研究論文
Therapeutic potential of hydrogen-rich water in zebrafish model of Alzheimer's disease: targeting oxidative stress, inflammation, and the gut-brain axis(アルツハイマー病モデルのゼブラフィッシュにおける水素水の治療的可能性:酸化ストレス、炎症、および腸-脳軸に着目)

アルツハイマー病に対する水素水の治療的可能性

一言まとめ

アルミニウム塩でアルツハイマー病様病態を誘導したゼブラフィッシュに水素水を7日間投与し、認知機能や抑うつ様行動が改善したうえ、アミロイドβ沈着や炎症、酸化ストレスの低減、腸内細菌叢のバランス回復が確認された。

3分で読める詳細解説

結論

水素水は酸化ストレスと炎症を抑え、腸内環境を整えることで、アルツハイマー病様病態を多角的に緩和できる

研究の背景と目的

アルツハイマー病(AD)はアミロイドβ(Aβ)の脳内蓄積や炎症、酸化ストレスなどが複合的に進行する神経変性疾患である。既存の抗認知症薬は症状の進行を遅らせる程度で、根本治療には至っておらず、副作用も課題となっている。そこで本研究では、水素水の持つ抗酸化・抗炎症作用がAD様病態を改善するかどうかを明らかにするため、ゼブラフィッシュを用いた動物モデル実験を行った。

研究方法

  • 対象
    • 7か月齢のゼブラフィッシュ360尾を用い、以下の3群(各120尾)に無作為に分割
      • コントロール群(正常飼育の
      • ADモデル群(塩化アルミニウム500 μg/Lを1か月間投与)
      • ADモデル+水素水群(塩化アルミニウム投与後、水素水環境で7日間飼育)
  • 介入方法
    • 水素水の濃度は約1,000 ppb
    • 水素水群は1日10時間を水素水環境(ナノバブル装置で水中に水素を溶存させる)に置き、残り14時間は通常環境で飼育
    • 実施期間は連続7日間
  • 対照群の設定
    • コントロール群およびADモデル群を対照として、水素水処理効果を比較した。
  • 評価方法
    • 行動評価
      • T-メイズによる学習・記憶機能評価
      • 新奇タンク試験(Novel Tank Test)による抑うつ様行動評価
      • ショーリングテスト(Shoaling test)による社会性評価
    • 生化学的評価
      • 脳内のAβ濃度、炎症性サイトカイン(IL-6、IL-1β、TNF-α、IL-10)
        • 酸化ストレス指標(MDA、CAT、GSH、SOD)
        • 肝臓におけるsEH(Soluble epoxide hydrolase)活性
      • 組織学的評価
        • 脳組織のH&E染色、幼魚の免疫蛍光染色(好中球とROS標識)
      • 腸内細菌叢の解析
        • 16S rRNAシーケンスにより腸内細菌叢の多様性を評価

研究結果

  • 主要な結果
    • 脳内Aβ沈着量が有意に減少(p < 0.0001)
    • 肝臓におけるsEH活性が低下(p < 0.05)
    • 脳内炎症性サイトカインIL-6(p < 0.01)、IL-1β(p < 0.001)、TNF-α(p < 0.01)がいずれも減少し、抗炎症性サイトカインIL-10が増加(p < 0.05)
    • 酸化ストレス指標として、MDAが減少(p < 0.05)、CATとGSHが上昇(p < 0.05)
    • 行動試験では、T-メイズでの探索時間が短縮され、抑うつ様行動が有意に改善(Novel Tank Testでの遊泳距離・上層への進入回数が増加)
    • 腸内細菌叢解析にて、ADモデル群で増加していたStaphylococcusStreptococcusCorynebacteriumなどの有害菌が減少
  • 主要な結果に関連する考察
    • 水素水の抗酸化作用によってROS産生や炎症性メディエーターを抑制し、Aβの沈着低減や神経変性の進行抑制につながった可能性が高い。
    • さらに、腸内細菌叢のバランス回復(有害菌の抑制)が脳の炎症・酸化ストレスを緩和し、AD様症状の改善に貢献したと考えられる。
  • 研究の限界
    • 長期投与の効果や安全性に関するデータは本論文では不十分であり、持続的な効果検証が必要
    • ゼブラフィッシュの結果がヒトにも同様に適用できるかはさらなる臨床研究が必要

Appendix(用語解説)

  • アミロイドβ(Aβ):アルツハイマー病患者の脳に蓄積するタンパク質断片。神経毒性があり、認知機能障害を引き起こす一因とされる。
  • sEH(Soluble epoxide hydrolase):エポキシエイコトリエノ酸(EETs)などの脂質メディエーターを加水分解する酵素。ADにおいてsEHが高まると神経機能の悪化につながる可能性がある。
  • MDA(マロンジアルデヒド):脂質過酸化の産物で、細胞障害や老化度合いを示す指標。濃度が高いほど酸化ストレスが強いことを意味する。
  • CAT(カタラーゼ)・GSH(グルタチオン)・SOD(スーパーオキシドジスムターゼ):いずれも体内の抗酸化作用を担う酵素または物質。活性が高いほどフリーラジカルなどの酸化的ダメージを抑制できる。
  • 腸内細菌叢(マイクロバイオータ):腸内に生息する多種多様な微生物の集まり。腸-脳軸を介して中枢神経系にも影響を与え、炎症や免疫応答に密接に関わる。
  • ナノバブル:超微細な気泡(直径50μm以下)。水素を安定的に水中へ溶かし込み、高濃度の水素水を長時間維持できる。

論文情報

タイトル

Therapeutic potential of hydrogen-rich water in zebrafish model of Alzheimer’s disease: targeting oxidative stress, inflammation, and the gut-brain axis(アルツハイマー病モデルのゼブラフィッシュにおける水素水の治療的可能性:酸化ストレス、炎症、および腸-脳軸に着目)

引用元

He, J., Xu, P., Xu, T., Yu, H., Wang, L., Chen, R., Zhang, K., Yao, Y., Xie, Y., Yang, Q., Wu, W., Sun, D., & Wu, D. (2025). Therapeutic potential of hydrogen-rich water in zebrafish model of Alzheimer’s disease: targeting oxidative stress, inflammation, and the gut-brain axis. Frontiers in aging neuroscience16, 1515092. https://doi.org/10.3389/fnagi.2024.1515092

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