一言まとめ
マウスの網膜に人工的に脈絡膜新生血管を作成し、水素ガス吸入の効果を調べたところ、水素吸入により新生血管からの漏出が抑制され、VEGF経路の抑制と炎症性サイトカインの発現低下が認められた。
3分で読める詳細解説
結論
水素吸入は、レーザー誘発脈絡膜新生血管モデルマウスにおいて、炎症反応の抑制とVEGF依存性の脈絡膜新生血管形成の抑制を介して、脈絡膜新生血管からの漏出を軽減する可能性がある。
研究の背景と目的
加齢黄斑変性(AMD)は高齢者の失明原因の第一位であり、脈絡膜新生血管(CNV)がその主な病態である。酸化ストレスと慢性炎症がAMDの発症に関与しており、水素分子はその抗酸化・抗炎症作用が注目されている。本研究は、AMDのマウスモデルにおける水素吸入の影響を調べることを目的とした。
研究方法
- C57BL/6Jマウスを5群に分け、レーザー照射によりCNVを誘導
- 対照群:レーザー照射も水素吸入も行わない
- レーザー単独群:レーザー照射のみ
- 2時間群:レーザー照射 + 1日2時間の水素吸入
- 5時間群:レーザー照射 + 1日5時間の水素吸入
- 2.5時間×2回群:レーザー照射 + 1日2.5時間を2回に分けて水素吸入
- 水素吸入は、67%水素+33%酸素の混合ガスを3L/分で供給
- 網膜の変化を蛍光眼底造影、組織学的検査、免疫染色、qRT-PCRで評価
研究結果
Appendix(用語解説)
- 脈絡膜新生血管(CNV):脈絡膜から網膜下に向かって異常に増殖した新生血管。滲出や出血を伴い、AMDの主な病態。
- 蛍光眼底造影:血管内に蛍光色素を注入し、眼底の循環動態を可視化する検査法。CNVの活動性評価に用いられる。
- VEGF:血管内皮増殖因子。血管新生を強力に促進するタンパク質。
- HIF-1α:低酸素誘導因子。低酸素状態で発現が増加し、VEGFの産生を促進する。
論文情報
タイトル
The Anti-Inflammatory Effect of Hydrogen Gas Inhalation and Its Influence on Laser-Induced Choroidal Neovascularization in a Mouse Model of Neovascular Age-Related Macular Degeneration(新生血管型加齢黄斑変性のマウスモデルにおける水素ガス吸入の抗炎症作用とレーザー誘発脈絡膜新生血管への影響)
引用元
Liang, I. C., Ko, W. C., Hsu, Y. J., Lin, Y. R., Chang, Y. H., Zong, X. H., Lai, P. C., Chang, D. C., & Hung, C. F. (2021). The Anti-Inflammatory Effect of Hydrogen Gas Inhalation and Its Influence on Laser-Induced Choroidal Neovascularization in a Mouse Model of Neovascular Age-Related Macular Degeneration. International journal of molecular sciences, 22(21), 12049. https://doi.org/10.3390/ijms222112049
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