一言まとめ
アルミニウム塩でアルツハイマー病様病態を誘導したゼブラフィッシュに水素水を7日間投与し、認知機能や抑うつ様行動が改善したうえ、アミロイドβ沈着や炎症、酸化ストレスの低減、腸内細菌叢のバランス回復が確認された。
3分で読める詳細解説
結論
水素水は酸化ストレスと炎症を抑え、腸内環境を整えることで、アルツハイマー病様病態を多角的に緩和できる
研究の背景と目的
アルツハイマー病(AD)はアミロイドβ(Aβ)の脳内蓄積や炎症、酸化ストレスなどが複合的に進行する神経変性疾患である。既存の抗認知症薬は症状の進行を遅らせる程度で、根本治療には至っておらず、副作用も課題となっている。そこで本研究では、水素水の持つ抗酸化・抗炎症作用がAD様病態を改善するかどうかを明らかにするため、ゼブラフィッシュを用いた動物モデル実験を行った。
研究方法
研究結果
Appendix(用語解説)
- アミロイドβ(Aβ):アルツハイマー病患者の脳に蓄積するタンパク質断片。神経毒性があり、認知機能障害を引き起こす一因とされる。
- sEH(Soluble epoxide hydrolase):エポキシエイコトリエノ酸(EETs)などの脂質メディエーターを加水分解する酵素。ADにおいてsEHが高まると神経機能の悪化につながる可能性がある。
- MDA(マロンジアルデヒド):脂質過酸化の産物で、細胞障害や老化度合いを示す指標。濃度が高いほど酸化ストレスが強いことを意味する。
- CAT(カタラーゼ)・GSH(グルタチオン)・SOD(スーパーオキシドジスムターゼ):いずれも体内の抗酸化作用を担う酵素または物質。活性が高いほどフリーラジカルなどの酸化的ダメージを抑制できる。
- 腸内細菌叢(マイクロバイオータ):腸内に生息する多種多様な微生物の集まり。腸-脳軸を介して中枢神経系にも影響を与え、炎症や免疫応答に密接に関わる。
- ナノバブル:超微細な気泡(直径50μm以下)。水素を安定的に水中へ溶かし込み、高濃度の水素水を長時間維持できる。
論文情報
タイトル
Therapeutic potential of hydrogen-rich water in zebrafish model of Alzheimer’s disease: targeting oxidative stress, inflammation, and the gut-brain axis(アルツハイマー病モデルのゼブラフィッシュにおける水素水の治療的可能性:酸化ストレス、炎症、および腸-脳軸に着目)
引用元
He, J., Xu, P., Xu, T., Yu, H., Wang, L., Chen, R., Zhang, K., Yao, Y., Xie, Y., Yang, Q., Wu, W., Sun, D., & Wu, D. (2025). Therapeutic potential of hydrogen-rich water in zebrafish model of Alzheimer’s disease: targeting oxidative stress, inflammation, and the gut-brain axis. Frontiers in aging neuroscience, 16, 1515092. https://doi.org/10.3389/fnagi.2024.1515092
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