精神・神経系
【医師監修】統合失調症治療に革命?水素吸入の効果と今後の展望

【医師監修】統合失調症治療に革命?水素吸入の効果と今後の展望

《この記事の執筆者》

統合失調症は、思考や感情、行動がまとまりにくくなる精神疾患で、発症すると幻覚や妄想といった症状が現れることが多く、再発リスクも高い病気です。

現在の治療は主に薬物療法が中心ですが、副作用や多剤併用といった課題も抱えています。

そんな中、注目されているのが「水素吸入療法」です。水素には酸化ストレスを軽減する効果があり、統合失調症の予防や症状の改善に役立つ可能性が示唆されています。

本記事では、統合失調症の原因や症状などの基本情報から、水素吸入の将来的な可能性について詳しく解説します。ぜひ最後までご覧ください。

統合失調症とは?

統合失調症とは?

統合失調症とは、代表的な精神疾患の一つです。

思春期から20歳代半ばに発症しやすく1)、2020年の厚生労働省の統計では、日本全国で約190万人の人が治療を受けておられます2)

統合失調症では、思考や行動、感情を1つの目的に沿ってまとめていく能力、すなわち統合する能力が長期間にわたって低下していきます。

長く時間が経てば経つほど、ある種の幻覚、妄想など、ひどくまとまりのない行動が見られることが起こりやすいと言われています。

なぜ、そのようなことが起こるのでしょうか

統合失調症の主な原因

実はこの病気の原因は十分明らかにされていません。

しかし、何らかの遺伝的な素因と環境的な負荷、とくに対人的な緊張が重なることで発病につながるということは、ほぼ認められています。

統合失調症の主な症状

統合失調症の典型的な症状としては幻覚・妄想があります。

幻覚とは「何もないところに知覚を感じること」です。ただ統合失調症の場合、この知覚は、単に物音がするとか人が話しているということだけではなく、「自分に対して何かを語りかけてくる」などの本人に対して意味を持つ場合が多いです。

妄想とは、「一般的に見てあり得ないことを強い確信を持って信じる状態」を指します。たとえば「宇宙人が常に見張ってきて自分に危害を加えようとしている」とか、「テレビの有名人が自分に対する悪口を枕元まで来てずっとささやき続けている」などのような内容です。

他にも考えが支離滅裂になったり、非常に緊張しやすくなったり、感情が平坦になったりする場合もあります。

統合失調症の標準的な治療

統合失調症の治療には個人差がありますが、主に抗精神病薬と呼ばれるドーパミンやセロトニンなど脳の神経伝達物質に作用する薬を用いた薬物療法が行われる場合が多いです。

薬物療法で状態が落ち着いたら職場訓練などのリハビリテーションと支援プログラムで社会復帰を目指すのが標準的な治療の流れです。

医師やカウンセラーと交流を繰り返すことで精神的な症状の改善を目指す精神療法は、統合失調症では効果が乏しいと一般的には考えられています。

水素吸入は統合失調症の予防・改善に効果はある?

水素吸入は統合失調症の予防・改善に効果はある?

統合失調症は非常に再発しやすい病気であり、初発の精神病症状が軽快しても、 薬物療法を中止した場合、1年以内に約80%、2年に以内に約98%の確率で再発するという報告もあります3)

薬以外の治療選択肢として水素吸入の可能性はどうなのでしょうか。

統合失調症の予防の可能性

統合失調症の原因は不明ながらも、その病態に酸化ストレスという現象が関わっている可能性が基礎研究で示されています。

酸化ストレスとは、何らかの原因で身体の代謝に負荷がかかることで生まれる活性酸素が自分自身を酸化させようとする力のことです。

2019年に東京大学と理化学研究所の研究グループは、酸化ストレスによって傷害を受けたある種のタンパク質が統合失調症の発症に関与していることを解明しました4)

一方で水素吸入が酸化ストレスを低減することで、神経保護に働く可能性を示す論文もあります5)

したがって、水素吸入を活用することで統合失調症の予防に役立つ可能性は少なくとも理論的には示すことができそうです。

統合失調症の症状改善の可能性

水素吸入の統合失調症に対する直接的な治療効果を検証した研究は今のところはまだ報告されていません。

ただ、水素吸入療法の特許申請のための予備的な研究として、30代女性の統合失調症患者に水素吸入療法を実施したケースは報告されています6)

そのケースでは連日水素吸入療法を行い、徐々に薬を減らすことができるようになり、約9ヶ月で薬の使用をゼロにして病状を安定化させることができたようです。

今後、多数のケースで水素吸入療法の有効性が示されていく可能性は十分にあるものと考えられます。

【私はこう考える】水素吸入と統合失調症

統合失調症の標準的な治療は薬物療法ですが、実は大きな問題をはらんでいます。

なぜならば抗精神病薬という薬は、副作用の多い薬としてもよく知られているからです。

また薬の種類も1つや2つにとどまらず、多種類の薬が併用されたり、さらに副作用を止めるための薬が追加され、多剤内服状態になることも珍しくありません。

そのような中で患者さんにとってより害の少ない新しい治療法が求められています。

水素吸入療法は、そのような希望に応える可能性のある治療法の一つと言っていいと思います。ただし今後、多くの患者さんに使用されたり、長い期間経過を観察することで見えてくる新たな課題も見えてくるかもしれません。

もう一つ、医師やカウンセラーによる精神療法の効果が乏しいと言いましたが、実はやり方に問題がある可能性も指摘されています。

フィンランドでは医師やカウンセラーが主導的に患者へアドバイスするのではなく、患者、家族、医療者のみならず症状の発生に関与しうる関係者全員を招いて、対等な立場という前提でそれぞれの思いを確認し合うオープンダイアローグと呼ばれる手法が、統合失調症の治療に大きな成果を挙げていることが報告されています7)

いずれにしても常識にとらわれない新たな発想で、統合失調症の患者さんにとって希望となるような治療法の発展が求められていると思います。

参考文献
  1. 日本統合失調症学会監修, 福田正人ほか編: 統合失調症. 医学書院, 東京, 2013, pp. 25-36
  2. 厚生労働省: 令和2年(2020)患者調査の概況
  3. 日本精神神経学会ホームページ、こころの病気について、統合失調症(薬物治療)
  4. Manabu Toyoshima, Xuguang Jiang, Tadayuki Ogawa, Tetsuo Ohnishi, Shogo Yoshihara, Shabeesh Balan, Takeo Yoshikawa, Nobutaka Hirokawa “Enhanced carbonyl stress induces irreversible multimerization of CRMP2 in schizophrenia pathogenesis”, Life Science Alliance, 2, e201900478 (2019)
  5. Han XC, Ye ZH, Hu HJ, Sun Q, Fan DF. Hydrogen exerts neuroprotective effects by inhibiting oxidative stress in experimental diabetic peripheral neuropathy rats. Med Gas Res. 2023 Apr-Jun;13(2):72-77. doi: 10.4103/2045-9912.345171. PMID: 36204786; PMCID: PMC9555025.
  6. https://patents.google.com/patent/JP7116476B2/ja (参照2024-09-14)
  7. Seikkula, J., Olson, M. E. : The OPD approach to acute psychosis : Its poetics and micropolitics. Family Process, 42(3) ; 403-18, 2003.

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