「また扁桃炎になってしまった…」と繰り返す症状に悩んでいませんか?
扁桃炎は単なるのどの痛みではなく、適切な治療が必要な感染症です。
本記事では、扁桃炎の症状や原因を医学的に解説するとともに、従来の抗生物質治療に加え、新たな可能性として注目される水素吸入療法についてご紹介します。
ウイルス性と細菌性の見分け方、慢性扁桃炎の対策、そして水素の抗炎症効果が扁桃の炎症にどう働きかけるのか。つらい症状との付き合い方が変わるかもしれない情報が満載です。
《この記事の執筆者》

国立大学医学部卒。卒後は消化器内科医として様々な市中病院で研鑽を積み、現在に至る。専門は早期がんの内視鏡治療、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)の診療、消化器がんの化学療法。消化器病学会専門医,消化器内視鏡学会専門医,総合内科専門医を取得。
扁桃炎ってどんな病気?

扁桃炎とは、のどの奥にある「扁桃」と呼ばれるリンパ組織が、細菌やウイルスの感染によって炎症を起こした状態です。
扁桃は、口や鼻から入ってくる細菌やウイルスを撃退する、体の防御システムの最前線として重要な役割を担っています。
扁桃炎は、急に発生する「急性扁桃炎」、年に数回以上繰り返す慢性的な腫れを伴う「慢性扁桃炎」があります。
扁桃炎の主な原因
扁桃炎の主な原因は、細菌やウイルスの感染です。
①細菌感染
溶連菌(A群β溶血性連鎖球菌など)への感染によって発症します。
小児の扁桃炎の約15~30%、成人の約10~15%を占める主要な原因菌です。1)
その他、インフルエンザ菌、肺炎球菌、黄色ブドウ球菌なども原因となることもあります。
②ウイルス感染
アデノウイルス、エプスタイン・バー(EB)ウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルスなど、様々なウイルスが原因となります。
ウイルス性の場合、小児では10~40%、成人では20~30%を占めると言われています。1)
特に溶連菌感染は、適切な治療をしないとリウマチ熱(心臓や関節に後遺症が残る病気)や糸球体腎炎(腎臓の病気)などの合併症を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。
扁桃炎の主な症状
扁桃炎の典型的な症状は以下の通りです。
- のどの痛み: 特に飲み込むときに痛みが強くなります。
- 発熱: 38℃以上の高熱が出ることもあります。
- 扁桃の腫れ: 扁桃が赤く腫れ、白い膿(白苔)が付着することがあります。
- 首のリンパ節の腫れと痛み: 顎の下や首の側面にあるリンパ節が腫れて、触ると痛むことがあります。
- 口臭: 慢性扁桃炎の場合、扁桃のくぼみに膿栓がたまり、口臭の原因になることもあります。
これらの症状に加え、全身の倦怠感や頭痛、関節痛などを伴うこともあります。
扁桃炎の一般的な治療法
扁桃腺炎の治療方法は、原因により異なります。
- 細菌性の場合
ペニシリン系などの抗生物質を用いた治療が行われ、通常は10日間程度の服用で治癒を目指します。 - ウイルス性の場合
十分な水分補給、うがい、解熱鎮痛剤による対症療法が中心となり、自然治癒を促します。 - 慢性・反復性の場合
再発を繰り返す場合には、扁桃摘出手術が検討されることもあります。また、日常のうがいや口腔ケアによる予防策も重要です。
水素吸入療法が扁桃腺炎への新たなアプローチとなるか

