研究論文
Hydrogen inhalation therapy for inflammation and eye diseases: a review of the literature(水素吸入療法による炎症と眼疾患への効果:文献レビュー)

水素吸入による炎症と眼疾患への効果

一言まとめ

水素ガス吸入は、加齢黄斑変性、白内障、糖尿病網膜症などの眼疾患に対して、抗酸化・抗炎症作用により保護効果を示す可能性がある。ただし、最適な使用法を確立するにはさらなる研究が必要。

3分で読める詳細解説

結論

水素は抗酸化・抗炎症作用を有し、様々な眼疾患の予防・治療に有望である。

研究の背景と目的

酸化ストレスは多くの眼疾患に関与している。水素は強力な抗酸化物質であり、血液脳関門や血液眼関門を通過してROSを効果的に中和できる。本総説では、水素吸入療法と炎症・眼疾患の関連性について、既存文献を網羅的にレビューすることを目的とした。

研究方法

水素吸入療法、炎症、眼疾患に関する既存文献を幅広く調査した。特に、加齢黄斑変性、白内障、糖尿病網膜症、網膜虚血再灌流障害、緑内障などの疾患に着目し、水素の作用メカニズムや治療効果について考察した。

研究結果

  • マウスの加齢黄斑変性モデルにおいて、水素ガス吸入が脈絡膜新生血管からの漏出を減少させ、炎症とVEGF発現を抑制した。
  • 水素は細胞に対する保護作用を有し、白内障や糖尿病網膜症など複数の眼疾患の治療に有望である。
  • ラットの網膜虚血再灌流障害モデルにおいて、水素ガス吸入が炎症、構造変化、グリア細胞増加を軽減した。
  • 水素は選択的ラジカル消去剤として作用するが、そのメカニズムは不明確。Keap1-Nrf2抗酸化システムの活性化によるミトコンドリアホメオスタシスの調節が関与している可能性がある。
  • 水素の抗酸化、抗アポトーシス、細胞保護、ミトホルメシス特性と無毒性から、治療用途に理想的である。水素治療により酸化ストレスが抑制され、眼疾患の予防・改善や重篤な変性疾患の進行抑制につながる可能性がある。

Appendix(用語解説)

  • ROS(reactive oxygen species):活性酸素種。酸化ストレスの原因となる。
  • VEGF(vascular endothelial growth factor):血管内皮増殖因子。血管新生を促進する。
  • Keap1-Nrf2抗酸化システム:酸化ストレスに対する防御機構の一つ。
  • ミトコンドリアホメオスタシス:ミトコンドリアの恒常性維持。
  • ミトホルメシス:ミトコンドリアの適応反応。軽度のストレスに対する耐性獲得。

論文情報

タイトル

Hydrogen inhalation therapy for inflammation and eye diseases: a review of the literature(水素吸入療法による炎症と眼疾患への効果:文献レビュー)

引用元

Takefuji, Y. (2024). Hydrogen inhalation therapy for inflammation and eye diseases: a review of the literature. Eye. https://doi.org/10.1038/s41433-024-03083-4

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