一言まとめ
マウスを用いた実験で、間欠的な低酸素状態によって引き起こされる心臓(左心室)の構造的変化(リモデリング)に対し、1.3%の水素吸入が酸化ストレスを軽減し、リモデリングを抑制することを示した。
3分で読める詳細解説
結論
水素吸入は、睡眠時無呼吸症候群に関連する間欠的低酸素による酸化ストレスを軽減し、左心室リモデリングを抑制する効果がある。
研究の背景と目的
睡眠時無呼吸症候群は、心血管疾患のリスクを高めることが知られている。その一因である間欠的低酸素は、心臓に酸化ストレスを引き起こし、有害な左心室リモデリング(心臓の構造と機能の変化)を促進する。水素分子は抗酸化作用を持つ可能性が示唆されている。そこで本研究は、マウスの間欠的低酸素モデルを用いて、水素吸入が脂質代謝異常や左心室リモデリングに与える影響を調査することを目的とした。
研究方法
研究結果
Appendix(用語解説)
- 睡眠時無呼吸症候群(SAS): 睡眠中に呼吸が一時的に停止したり、浅くなったりする病態。心血管系疾患のリスク因子となる。
- 間欠的低酸素: 酸素濃度が周期的に低下と回復を繰り返す状態。SASの特徴的な病態生理。
- 左心室リモデリング: 心臓の左心室が構造的に変化すること。心筋細胞の肥大や心室の拡張、線維化などが含まれ、心機能低下につながる可能性がある。
- 活性酸素種(ROS): 酸素を含む化学的に反応性の高い分子。過剰に産生されると細胞や組織に酸化ストレスを与える。
- ヒドロキシルラジカル: 最も毒性の高いラジカルの一つで、脂質、タンパク質、核酸と反応することが知られており、左心室リモデリングの発症に重要な役割を果たす可能性がある。
- 4-HNE(4-ヒドロキシ-2-ノネナール): 脂質過酸化によって生じる反応性アルデヒドで、酸化ストレスのマーカーとして用いられる。
- TNF-α(腫瘍壊死因子α)、IL-6(インターロイキン6): 炎症性サイトカインで、炎症反応の調節に関与する。
- BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド): 心臓から分泌されるホルモンで、心臓に負荷がかかると増加する。心不全の診断マーカーとして用いられる。
- DHE(ジヒドロエチジウム): スーパーオキシドを検出するための蛍光プローブ。酸化されるとエチジウムとなり赤色蛍光を発する。
論文情報
タイトル
Inhalation of hydrogen gas attenuates left ventricular remodeling induced by intermittent hypoxia in mice(水素ガス吸入が間欠的低酸素による左心室リモデリングを軽減する:マウス実験)
引用元
Hayashi, T., Yoshioka, T., Hasegawa, K., Miyamura, M., Mori, T., Ukimura, A., Matsumura, Y., & Ishizaka, N. (2011). Inhalation of hydrogen gas attenuates left ventricular remodeling induced by intermittent hypoxia in mice. American journal of physiology. Heart and circulatory physiology, 301(3), H1062–H1069. https://doi.org/10.1152/ajpheart.00150.2011
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