水素水に関する25の臨床研究のシステマティックレビューを行った結果、運動能力、身体持久力、肝機能、心血管疾患、メンタルヘルス、COVID-19、酸化ストレス、アンチエイジングなどの分野で水素水の潜在的な効果が示唆された。
3分で読める詳細解説
結論
水素水は様々な健康分野で有益な可能性が報告されているが、より大きなサンプルサイズで長期的なヒトでの研究が待たれる。
研究の背景と目的
水素水は、その抗酸化作用、抗炎症作用、抗アポトーシス作用によって様々な分野で人体に有益とされているため、現在までの研究結果を評価することを目的に25の論文を対象に系統的レビューをまとめた。
研究方法
いくつかのキーワードを含む論文をPubMedから抽出し(590件)、重複した研究、動物実験を除外した。また関連性のない物を除外した。他に、水素吸入、水素濃度の高い生理食塩水注入療法も除外した。その後、二人の研究者が独立してスクリーニングして30の論文をピックアップした。水素水を使用したヒトを対象とした研究、コホート研究、症例対照研究、臨床試験、あるいは観察研究を選定し、臨床的情報と病態生理学的情報を含むものを選んだ。
研究結果
- 運動能力、身体的持久力、肝機能、心血管疾患、メンタルヘルス、COVID-19、酸化ストレスや加齢性変化などが研究対象となっていた。
- 水素水は運動のパフォーマンス向上に加えて、運動による酸化ストレスを軽減することで疲労を和らげ耐久力を向上すると報告されていた。
- 水素水は、運動によって上昇する血中の乳酸レベルを下げると報告されている。
- 水素水の摂取によって、血中の酸化ストレスマーカー(IL-1, IL-6, TNF-α, SOD)の変化が生じ、抗酸化作用が発揮されていることが示唆されたとの報告がある。
- また、水素水により、ROSの生成抑制、プロ炎症サイトカインの抑制が報告された。
- 高脂血症について、10週間水素水を接種した20人の患者(喫煙者10名, 非喫煙者10名)の総コレステロールレベルが減少した(LDLコレステロール値のレベルも減少した)。喫煙者より非喫煙者でより有益な傾向が見られた。
- メタボリックシンドローム予防として、水素水はLDL-Cとapo-Bレベルを低下させ、HDLの機能を改善する可能性が示唆された。
- 不安定狭心症患者について、その症状が改善する可能性が示された。
- COVID-19管理にも役立つ可能性があり、水素水の効果は水素が体内になくなってからも持続した。
- 水素の抗腫瘍効果が様々ながんの治療に補助的に有効とする報告がある。
- メンタルヘルスについて、4週間水素水を飲んだ患者が不安感などが改善したとの研究が報告されている。
- パニック障害の女性を対象とした研究で、毎日の心理療法に加えて1500mlの水素水を3ヶ月間摂取したところ、プロ炎症性サイトカイン(IL-6, IL-1β, IL-12, TNF-α )の有意な低下があった。
- 慢性B型肝炎患者を対象とした研究では、毎日1200-1800mLを2回に分けて摂取した結果、肝機能の改善とHBV DNAの減少がみられた。
- 30名のNAFLD患者に対して8週間の無作為化二重盲検比較対象実験を行った結果
- 、BMIと体重が減少した。
- 70歳以上の男女が水素水を飲むことによる有害な副作用はなく、下肢の運動能を含む老化に対する有益な効果が示唆された。
- ただし研究の多くはサンプルサイズが小さく、短期的な効果を見たものが多い。バイアスリスクもあり、今後大規模で厳密な研究による検証が必要である。
Appendix(用語解説)
論文情報
タイトル
Hydrogen Water: Extra Healthy or a Hoax?-A Systematic Review(水素水:すごく健康的?それともデマカセ?:系統的レビュー)
引用元
Dhillon, G., Buddhavarapu, V., Grewal, H., Sharma, P., Verma, R. K., Munjal, R., Devadoss, R., & Kashyap, R. (2024). Hydrogen Water: Extra Healthy or a Hoax?-A Systematic Review. International journal of molecular sciences, 25(2), 973. https://doi.org/10.3390/ijms25020973
専門家のコメント
本論文は、水素水に限ったシステマティックレビューですが、実に多くの、また幅広い分野での水素水の有益性が報告されていることがわかります。また、以前は動物実験の報告が大半を占めていましたが、近年は、上記のようにヒトを対象とした研究結果が続々と報告されるようになってきました。レビューすると、水素分子の可能性に関する研究が目覚ましく進んでいることをあらためて実感し、大いに期待が高まります。今後、さらなるサンプルサイズでの、一歩踏み込んだ研究が待たれます。