一言まとめ
L-アルギニン投与による慢性膵炎モデルマウスに2%水素吸入を行ったところ、膵炎の炎症と線維化が軽減され、失われていたTregsが回復した。Tregsを枯渇させると水素の保護効果は消失し、水素はTregsの生存をROS抑制を通じて促進すると考えられる。
3分で読める詳細解説
結論
慢性膵炎モデルマウスで減少したTregsを回復させることで、水素吸入が膵組織の損傷と線維化を軽減する。
研究の背景と目的
慢性膵炎は、膵臓で持続する炎症と線維化が進行し、膵の構造と機能が不可逆的に破壊される疾患だ。従来より、免疫細胞の異常活性化が膵炎の発症と進行に寄与すると考えられてきた。特に、制御性T細胞(Tregs)の減少は炎症の制御不全をもたらす可能性がある。本研究では、活性酸素種(ROS)を選択的に除去する性質が報告されている水素が慢性膵炎モデルにどのような影響を与えるかを検証し、特にTregsとの関連に注目した。
研究方法
研究結果
Appendix(用語解説)
- Tregs(制御性T細胞):免疫系が過剰に働くのを抑える機能をもつT細胞の一種。自己免疫疾患や炎症の制御に重要な役割を果たす。
- SOD(スーパーオキシドジスムターゼ):活性酸素種を分解する酵素の一種。SOD活性が高いほど酸化ストレス防御力が高いとみなされる。
- MDA(マロンジアルデヒド):脂質過酸化反応の指標となる物質。MDA量が増加すると、細胞膜損傷などが進みやすい。
- TUNEL染色:アポトーシス(プログラム細胞死)を起こしている細胞を検出する手法。膵組織の傷害評価に用いられる。
- Foxp3:Tregsを特徴づける転写因子。Foxp3を高発現している細胞がTregsとして機能する。
論文情報
タイトル
Hydrogen Treatment Protects Mice Against Chronic Pancreatitis by Restoring Regulatory T Cells Loss(慢性膵炎に対する水素治療の保護効果:制御性T細胞(Tregs)の減少回復を介したメカニズム)
引用元
Chen, L., Ma, C., Bian, Y., Li, J., Wang, T., Su, L., & Lu, J. (2018). Hydrogen treatment protects mice against chronic pancreatitis by restoring regulatory T cells loss. Cellular Physiology and Biochemistry, 44(5), 2005-2016. https://doi.org/10.1159/000485906
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