗がん剤による肺組織への直接的なダメージ
  • 免疫機能の過剰な作用
  • 活性酸素の過剰な生成

抗がん剤治療による間質性肺炎の治療・対策

抗がん剤治療によって引き起こされる間質性肺炎は、確立した予防方法がありません。そのため、抗がん剤治療中に息切れや咳などの呼吸器症状が現れた場合には速やかな検査が推奨されています。

間質性肺炎を発症した場合は、抗がん剤の種類や用量の変更が必要となるケースが多いのが現状です。そして、重症度に合わせて酸素吸入や免疫抑制剤などを用いた薬物療法を行う必要があります。

そのため、間質性肺炎が引き起こされるとがん治療の進行に影響を与える可能性があるのです。

水素吸入が抗がん剤治療による間質性肺炎の予防・改善に役立つ可能性

水素吸入が抗がん剤治療による間質性肺炎の予防・改善に役立つ可能性

間質性肺炎は重篤な抗がん剤副作用の一つであり、発症すると抗がん剤治療自体を中断せざるを得ないケースが多いのが現状です。しかし、間質性肺炎の発症を予防する確立した方法はなく、治療をしても十分な効果がないケースも少なくありません。

近年では、新たな抗がん剤治療による間質性肺炎の予防・改善方法として水素分子に注目が寄せられ、有益な作用を示す研究結果も報告されています。水素分子と抗がん剤による間質性肺炎の関係を示唆する研究結果を詳しく見てみましょう。

水素吸入が活性酸素を除去して間質性肺炎を予防する?

これまでにも水素吸入が活性酸素を除去するという研究結果が多数報告されていますが、2024年9月にもドバイの研究チームが新たな研究結果を発表しました1)

この研究は、血中の活性酸素が多い37人を対象に水素吸入による活性酸素の変化を検証した研究です。その結果、水素吸入をした群では水素吸入をしていない群と比較して大幅に血中の活性酸素が減少したことが明らかになりました。

2012年に日本の研究チームが公表した研究結果などからも抗がん剤による間質性肺炎は過剰な活性酸素によって肺の組織にダメージが加わることが一因であるとされています2)。そのため、水素吸入による除去が発症を予防できる可能性は期待できる結果と言えるでしょう

水素吸入が間質性肺炎を予防する可能性

水素吸入は効率よく活性酸素を除去できるため、活性酸素が発症要因でもある抗がん剤による間質性肺炎を予防する効果は期待できると考えられます。

今後は抗がん剤治療によって間質性肺炎を発症した方を対象に大規模な臨床研究を重ねてさらなるメカニズムや効果の解明が進むことを期待します。

水素水が抗がん剤による間質性肺炎を改善する?

2019年、日本の研究チームはゲフィチニブという抗がん剤によって引き起こされる間質性肺炎が水素水の飲用によって改善する可能性を示唆する研究結果を報告しました3)

この研究は間質性肺炎を発症させてマウスを用いた動物実験であり、水素水を飲ませると肺内の炎症性物質が減少して肺の炎症が抑制されたことを明らかにしています。

水素吸入が抗がん剤による間質性肺炎の改善に役立つ可能性

今回の研究結果は水素分子が間質性肺炎の改善を促す可能性を示唆しています。水素吸入は、水素水の飲用に比べ、より効率的に水素を体内に取り入れられる方法です。特に、呼吸を通して直接肺に水素が届くため、水素水と同様、あるいはそれ以上の効果が期待できるでしょう。

ただし、動物実験の段階であるためヒトに対しても確実な効果があると断言できる段階ではないのが現状です。今後の研究の進展によっては治療が難しい抗がん剤による間質性肺炎の新たな治療方法として実用化される日が来るかも知れません。

【私はこう考える】水素吸入と抗がん剤による間質性肺炎

間質性肺炎は重篤な抗がん剤による副作用の一つであり、重症な場合には命に関わるケースもあります。

今回ご紹介した2つの研究結果から水素吸入は間質性肺炎の予防や改善に役立つ可能性が期待できると言えるでしょう。特にドバイの研究チームによる最新の報告はランダム化対象試験の研究であり、対象人数は少ないものの信頼性のあるデータと言えます。今後の課題としては大規模な人数を対象として臨床研究が求められますが、その橋掛かりとなる重要な研究結果であったと言えます。

また、日本の研究チームによる報告は実際に抗がん剤による間質性肺炎の悪化を水素分子が改善する可能性を示した貴重な研究結果です。動物実験ではありますが、今後の水素吸入実用化の可能性を探る上で非常に有益な結果だと考えます。今後はヒトを対象として研究を行い、さらなる究明が進むことを期待しましょう。

参考文献
  1. Chair, M., AlAani, H., Lafci Fahrioglu, S., Ben Hamda, C., Fahrioglu, U., & Degheidy, T. (2024). The impact of hydrogen inhalation therapy on blood reactive oxygen species levels: A randomized controlled study. Free radical biology & medicine222, 601–606. https://doi.org/10.1016/j.freeradbiomed.2024.07.010
  2. Matsuno O. (2012). Drug-induced interstitial lung disease: mechanisms and best diagnostic approaches. Respiratory research13(1), 39. https://doi.org/10.1186/1465-9921-13-39
  3. Terasaki, Y., Suzuki, T., Tonaki, K., Terasaki, M., Kuwahara, N., Ohsiro, J., Iketani, M., Takahashi, M., Hamanoue, M., Kajimoto, Y., Hattori, S., Kawaguchi, H., Shimizu, A., & Ohsawa, I. (2019). Molecular hydrogen attenuates gefitinib-induced exacerbation of naphthalene-evoked acute lung injury through a reduction in oxidative stress and inflammation. Laboratory investigation; a journal of technical methods and pathology99(6), 793–806. https://doi.org/10.1038/s41374-019-0187-z

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