一言まとめ
健常男性を対象に、高強度の自転車運動前に水素ガス吸入を行ったところ、運動中の主観的疲労感と心拍数の上昇が抑制され、前頭前野の活性化が高まった。
3分で読める詳細解説
結論
運動前の水素吸入は、高強度運動中の身体的疲労を軽減し、前頭前野の活性を維持する可能性がある。
研究の背景と目的
身体的疲労は運動パフォーマンスの低下や怪我のリスク増大につながる。そのメカニズムには末梢性要因だけでなく、前頭前野を含む中枢性要因も関与している。一方、水素分子は抗酸化作用を介して脳機能改善効果を持つことが示唆されている。そこで本研究は、運動前の水素吸入が高強度運動中の身体的疲労と前頭前野活性に及ぼす影響を検証することを目的とした。
研究方法
健常男性24名を対象に、二重盲検クロスオーバー試験を実施。被験者は異なる日に、運動前に水素ガスまたはプラセボガスを20分間吸入した後、最大負荷の80%強度で自転車運動を行った。運動中の主観的疲労感(RPE)、心拍数、前頭前野の酸素化ヘモグロビン濃度変化(fNIRSで測定)を評価した。水素ガスは酸素21.57%、水素4.08%の混合ガスで、流量は1800ml/分だった。
研究結果
Appendix(用語解説)
- RPE(Ratings of Perceived Exertion):ボルグスケールを用いて測定される主観的運動強度。疲労感の指標。
- fNIRS(functional near-infrared spectroscopy):近赤外線スペクトロスコピー。脳の血流変化から脳活動を推定する装置。
- 酸素化ヘモグロビン:動脈血中に多く含まれるヘモグロビン。脳活動に伴い局所的に増加する。
論文情報
タイトル
Effects of pre-exercise H2 inhalation on physical fatigue and related prefrontal cortex activation during and after high-intensity exercise(高強度運動前の水素吸入が身体的疲労および関連する前頭前野活性に及ぼす影響)
引用元
Hong, Y., Dong, G., Li, Q., Wang, V., Liu, M., Jiang, G., Bao, D., & Zhou, J. (2022). Effects of pre-exercise H2 inhalation on physical fatigue and related prefrontal cortex activation during and after high-intensity exercise. Frontiers in Physiology, 13, Article 988028. https://doi.org/10.3389/fphys.2022.988028
専門家のコメント
まだコメントはありません。