感染症
【医師監修】近年急増する「梅毒」と水素吸入の関係とは

【医師監修】近年急増する「梅毒」と水素吸入の関係とは

《この記事の執筆者》

梅毒は近年、若い世代を中心に急増している性感染症です。

早期治療で完治が可能な一方、放置すると命に関わることもあるため注意が必要です。

近年、酸化ストレスが梅毒の進行に関わる可能性が指摘され、水素吸入がその進行を抑える補助的な役割を果たす可能性が注目されています。

本記事では、梅毒の原因や症状、治療法に加え、水素吸入の可能性について最新研究をもとに詳しく解説します。梅毒を正しく理解し、予防・治療を正しく行うためにぜひご参考ください。

梅毒について

梅毒について

梅毒は性感染症であり、近年若い世代を中心に発症者が急増していることが社会問題となっています。

梅毒は感染すると長い時間をかけて進行し、放置すると命に関わる場合もあるため注意が必要な性感染症の一つです。

まずは、梅毒の原因、症状、治療方法について詳しく見てみましょう。

梅毒の原因

梅毒は、トレポネーマ・パリダムという細菌に感染することによって引き起こされる病気です。

トレポネーマ・パリダムは次のような経路で私たちに感染します。

梅毒の原因
  • 性行為
  • 母子感染(母体から赤ちゃんへ感染)
  • 感染者の血液との接触

特に多いのは性行為による感染であり、オーラルセックスでも感染する可能性があります。そのため、性行為の際にはコンドームの着用など適切な感染対策が必要です。

梅毒の症状

梅毒は感染してからの期間によって次のように4つの段階に進行してくのが特徴です。

①一次梅毒

トレポネーマ・パリダムに感染して3週間ほど経過すると、外陰部など感染した部位にしこりが形成されます。

しこりは治療をしなくても数週間で自然に消えますが、細菌は体内に残ったままとなります。

②二次梅毒

感染して数か月経過すると、手の平や足の裏などの発疹が現れます。

発熱、倦怠感、リンパ節の腫れといった風邪のような症状を伴うケースも少なくありません。

③潜伏梅毒

二次梅毒の症状は治療をしなくても一時的に自然と消えていきます。

症状がないまま何年も経過する場合もありますが、体の中では気づかない間にどんどん病気が進行していくのが特徴です。

④後期梅毒

感染から数年~数十年経過しても未治療の場合、皮膚、筋肉、骨に大きなしこりができて周囲の組織を破壊するようになります。また、大動脈瘤や神経障害など心臓や神経にも症状を引き起こす場合があります。

現在では後期梅毒まで進行する患者はほとんどいませんが、後期梅毒まで進行すると命に関わるため早い段階で治療を開始することが重要です。

また、母体が梅毒に感染していると胎盤を通して赤ちゃんに感染し、死産や流産のリスクが高まります。梅毒に感染した状態で生まれると、角膜炎や難聴などのリスクが高まることが知られています。

梅毒の治療方法

梅毒は抗菌薬の投与によって治療します。進行度や重症度によって治療期間は異なりますが、基本的にはペニシリン系の抗菌薬が使用されます。

抗菌薬が開発された現在において、梅毒は早い段階で治療を開始すれば後遺症なく完治する病気です。

水素吸入が梅毒の進行予防や治療に役立つ可能性

梅毒は治療方法が確立された感染症です。しかし、梅毒は発症しても早期段階では目立った症状は現れにくく、自然に軽快するため発症に気づかないまま進行してしまうケースも少なくありません。

現在のところ、水素吸入と梅毒の関係を論じた研究結果は報告されていません。しかし、近年、抗酸化作用が梅毒の進行予防や治療に役立つ可能性を示唆する研究結果が報告されています。

具体的な内容を詳しく見てみましょう。

酸化ストレスが梅毒の進行に関わっている?

