一言まとめ
アルツハイマー病(AD)マウスに7ヶ月間、水素水(>1.6 ppm)を継続投与したところ、アミロイドβやタウタンパクの異常蓄積や神経炎症が抑制され、学習・記憶機能が改善された。腸内細菌叢の多様性向上や有益菌増加も確認され、脳内エネルギー代謝の回復が示唆された。
3分で読める詳細解説
結論
水素水はADマウスの炎症と腸内環境を改善し、神経変性を緩和する可能性を示す。
研究の背景と目的
アルツハイマー病(AD)は、アミロイドβ(Aβ)の蓄積やタウタンパクの過剰リン酸化、神経炎症などが原因となり、記憶障害や認知機能低下を引き起こす進行性の神経変性疾患である。既存の抗炎症薬や抗酸化療法で十分な効果が得られていない中、水素分子による抗酸化・抗炎症効果に注目が集まっている。本研究では、より非侵襲的な手段として水素水を長期的に投与し、ADモデルマウスの病態改善に寄与するかを検証することを目的とした。
研究方法
研究結果
Appendix(用語解説)
- アルツハイマー病(AD):アミロイドβやタウタンパクが脳に異常蓄積し、神経細胞が変性・死滅することで認知機能が低下する進行性の疾患。
- アミロイドβ(Aβ):APPという前駆体タンパク質が酵素によって分解されて生じるペプチド。過剰蓄積すると神経細胞に毒性を及ぼす。
- タウタンパク:神経細胞内で微小管の安定化に関わるタンパク質。過剰リン酸化によって凝集し、神経原線維変化を形成する。
- ミトコンドリア機能:ATPの産生など細胞エネルギーを司る機能。炎症や酸化ストレスの影響を受けやすく、神経変性疾患の病態に深く関与する。
- 腸内細菌叢(マイクロバイオータ):腸内に定住する多様な微生物群の総体。炎症や代謝、脳機能など、全身の健康状態に影響を及ぼす。
- 3×Tg-ADマウス:人間のタウP301L、APPswe、マウスのPS1M146Vという3つの変異遺伝子を発現するアルツハイマー病モデルマウス。
論文情報
タイトル
Hydrogen-rich water ameliorates neuropathological impairments in a mouse model of Alzheimer’s disease through reducing neuroinflammation and modulating intestinal microbiota(水素水はアルツハイマー病マウスモデルにおいて神経炎症の軽減と腸内細菌叢の調整によって神経病理学的障害を改善する)
引用元
Lin, Y. T., Shi, Q. Q., Zhang, L., Yue, C. P., He, Z. J., Li, X. X., He, Q. J., Liu, Q., & Du, X. B. (2022). Hydrogen-rich water ameliorates neuropathological impairments in a mouse model of Alzheimer’s disease through reducing neuroinflammation and modulating intestinal microbiota. Neural regeneration research, 17(2), 409–417. https://doi.org/10.4103/1673-5374.317992
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