研究論文
Effects of Molecular Hydrogen Assessed by an Animal Model and a Randomized Clinical Study on Mild Cognitive Impairment(軽度認知障害(MCI)に対する水素水の効果:動物モデルとランダム化比較試験による検証)

軽度認知障害(MCI)に対する水素水の効果

一言まとめ

酸化ストレス誘導型認知障害モデルマウスおよび軽度認知障害(MCI)患者を対象に、水素水摂取の効果を検証したところ、動物モデルで記憶力の低下抑制と寿命延長、ヒトではAPOE4遺伝子を持つ患者に認知機能改善が認められた。

3分で読める詳細解説

結論

水素水は、APOE4遺伝子を持つ軽度認知障害患者の認知機能を改善する可能性がある。

研究の背景と目的

アルツハイマー病などの神経変性疾患は、高齢化社会で患者数が増加しているが、治療法は限られている。現在の治療法は副作用が多いため、副作用が少なく、安全で長期的に使用できる新しい方法が求められている。そこで、本研究では強力な抗酸化作用がある水素分子に注目し、水素水が軽度認知障害(MCI)に対して予防や改善効果があるかを動物モデルおよび臨床試験で検証した。

研究方法

  • 動物実験
    • 対象:アルデヒド脱水素酵素2活性が低下し酸化ストレスが高い認知症モデルマウス(DAL101マウス)を使用。
    • 介入方法:生後1か月または8か月から18か月齢まで水素水(濃度:0.3 mM以上)を自由飲用させた。
    • 対照群:水素を抜いた通常の水を与えた。
    • 評価方法:記憶能力試験(物体認識課題、受動回避課題)、酸化ストレス指標(8-OHdG、MDA)の測定、脳の神細胞の損傷評価(免疫染色法)を実施。
  • ヒト対象試験:
    • 対象:67歳以上のMCI患者73名(APOE4保有者は13名含む)。
    • 介入方法:水素水(濃度0.6 mM以上)を1日平均320mL、1年間飲用(対照群は通常の水)。
    • 対照群:プラセボ水(通常の水)を提供。
    • 評価方法:1年間摂取後の認知機能をADAS-cog(アルツハイマー病評価尺度認知項目)を用いて評価。

研究結果

  • 動物モデル(DAL101マウス):
    • 水素水摂取により、尿中の酸化ストレスマーカー(8-OHdG)が有意に低下。
    • 脳内の酸化ストレスマーカー(MDA)の増加が有意に抑えられた。
    • 記憶テスト(物体認識試験、受動回避試験)で水素水群は有意に記憶能力の低下を抑制した(p<0.05~0.01)。
    • 水素水群では神経細胞の減少とグリア細胞の活性化(神経炎症)が抑制された。
    • 平均寿命が対照群より有意に延長した(p=0.036)。
  • ヒト臨床試験(MCI患者):
    • 1年間の摂取で全体の認知機能(ADAS-cog)の改善は、水素水群とプラセボ群で有意差なし。
    • APOE4遺伝子を持つ被験者では、水素水群が有意に認知機能の改善を示した(ADAS-cogスコアの改善、p=0.037、単語想起課題スコアの改善、p=0.036)。
    • APOE4非保有者では水素水摂取による改善効果は認められなかった(有意差なし)。
  • 研究の考察:
    • 水素水が認知症のリスク要因である酸化ストレスを軽減することにより、認知機能改善に繋がったと推測している。特にAPOE4遺伝子を持つ人では酸化ストレスが高く、効果が現れやすかった可能性がある。
    • 今回の研究では、試験期間が短い(1年)ことや、被験者数が少ないことが限界として挙げられている。さらに規模の大きな研究が必要と結論付けている。

Appendix(用語解説)

  • 軽度認知障害(MCI):加齢に伴い記憶力や判断力などの認知機能が低下するものの、日常生活には支障がない状態。認知症の前段階とされる。
  • APOE4遺伝子:アルツハイマー病のリスクを高める遺伝子型の一つ。この遺伝子を持つ人は、アルツハイマー病になる可能性が高い。
  • ADAS-cog(アルツハイマー病評価尺度認知項目):記憶力、言語力、空間認識力など、認知機能全般を評価する検査。点数が高いほど認知機能が低下していることを示す。
  • 酸化ストレス:活性酸素による細胞や組織の損傷状態。認知症を含む様々な病気の原因となる。
  • グリア細胞(グリア):神経細胞をサポートし、脳の炎症反応などに関わる細胞。
  • DAL101マウス:酸化ストレスに弱く、認知機能低下を起こしやすい遺伝子変異マウスのこと。本研究で認知症モデルとして使用された。

論文情報

タイトル

Effects of Molecular Hydrogen Assessed by an Animal Model and a Randomized Clinical Study on Mild Cognitive Impairment(軽度認知障害(MCI)に対する水素水の効果:動物モデルとランダム化比較試験による検証)

引用元

Nishimaki, K., Asada, T., Ohsawa, I., Nakajima, E., Ikejima, C., Yokota, T., Kamimura, N., & Ohta, S. (2018). Effects of Molecular Hydrogen Assessed by an Animal Model and a Randomized Clinical Study on Mild Cognitive Impairment. Current Alzheimer research15(5), 482–492. https://doi.org/10.2174/1567205014666171106145017

専門家のコメント

まだコメントはありません。

この記事は役に立ちましたか?

役に立ったら、下のボタンで教えてください。

関連記事

新着記事
会員限定
おすすめ
PAGE TOP
ログイン

\水素吸入に関する無料相談受付中!/

お友だち追加

\水素吸入に関する無料相談受付中!/

LINEお友だち追加

この記事の目次