研究論文
水素は腸潰瘍性大腸炎を制御する

水素は腸潰瘍性大腸炎を制御する

一言まとめ

水素の潰瘍性大腸炎への治療効果に関する論文を要約したところ、腸内酸化還元バランスの維持、腸上皮細胞へのダメージ軽減、腸内細菌叢の制御、有害細菌による腸上皮関門へのダメージ低減、腸内嫌気性細菌の正常化が見られ、潰瘍性大腸炎に有用な治療法である可能性が示唆された。

3分で読める詳細解説

結論

水素は種々の腸内環境の異常を正常化させることで、潰瘍性大腸炎を治療できる可能性がある。

研究の背景と目的

潰瘍性大腸炎は従来薬物治療を施されているが、副作用があったり、あまり効果が出なかったりすることが課題である。本研究では、スポーツ治療、認知機能障害、脳卒中、ガン、メタボリックシンドローム、COVID-19などの治療で注目を集めている水素ガス吸入法に着目。抗酸化作用の観点から、潰瘍性大腸炎に対する水素の効果を要約することを目的とした。

研究方法

潰瘍性大腸炎に対する水素分子の作用メカニズムに関する研究を幅広く収集し、レビューを行った。特に水素分子の選択的抗酸化作用、腸内細菌叢への影響、腸管バリア機能への保護効果に着目した。

研究結果

  • 潰瘍性大腸炎により生じる酸化ストレスは、フリーラジカル、腸内酸化還元電位の変化、腸の嫌気環境の破綻を通じて、腸バリアの破綻や腸内細菌叢の乱れに繋がる。
  • 水素分子は選択的にヒドロキシルラジカルやペルオキシ亜硝酸を還元し、腸管の酸化ストレスを軽減する。
  • 水素分子はTLR4/MyD88/NF-κBシグナル経路を抑制し、炎症性サイトカインの産生を減らすことで炎症を和らげる。また小胞体ストレスを軽減し、腸管上皮細胞のアポトーシスを抑制することでも腸管バリアを保護する。
  • 水素分子は腸内細菌叢を整え、有害細菌の増殖を抑制し、腸内の嫌気性環境を維持することで腸管バリア機能を保護する。
  • 動物モデルにおいて、水素水の投与により体重減少の改善、結腸の短縮抑制、組織学的炎症の軽減が認められた。
  • 水素ガス吸入法は潰瘍性大腸炎に有用な治療法として期待されるが、細胞・動物モデルやヒトの臨床試験データが少ない。今後の研究により、水素による治療メカニズムの解明や治療的効果のエビデンス取得が必要である。

Appendix(用語解説)

  • 潰瘍性大腸炎:大腸の粘膜に潰瘍や炎症が生じる慢性の炎症性腸疾患。
  • 酸化ストレス:活性酸素種が過剰に生成され、抗酸化システムとのバランスが崩れた状態。
  • フリーラジカル:不対電子を持つ不安定な分子や原子。生体分子に酸化的ダメージを与える。
  • ヒドロキシルラジカル:フリーラジカルの一種で、非常に反応性が高く細胞毒性が強い。
  • ペルオキシ亜硝酸:フリーラジカルの一種。タンパク質の酸化やDNA損傷を引き起こす。
  • 腸内細菌叢:腸内に生息する細菌の集団。宿主の健康に重要な役割を果たす。
  • 嫌気性細菌:酸素がない環境で生育する細菌。健康な腸内環境の維持に重要。
  • 腸管バリア:腸管内容物と体内組織を隔てる物理的・化学的障壁。
  • TLR4シグナル:自然免疫に関わる受容体の一つ。病原体などを認識し炎症反応を引き起こす。
  • NF-κB:炎症性サイトカインの産生を制御する転写因子。
  • 小胞体ストレス:小胞体の機能が低下しタンパク質の合成や輸送に問題が生じること。細胞のアポトーシスに関与。
  • アポトーシス:プログラムされた細胞死。細胞が自発的に死ぬこと。
  • 炎症性サイトカイン:炎症反応を促進するシグナル分子。TNF-αやIL-6など。

論文情報

タイトル

Hydrogen Regulates Ulcerative Colitis by Affecting the Intestinal Redox Environment(水素は腸内の酸化還元環境に影響を与えて潰瘍性大腸炎を制御する)

引用元

Li, J., Huang, G., Wang, J., Wang, S., & Yu, Y. (2024). Hydrogen Regulates Ulcerative Colitis by Affecting the Intestinal Redox Environment. Journal of inflammation research17, 933–945. https://doi.org/10.2147/JIR.S445152

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