一言まとめ
LPS誘発性の急性肺障害マウスモデルに対し、42%の水素ガス吸入を行ったところ、生存率の改善、肺の組織学的損傷の軽減、炎症性サイトカインの減少、酸化ストレスマーカーの低下が見られた。In vitroの実験でも、水素は炎症反応を抑制し、TLR4-NF-κB経路の活性化を阻害することが示唆された。
3分で読める詳細解説
結論
水素ガス吸入はLPS誘発性の急性肺障害と炎症反応を軽減し、その作用機序はTLR4-NF-κB経路の抑制である可能性が高い。
研究の背景と目的
急性肺障害(ALI)は高い罹患率と死亡率を示す重篤な疾患である。ALIの病態形成には炎症反応と酸化ストレスが深く関与しているが、現行の治療法の効果は限定的である。一方、水素は選択的に活性酸素を除去する抗酸化作用と抗炎症作用を有することが知られている。そこで本研究では、LPS誘発性のALIマウスモデルを用いて、水素吸入の効果とそのメカニズムを検討した。
研究方法
研究結果
Appendix(用語解説)
- LPS: リポ多糖。グラム陰性菌の外膜成分で、炎症反応を惹起する。
- TLR4: Toll様受容体4。自然免疫に関与する受容体の一つで、LPSを認識して炎症反応を活性化する。
- NF-κB: 核内因子κB。炎症性サイトカインの産生を制御する転写因子。
- MDA: マロンジアルデヒド。脂質過酸化の最終産物で、酸化ストレスマーカーとして用いられる。
- NO: 一酸化窒素。血管拡張作用を有するガス状シグナル分子だが、過剰産生は組織障害を引き起こす。
論文情報
タイトル
Hydrogen gas alleviates lipopolysaccharide-induced acute lung injury and inflammatory response in mice(水素ガスはリポ多糖誘発性の急性肺障害とマウスの炎症反応を軽減する)
引用元
Yin, H., Feng, Y., Duan, Y., Ma, S., Guo, Z., & Wei, Y. (2022). Hydrogen gas alleviates lipopolysaccharide-induced acute lung injury and inflammatory response in mice. Journal of inflammation (London, England), 19(1), 16. https://doi.org/10.1186/s12950-022-00314-x