水素吸入療法は、水素ガスを吸入することで、体内の酸化ストレスや炎症を抑制し、症状の改善や治癒促進に寄与する可能性が指摘されています。
扁桃炎に対する水素吸入療法の有効性を直接的に調べた大規模な臨床試験は、現時点では残念ながら実施されていません。
しかし、関連する研究報告がいくつかあり、ここではそれらの研究結果に基づいて、水素吸入の有効性が期待される点について考察します。
扁桃炎の補助療法としての可能性
2021年の中国の研究において、伝染性単核球症(急性扁桃炎の一種)の治療に水素吸入が役立つ可能性が示唆されています。2)
伝染性単核球症(IM)はEBウイルスによる咽頭扁桃炎を主体とする疾患で、高熱・リンパ節腫脹・扁桃の著明な腫れを特徴とします。
この研究では、1~10歳の伝染性単核球症入院患児60例を無作為に2群(各30例)に分け、一方は標準治療(抗ウイルス薬アシクロビルなど)と水素吸入を行い、対照群は標準治療のみを実施し、比較されました。
結果として、両群とも治療後に症状改善と免疫状態の回復がみられましたが、水素吸入群では回復の程度が有意に高かったことが判明しました。具体的には、水素併用群のほうが末梢血中のCD4⁺T細胞増加・CD8⁺T細胞減少の程度が大きく、免疫学的指標(CD4/CD8比)の改善が優れていました。
研究者らは「水素吸入の併用は、IMによるT細胞機能異常の改善に寄与し、アシクロビル単独より優れる」と結論づけています。
この研究は扁桃炎そのものを対象としたものではありませんが、ウイルス性扁桃炎のモデルといえるIMで水素が炎症を和らげ免疫バランスを整える効果を示した興味深い報告と言えます。
上気道粘膜の炎症を抑える可能性
扁桃と同じ上気道粘膜の慢性炎症性疾患であるアレルギー性鼻炎において、水素吸入の効果が示唆されています。3)
2024年のこの報告では、慢性鼻炎患者を対象に水素吸入を用いて症状や炎症指標などの変化が検証されました。
結果として、1日3時間の水素吸入を4週間続けることで、主観的な鼻炎症状の改善に加えて、炎症の指標である血中好酸球数や血中IgEが有意に減少したことが報告されています。
この研究は扁桃ではなく鼻粘膜での試みですが、水素の抗炎症効果がヒトの上気道炎症に有用である可能性を示しています。
扁桃炎においても類似のメカニズム(粘膜の炎症・浮腫の軽減)による改善効果が期待できるかもしれません。
まとめ:扁桃炎と水素吸入療法の現状とこれから
扁桃炎は、ありふれた病気ですが、時に重症化したり、繰り返すことで生活の質を大きく低下させることがあります。従来の治療法に加え、水素吸入療法のような新しいアプローチが登場することは、患者さんにとって選択肢が増えるという意味で、非常に喜ばしいことでしょう。
現時点では、扁桃炎に対する水素吸入療法の効果を明確に示すエビデンスはまだ十分ではありません。そのため、あくまでも補助的な治療手段として検討すべきであり、抗生物質などの標準治療の代替として使用するべきではないという点はご留意ください。
しかし、これまでの基礎研究や関連疾患での臨床研究の結果から、水素吸入が扁桃炎の症状緩和や予防に役立つ可能性は十分に考えられます。
今後さらに研究が進められ、水素吸入が扁桃炎の予防や改善に対して有効であることが証明されていくことを期待しましょう。
水素吸入が上気道粘膜の炎症を軽減し、免疫バランスを調整する可能性が報告されているが、扁桃炎自体に対するヒト臨床試験はまだ限定的。基礎研究や関連疾患の臨床データを踏まえると、炎症の緩和や症状改善に寄与する可能性があり、今後の研究が待たれる段階。
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参考文献
- 急性扁桃炎・慢性扁桃炎・扁桃周囲炎・扁桃周囲膿瘍
- Liu, H., Song, S., Li, J., Liu, S., Yan, J., Yan, J., Li, L., Li, N., Wang, P., Yin, X., Wei, Y., & Lin, A. (2021). Effect of hydrogen gas inhalation on T lymphocyte subsets in infectious mononucleosis. Advances in Clinical Medicine, 11(10), 4424-4430. https://doi.org/10.12677/acm.2021.1110648
- Wang, N., Ma, Q., Zhai, J., Che, Y., Liu, J., Tang, T., Sun, Y., Wang, J., & Yang, W. (2024). Hydrogen inhalation: A novel approach to alleviating allergic rhinitis symptoms by modulating nasal flora. The World Allergy Organization journal, 17(10), 100970. https://doi.org/10.1016/j.waojou.2024.100970
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