一言まとめ
マウスの敗血症モデルに水素吸入を行った結果、腸管損傷が軽減され、生存率が改善し、特に甲状腺ホルモン合成や窒素代謝経路に関連するタンパク質が調整されていた。
3分で読める詳細解説
結論
水素吸入は敗血症の腸管損傷を軽減し、生存率を改善した。
研究の背景と目的
敗血症は感染による重篤な全身反応で、多臓器不全を引き起こし死亡率が非常に高い。特に腸管損傷は重要な問題であり、腸管の透過性が増し細菌が体内へ侵入することが知られている。これまでに、水素ガスが抗炎症、抗酸化作用を持ち、敗血症による臓器損傷を軽減することが示されているが、その詳しいメカニズムは未解明であった。そこで本研究では、水素吸入が敗血症時の腸管損傷をどのように改善するのか、プロテオミクス技術を用いて分子レベルで解析することを目的とした。
研究方法
研究結果
Appendix(用語解説)
- 敗血症:感染によって引き起こされる全身性の炎症反応で、多臓器障害や死に至る重篤な病態。
- プロテオミクス:生物試料中の多数のタンパク質を網羅的に分析し、それらの役割や機能を調べる研究手法。
- iTRAQ:タンパク質の相対的・絶対的定量が可能な同位体標識を用いたプロテオミクス技術。
- タイトジャンクション:細胞間を密接に接着し、物質の漏れを防ぐ構造。腸管の透過性制御に重要。
- FITC-dextran:蛍光色素で標識されたデキストランで、腸管の透過性測定に使用される物質。
論文情報
タイトル
iTRAQ-Based Quantitative Proteomic Analysis of Intestines in Murine Polymicrobial Sepsis with Hydrogen Gas Treatment(マウスの多菌性敗血症における水素吸入療法の腸管保護作用に関する定量的プロテオミクス解析)
引用元
Jiang, Y., Bian, Y., Lian, N., Wang, Y., Xie, K., Qin, C., & Yu, Y. (2020). iTRAQ-Based Quantitative Proteomic Analysis of Intestines in Murine Polymicrobial Sepsis with Hydrogen Gas Treatment. Drug design, development and therapy, 14, 4885–4900. https://doi.org/10.2147/DDDT.S271191
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