一言まとめ
敗血症マウスモデルに67%の高濃度水素を1時間、術後1時間および6時間後に吸入させたところ、生存率の向上、認知機能の改善、脳内の抗酸化酵素活性の増加、炎症性サイトカインの減少が見られ、ミトコンドリア動態とバイオジェネシスの改善がそのメカニズムであることが示された。
3分で読める詳細解説
結論
高濃度水素吸入は敗血症による神経障害を軽減し、生存率を改善する効果があり、そのメカニズムはミトコンドリアの機能強化による。
研究の背景と目的
敗血症は感染に対する宿主の不適切な反応によって引き起こされる重篤な状態であり、多臓器不全を引き起こす。敗血症関連脳症(SAE)は敗血症に関連した神経障害で、予後不良である。脳はその高い酸素消費量と比較的低い抗酸化防御能のため、敗血症時の酸化ストレスに特に脆弱である。ミトコンドリアは細胞のエネルギー代謝において重要な役割を果たしており、その機能障害はSAEの発症に重大な影響を与える。
水素分子は活性酸素種(ROS)の除去や免疫応答の調節など治療的特性を持つことが示されている。研究チームは以前の研究で低濃度(2%)の水素が敗血症および多臓器不全の治療に有効であることを示した。近年、高濃度水素療法デバイスが様々な疾患の治療において有望な結果を示している。
本研究は、高濃度(67%)の水素吸入がSAEに対する効果を評価し、そのメカニズムがミトコンドリアのバイオジェネシス(生合成)とダイナミクス(動態)に関連しているかどうかを調査することを目的とした。
研究方法
研究結果
Appendix(用語解説)
- 敗血症: 感染に対する宿主の不適切な反応によって引き起こされる生命を脅かす状態で、多臓器不全を引き起こす
- 敗血症関連脳症(SAE): 敗血症に関連して発生する神経障害
- ミトコンドリア: 細胞内のエネルギー産生を担う重要な細胞小器官
- ミトコンドリア動態: ミトコンドリアの融合、分裂、運動性などの動的な変化
- ミトコンドリア膜電位(MMP): ミトコンドリア内膜の両側に存在する電位差で、ATP合成に必須
- 抗酸化酵素(SOD、CAT): 活性酸素種を無害化する酵素
- DRP1: ミトコンドリア分裂に関与するタンパク質
- MFN2: ミトコンドリア融合に関与するタンパク質
- PGC-1α、NRF2、TFAM: ミトコンドリア生合成に関連するタンパク質
- 活性酸素種(ROS): 酸素を含む反応性の高い分子であり、細胞障害を引き起こす
論文情報
タイトル
High-concentration hydrogen inhalation mitigates sepsis-associated encephalopathy in mice by improving mitochondrial dynamics(高濃度水素吸入はマウスにおけるミトコンドリア動態改善によって敗血症関連脳症を軽減する)
引用元
Cui, Y., Meng, S., Zhang, N., Liu, J., Zheng, L., Ma, W., Song, Y., Wang, Z., Shen, Y., Liu, J., & Xie, K. (2024). High-concentration hydrogen inhalation mitigates sepsis-associated encephalopathy in mice by improving mitochondrial dynamics. CNS neuroscience & therapeutics, 30(9), e70021. https://doi.org/10.1111/cns.70021
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