研究論文
Clinical Effects of Hydrogen Administration: From Animal and Human Diseases to Exercise Medicine(水素投与の臨床効果:動物とヒトの疾患から運動医学まで)

動物やヒトへの水素投与の臨床効果

一言まとめ

水素分子は抗酸化、抗炎症、抗アポトーシス作用を持ち、動物実験や臨床試験で様々な疾患に有効性が示されている。本総説では、水素の医療応用について、基礎研究から臨床研究まで幅広く概説している。

3分で読める詳細解説

結論

水素分子は選択的に活性酸素を除去し、動物実験や臨床試験で、様々な疾患モデルや患者に対する有効性が示されており、副作用もほとんどない

研究の背景と目的

活性酸素種(ROS)は様々な疾患の発症・進行に関与するが、従来の抗酸化剤は副作用の問題もあった。2007年に水素分子の選択的抗酸化作用が発見され、医療応用への期待が高まっている。本総説は、水素分子の医学的応用について、基礎研究から臨床研究までを幅広く概説することを目的とした。

研究方法

水素分子の基本的性質、投与方法、安全性、動物モデルでの効果、臨床試験での効果などについて、これまでに発表された論文を幅広くレビューした。対象疾患は、虚血再灌流障害、代謝疾患、心血管疾患、神経変性疾患、炎症性疾患、がん、老化、運動など多岐にわたる。

研究結果

  • 水素分子は選択的にヒドロキシルラジカル(・OH)と過酸化亜硝酸(ONOO-)を還元・除去する。一方、生理的に重要な過酸化水素(H2O2)と一酸化窒素(NO)は除去しない。
  • 水素分子は、NF-κBやNrf2などの転写因子の活性を調節し、炎症や酸化ストレス関連の遺伝子発現を抑制する。
  • 水素分子は、ガス吸入、水素水の飲用、点滴静注、入浴など、様々な方法で投与できる。体内への取り込みが速く、組織への浸透性が高い。
  • 水素分子は非常に安全性が高く、高濃度でも毒性はほとんどない。
  • 動物実験では、脳梗塞、心筋梗塞、糖尿病、パーキンソン病、関節リウマチ、がんなど、様々な疾患モデルで水素の有効性が示されている。
  • ヒトでは、水素水の飲用により、メタボリックシンドローム、動脈硬化、関節リウマチ、花粉症などで良好な効果が得られている。パーキンソン病や乳がんの放射線治療の副作用軽減にも有望である。ただし大規模な臨床試験はまだ少ない。

Appendix(用語解説)

  • 活性酸素種(ROS):スーパーオキシド、過酸化水素、ヒドロキシルラジカルなど、反応性の高い酸素分子。生体内の恒常性維持に重要な役割を果たす一方、過剰になると細胞・組織障害を引き起こす。
  • 転写因子:NF-κB、Nrf2など、特定の遺伝子のDNA配列に結合し、その発現を制御するタンパク質。
  • 虚血再灌流障害:血流が途絶えた組織に再び血流が回復する際に起こる組織障害。活性酸素種の急激な産生が原因の一つ。

論文情報

タイトル

Clinical Effects of Hydrogen Administration: From Animal and Human Diseases to Exercise Medicine(水素投与の臨床効果:動物とヒトの疾患から運動医学まで)

引用元

Nicolson, G. L., de Mattos, G. F., Settineri, R., Costa, C., Ellithorpe, R., Rosenblatt, S., La Valle, J., Jimenez, A., & Ohta, S. (2016). Clinical effects of hydrogen administration: From animal and human diseases to exercise medicine. International Journal of Clinical Medicine, 7(1), 32-76. http://dx.doi.org/10.4236/ijcm.2016.71005

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