2021年、フランスの研究チームは酸化ストレスが梅毒の進行に関わっている可能性を示唆する研究結果を報告しました1)。

この研究は、梅毒患者63名と梅毒ではない患者53名を対象として血液中の酸化ストレスや抗酸化能力を示す物質量を比較検討しました。結果として、梅毒患者は初期段階から酸化ストレスが高く、抗酸化能力が低下していることが明らかになっています。

水素吸入が梅毒の進行を抑える可能性

今回の研究は、少人数を対象とした研究とは言え、梅毒患者の血液中の酸化ストレスや抗酸化能力の状態を非感染者と比較検討した研究です。研究者たちは、梅毒は強い炎症を引き起こす感染症ではないものの、慢性的な酸化ストレスを引き起こすことが進行に関わっている可能性を示しました。

強い抗酸化作用がある水素吸入は酸化ストレスを軽減して、抗酸化能力をサポートすることで梅毒の進行を抑えると考えられるでしょう。もちろん、梅毒の根本的な治療は抗菌薬を用いた薬物療法ですが、水素吸入が進行を抑えるという補助的な役割を果たす可能性があります。今後、もっと大規模な人数に対しての検証を行い、全貌が解明される日を期待しましょう。

抗酸化物質が梅毒の症状を和らげる?

2021年、イランらの研究者チームは抗酸化作用を持つアロエベラが細菌性の性感染症の症状を和らげて治療に役立つ可能性があるとの論文を報告しました2)。

この論文は、これまで行われてきた様々な研究結果をまとめて結論を導き出す総説論文です。今回は、アロエベラの性感染症への効果が検証され、性感染症の炎症や症状などを改善する可能性が示されました。

水素吸入が梅毒の治療をサポートする可能性

今回の総説論文から、アロエベラには梅毒をはじめとする細菌性の性感染症の治療をサポートする効果が期待できると明らかになりました。アロエベラには抗酸化作用があるため、同じく強い抗酸化作用がある水素吸入にも同様の効果が期待できる可能性はあるでしょう。

今後は、水素吸入を用いた研究が行われ、効果が検証されていくことを期待します。

【私はこう考える】水素吸入と梅毒

近年、発症者が急増している梅毒は予防や治療方法が確立された感染症です。しかし、今回紹介した2つの研究結果から、水素吸入は梅毒の進行予防や治療をサポートする働きを持つ可能性が示されたと言えます。

感染予防としてコンドームの着用を行い、梅毒と診断されたときは速やかに薬物療法を開始するのはもちろんですが、水素吸入のサポートを加えるのも一つのよい方法です。

まず、フランスの研究チームの報告は梅毒の病態を解明するための重要な結果となりました。酸化ストレスの軽減が梅毒の発症予防につながる可能性もあり、今後のさらなる解明に期待できます。

また、イランらの研究チームの報告は抗酸化物質が梅毒をはじめとして細菌性の性感染症の治療をサポートする可能性を示しています。梅毒の治療には抗菌薬の投与が不可欠ですが、治療をサポートする目的で水素吸入を取り入れるのもよいでしょう。

まだ水素吸入が梅毒の予防や治療に役立つと断言することはできませんが、今後のさらなる研究の進展によって水素療法が応用される日を望みます。

参考文献
  1. Hébert-Schuster, M., Borderie, D., Grange, P. A., Lemarechal, H., Kavian-Tessler, N., Batteux, F., & Dupin, N. (2012). Oxidative stress markers are increased since early stages of infection in syphilitic patients. Archives of dermatological research, 304(9), 689–697. https://doi.org/10.1007/s00403-012-1271-z
  2. Sharifi-Rad, J., Quispe, C., Rahavian, A., Pereira Carneiro, J. N., Rocha, J. E., Alves Borges Leal, A. L., Bezerra Morais Braga, M. F., Melo Coutinho, H. D., Ansari Djafari, A., Alarcón-Zapata, P., Martorell, M., Antika, G., Tumer, T. B., Cruz-Martins, N., Helon, P., Paprocka, P., Koch, W., Docea, A. O., & Calina, D. (2021). Bioactive Compounds as Potential Agents for Sexually Transmitted Diseases Management: A Review to Explore Molecular Mechanisms of Action. Frontiers in pharmacology12, 674682. https://doi.org/10.3389/fphar.2021.674682

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