一言まとめ
DSS誘発性大腸炎マウスモデルにおいて水素水の投与が、標準治療薬の硫酸サラゾピリンと同等以上の抗炎症・抗酸化作用を示し、大腸炎の症状や組織の炎症を改善することが明らかになった。
3分で読める詳細解説
結論
水素水は抗炎症・抗酸化作用によりDSS誘発性大腸炎を緩和し、標準治療薬と同等以上の効果を持つ。
研究の背景と目的
大腸炎は腹痛、下痢、疲労、発熱を伴う腸の炎症性疾患で、その原因は複合的だが炎症性および酸化メディエーターの過剰産生に関連している。現在、この疾患に対する根本的な治療法はなく、使用される薬剤は多くの場合、有害な副作用がある。水素分子は抗炎症作用と抗酸化作用を持つことが認識されており、大腸炎の新しい治療法となる可能性がある。この研究では、マウスにデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を投与して急性大腸炎モデルを作成し、水素水と標準治療薬である硫酸サラゾピリンの治療効果を比較検討した。
研究方法
研究結果
Appendix(用語解説)
- 大腸炎: 腸の炎症性疾患で、腹痛、下痢、疲労感などの症状を伴う。
- デキストラン硫酸ナトリウム(DSS): 実験的に大腸炎を誘発するために用いられる化学物質。
- 硫酸サラゾピリン: 大腸炎などの炎症性腸疾患に対する標準的な治療薬。
- 疾患活動性指数(DAI): 大腸炎の重症度を評価するための指標で、体重変化、便の性状、出血などから算出される。
- MDA(マロンジアルデヒド): 体内の脂質過酸化の指標となる物質。酸化ストレスの程度を示す。
- SOD(スーパーオキシドジスムターゼ): 体内の抗酸化酵素の一種。
- カタラーゼ: 過酸化水素を分解する抗酸化酵素。
- 高感度CRP: 体内の炎症状態を示す指標。
論文情報
タイトル
Molecular hydrogen is comparable to sulfasalazine as a treatment for DSS-induced colitis in mice(分子状水素は硫酸サラゾピリンと同等にDSS誘発性マウス大腸炎の治療効果を示す)
引用元
LeBaron, T. W., Asgharzadeh, F., Khazei, M., Kura, B., Tarnava, A., & Slezak, J. (2021). Molecular hydrogen is comparable to sulfasalazine as a treatment for DSS-induced colitis in mice. EXCLI journal, 20, 1106–1117. https://doi.org/10.17179/excli2021-3762
専門家のコメント
まだコメントはありません。